11月7日 雨
「っあー! おいしかったー!」
ひっさびさにしんちゃんの料理を食べた。お腹が幸せで満たされる。
「相変わらずよく食うな…」
「だっておいしいんだよ? しょうがないんだよ?」
しんちゃんは料理が上手い。あたしより遥かに。今食べたオムライスだってお店のよりもふわとろだったし。
「俺があさみを肥えさせてんのか。」
しんちゃんがうずくまる。すぐ凹むんだから。肥えるという言葉に文句を言う隙もない。
「うそうそ、ちゃんと運動してるし、普段そんな食べてないから大丈夫だよ。」
頭をなでる。
「んんん」
しんちゃんがあたしの脇腹をつまもうとした。おへその周りならまだしも、脇腹はつまめるほど付いてないからセーフ。ていうかコイツ失礼すぎじゃないかな。
「ほら、大丈夫でしょ?」
「うん…」
頷きながらも手を止めないしんちゃん。くすぐったいんだけど。ていうかなんか手つきがやらしくなってきた。
「あ、ちょっ、ちょっと、せめてお布団いこ?」
しんちゃんをなだめて立ち上がった。
布団が丸まっていたから掛け布団の端を持ってバサッと持ち上げてさっと置くと、掛け布団がベッドと同じ形に収まった。その足側の端に、ぱさっと何かが落ちた。
ブラジャーだ。あたしの、ではない。誰のだろう。
「ねぇしんちゃん、これ誰の?」
あたしは下着を見つめたまま言った。
「ん、あさみのだろ?」
違う。サイズから違う。
「あたしのじゃ、ないよ?」
「…ねーちゃんのかな?」
嘘だ。声、いつもと違うもん。
布団に涙が落ちた。ごめん、しんちゃん、布団汚しちゃった。
―***―
あたしが泣き疲れてもしんちゃんは浮気を認めなかった。ごめん帰るねって言うとしんちゃんは『大丈夫か?』なんて言った。大丈夫なわけないじゃん。でも大丈夫って言って帰ってきた。
自分の布団もしっかり汚して、落ち着いたあとスマホで時間を確認したら、夜の11時。まだ寝てないよね。泣きながら思い出したりょうちゃんにライムを送る。
【しんちゃん家でふとんバサッてやったらあたしのじゃない下着降ってきた笑】
すぐに通知が鳴った。良かった。相談すればきっと元気がでる。
【笑 じゃないでしょ。現行犯じゃん。ちゃんと怒った?】
【泣きました笑
怒ればよかったのか】
最後に電球の絵文字をつけて送信。
すぐに既読が付いて返信が来る。
【あ、でも泣かれたほうが効果あるかも。罪悪感でいっぱいになりそう】
【やった
効果あるといいな】
【あるある
多分後悔してるよ】
【てか下着忘れるとかおかしいよね。
絶対着替え準備して泊まりに行ってるよね。】
【制裁が必要だな】
その日は2時までやりとりを続けて、あたしが寝落ちした。