10月6日 晴れ
「いや、男。」
また嘘だ。
しんちゃんは嘘をつくとき必ず右手の中指を左手でつかむ。
「そっか。じゃあ夜ライムするね。」
「…盛り上がったら遅くなるかもしれないから返せないかもだけど、気づいたらなるべく返すから。」
きっとまたほかの女と遊ぶんだろうな、と思った。
「うん、待ってる。」
「ごめんな。じゃあ。」
そう言ってしんちゃんは学校の北門の方に歩いて行った。きっと一度アパートに帰るんだろう。あたしも帰ることにした。
あたしのカレは浮気者だ。しんちゃん。バイト先で知り合った、大学に入って二人目の彼氏。しんちゃんはもうバイト辞めちゃったけど、学部は同じだから一緒にいることは多い。周りもあたしたちが付き合ってることは知っていて、いろんなことを教えてくれる。
例えば、あたしじゃない女の子と買い物してたとか、あたしじゃない女の子とカラオケから出てきたとか。
最初は、しんちゃんを信じてた。誰かのプレゼント買うのに付き合わされたとか、妹が来てたときかなとか、そんな言い訳をすんなりと。
でもすぐに証拠が出てきてしまった。友達が撮った、ホテルに入ってく動画。他の娘とデートしてるとこに会ったこともある。しんちゃんのケータイをこっそり見ればもっといっぱい出てくるんだろうけど、涙もたくさん出て止まらなくなるんだと思うから見ていない。
友達に相談しても別れなよってしか言われなかった。あたしはしんちゃんのことが大好きなのに。どうしたらあたしだけを見てくれるのかなって相談したのに。
そんなことを考えているうちにアパートについた。上着と靴下を脱いでベッドに倒れこむ。顔をシーツに押しつけたまま「むー」と声を出した。付き合い始めのころはここに入り浸って、料理まで作ってくれてたのに、カレはもう3週間も部屋に来ていない。来たとしてもえっちするだけで帰っちゃうから別にいいんだけど。
もやもやとベッドの上を転がっていたら、そのまま3時間も眠ってしまった。起きたときにライムを送ってみたけど、結局その日のうちには返ってこなかった。
読んでいただきありがとうございます。
※当ページに直接いらした方へ
こちらhttps://ncode.syosetu.com/n8987hm/に更新ペースなどを書いてあります。