ヲタッキーズ57 東秋葉原ドミノ
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第57話"東秋葉原ドミノ"。さて、今回は異次元人ギャング団に潜入していた捜査官が殺されますw
捜査が進む一方、殺人の連鎖現象のモデル化に成功した主人公らは、アルゴリズムに導かれ意外な犯人を追い詰めますが…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 潜入捜査官の死
真夜中の蔵前橋通りを疾駆スル黒いセダン。
中央通りを越え新幹線ガードを過ぎるとヲタクなアキバは急に影を潜める。
街灯も疎らなストリートの人影はモヒカンが多く拳をぶつけ合い挨拶スル←
通りにドラム缶を出し、派手な焚き火で行き交う車を指差しガンを飛ばす。
そんな視線を跳ね返すように、黒いセダンの窓が開いてラッパ型の銃口が…
え。ラッパ型の銃口?音波銃?
次の瞬間、音波銃特有の金切り声のような銃声が響きガラスが砕け散る。
悲鳴が上がる中、黒いセダンは急発進し乱暴な運転で蔵前橋方面へ去る。
後に残されたのは…耳の尖った死体w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。駅直結の高層ビル最上階にある御屋敷の、そのまた裏の常連専用"潜り酒場"。
もともとバックヤードだったが、スチームパンク調にしたら居心地が良くて溜まり場にw
「レイカ、来てたの?」
「やっと月面掃討作戦が終わったばかり」
「あら、つぼみん。お出かけ?」
「デートょ!」
まさか、眼下の東秋葉原で乱射事件とはつゆ知らズ、キャアキャア騒ぐメイド達。
あ。メイド長の流儀で"潜り酒場"では、御帰宅の女子は全員メイド服を着用だ。
「え?え?お相手は誰?」
「先週の結婚式で出会ったケイタリングのバーマン…ソレで相談があるの。彼の誕生日に何かを送りたい。でも、何が良いかわからなくて」
「大事なのは気持ちょ!」
「おめでとう…だけ?」
「うーんアキバ科学大学の数学者が最近その問題に取り組んでいたわ」
「ソレ、貴女のコト?ルイナ」
ルイナは、史上最年少の首相官邸アドバイザー。つまり天才で今宵はゆるふわメイド服。
「まさか。でも、数学者達がゲーム理論で最適な贈り物を分析したの」
「モテない数学ブスの御意見ね?」
「黙ってて!続けて!」
真剣な目つきで遮ったつぼみんは、御屋敷のヘルプメイド。今宵はフレンチなメイド服。
「男子に受け入れてもらうためには…」
「ユーネックス何々?」
「"資産的な価値のナイ高価な贈り物"が最も成功率が高いの。だから、マフラーを編んでデザイナーズレストランを予約!」
「しまったー!そーだったのかー」
「どぉ?数学ってグレート?」
「無事にベッドインしたら信じるわ」
ココで複数のメイドのスマホが鳴動。
「わかったわ。直ぐ行く」
「どーしたの?」
「東秋葉原で発砲事件ょ。でも、つぼみんは楽しんで、その…あら?誰だっけ?」
「マモロくん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原の乱射現場。
サイレンを鳴らし、派手にランプを明滅させながらパトカーが次々到着。
制服警官が野次馬を追い払い非常線を張るがソレをかいくぐりり続々と…
メイド服の女子が現れるw
「何があったの?」
「車から音波銃の乱射です…しかし、ラギィ警部、ナンでメイド服?」
「ソンなコトより、何で私達ジャドーにまで連絡が来たの?」
「分りません。首相官邸が現場で待機しろと…しかし、レイカ司令官、ナンでメイド服?」
ジャドーは、アキバに開いた"リアルの裂け目"からアキバを守る秘密防衛組織だ。
沈着冷静なレイカ最高司令官の下、日夜"リアルの裂け目"の脅威に敢然と挑戦中。
「どうも。首相官邸のジョホ情報官ょ」
「ジャドーのレイカです」
「司令官、メイドに変装して来たのはサスガだけど、現場にジャドーがいるのを知られるとマズいの」
「あら。何で?」
「異次元のギャング団を潜入捜査してた事実を首相官邸は隠したいワケ」←
死体を確認してたラギィ警部がつぶやく。
「アナヤ・ライムだわ。前に恐喝事件で組んだコトがアル」
「とゆーコトは?」
「彼女は潜入捜査官ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
首相官邸のジョホ情報官は語る。
「ライム捜査官は、約10ヵ月間潜入捜査をしてたの」
「異次元人のギャング団に?"リアルの裂け目"の向こう側でのお話?」
「いいえ、コチラ側ょ。リアル秋葉原に版図を拡張中の異次元人ギャング"外神田13丁目シンジケート"で幹部の情報を集めてた」
「では"13丁目シンジケート"が捜査官を殺害?」
「恐らく」
「音波銃は?」
「モチロン見つからないわ」
「とにかく、証拠集めから入りましょうか」
「ストリートに人はいたハズなのに、目撃者はいません」
「協力する者などいない。異次元人にとり、私達警察は敵だモノ。協力などしないわ」
「なるほど。ココは東秋葉原ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、所轄の万世橋に捜査本部が立って捜査方針会議が開かれる。
「内調の覆面捜査官が殺されたわ。潜入組織に正体がバレたみたい」
「ラギィ警部。すぐ踏み込むべきです。黙っていれば、異次元人ギャングはつけあがる一方だ」
「待って。ライムの正体がバレたかの確認が先ょ。"13丁目シンジケート"の奴等に探りを入れないと」
ジョホ情報官から現場感覚とズレた御意見。
「え。ソンなコトしてもライムの正体がバレるだけょ」
「潜入捜査官が死んだの。見過ごせない。"13丁目シンジケート"は、この秋葉原で殺人や恐喝、麻薬取引を行っている。14ヶ月の捜査をフイに出来ないわ」
「まぁ落ち着いてょ」
なだめに入るラギィ。
「ライムは命を落としたけど、彼女の捜査を台無しにしないで」
「ジョホ情報官。詳しく伺いましょう」
「他の異次元人の組織同様"13丁目シンジケート"は"リアルの裂け目"を通じてリアル秋葉原へと勢力を拡大している。ソレで、法の適用を考えた」
「え。異次元人組織を立件スルの?」
「YES。とは言え、組織犯罪への対策は"リアルの裂け目"の向こうもコッチも変わらない。幹部の検挙ょ。ライムの任務は組織トップの特定だった」
「因みに、コレが秋葉原の異次元人ギャング組織の縄張り図です。抗争で境界線は刻々と変わり、予測不可能な状況です」
「ソレは違うわ」
会議アプリを通じ話に割り込むのはルイナ。
「数学モデルを使えば、縄張り争いを分析出来るわ。植物の成長を予測するモデルを使うの。植物は、密集した状態だと互いに争う。日光を少しでも多く受けて、自分が優占種となるために。この予測に使われるのと同じ方程式を、組織の縄張り争いの予測にも適用出来るハズ。で、その地図に刺さってる小旗は何?」
「組織がらみの発砲事件です」
「ソレって期間は何年?」
「何年って…半年ですが」←
「半年? 100件近くアルけど」
「ソレが東秋葉原の現実ょ。ソレだって"13丁目シンジケート"に関係する件に限ってる。全ての案件なら1000件以上ょ」
「たった半年で?回帰ツリーかポワソンクランピング分析は試してみた?」
「え?ポワトリン?美少女仮面かしら…多分試してナイわ。何ソレ?美味しいの?」
「OK。全ての事件にはパターンがアル。事件の資料さえもらえれば、ライム殺害がパターンに合うかワカルけど」
「警部!現場近くにある牛丼屋の防犯ビデオ画像をゲットしました!」
「モニターに流して」
防犯カメラの粗い画像が捜査本部に流れる。
「ん?ライムの隣に写ってる女は?」
「ヴィス・ワッツ。組織の幹部。トップかもしれない男No.1ょ」
「ライムを消すために、最後の晩餐に呼んだのでは?」
「ちっくしょう!ナメやがって…"13丁目シンジケート"を強制家宅捜査よっ!」
ライムを殺されて怒りたつジョホ情報官。
「待ってょ!ウチのシマでいきなり戦争始めないで!」
「じゃこのママ手をこまねいて見てろと?内調の覆面捜査官が死んで(以下省略w)」
「じゃ"秋の交通安全運動"よっ!」
「え。何?」
「交通安全を錦の御旗にして一斉捜査をかけるのよっ!」
「なるほど!交通安全運動なら、毎年春秋にやってるから目立たないし」
「令状が無くても尋問が出来ちゃう」
「ライムの死にも触れズに済むわ」
第2章 暁の一斉捜査
"秋の交通安全運動"が始まる!
"外神田13丁目シンジケート"のオフィスは花岡町の古い雑居ビルにあるが、警官隊がショットガンで鍵を吹き飛ばし蛮声上げ突入!
「万世橋警察署!万世橋警察署!おとなしく手を上げろ…横断歩道を渡る時は」←
「え?何?語尾が聞こえない…」
「うるせぇ腹這いになれ!お前達には弁護士を呼ぶ権利がアルよーなナイよーな…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原の狭い路地を、つむじ風のように疾駆するピストバイク。
ノーブレーキの競技用自転車だが…何とパトカーに追われているw
追うパトカーも車幅ギリギリの路地に平然と突っ込む"所轄魂"←
さらに先回りしたパトカーと前と後から挟み撃ちにして一網打尽!
「万世橋警察署!全員、腹這いになれ!」
「おまわりさん、何か用かょ?」
「秋の交通安全運動だ!知らないのか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃ルイナはラボにいる。
ジャドー司令部はパーツ通りのゲーセン地下深く秘密裡に作られ、ラボを併設している。
そのラボには今、事件の写真やメモ、コルクボードに付箋、ホワイトボードに描き殴りw
「ルイナ!このラボ…散らかり放題でクラスターが発生しそう!ココに棲息するコロナウィルスの数、わかる?」
「あ、レイカ司令官。東秋葉原で過去4年間に起きたギャングがらみの発砲件数、わかります?」
「…わからないけど、どーせルイナは知ってルンでしょ?」
「司令官、当ててください。死者が出たか否かは問わないので!」
「降参ょ。何件?」
「過去4年で7000件から…ほぼ8000件です」
「マジ?」
「その内、死亡事件は2000件で、多くは駅から東方向、ココから2km圏内です」
「凄まじい数ね。東秋葉原、怖いわ」
「確かに膨大ですが、組織絡みなのでデータとしての整理は比較的容易です。後は、事件の特性さえ掴めば方程式に落とせる。そして、アルゴリズムを回せば、関係者が割り出せる」
「でも、恐ろしく複雑な問題だわ。データ量もハンパないし」
「ところが、ラギィ警部からのリクエストは1件だけです。コレって当然、他も解決したくなりますょね?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原の行き止まりの路地裏でストリートアメラグに興じる異次元人。
ロングパスが飛び…インターセプトしたのはムーンライトセレナーダーw
黒のセパレートでヘソ出しコスチューム←
「な、何だ?チアリーダーか?」
「はい!今日はゲームオーバーょ」
「おいおい。未だ2nd downだ」
「ダメダメ。ヲタッキーズに言われたとおりにして」
ヲタッキーズは、僕の推しミユリさんが率いるスーパーヒロイン集団だ。
ミユリさんの他に妖精担当のエアリとロケット兵のマリレが空から降り…
あ!異次元人が1人逃げる!
「テリィ様、追って!」
「え。僕がw」
「タマには走って」←
髪を緑と紫に染め分けたブラザーだw
いかにもすばしっこそーで参ったな←
「おーい、待ってくれぇ!」
待つハズない。ブラザーはタマタマ扉が開け放してる、無用心な建物に飛び込むw
仕方ナイ。僕もそのママ、恐らく元小学校的な建物に入るが…あれ?音楽室かな?
「貴方、何してるの?私、聞いてるのょ」
「あ、その人を捕まえて!」
「警察の人?らしくナイけど…じゃ令状は?」
「令嬢?」
「バカ。私は"東秋葉原ふれあいセンター"所長のオリビ。センターの中の出来事には責任があるの」
「でもさ。容疑者を追うのに令状は不要ナンだょ市民逮捕だしコレ」
そーなの?的な訝しげな視線のママ、傍らのシングルマザー?に声をかけるオリビ所長。
「シクア。みんなを部屋へ」
「はい。わかった?さぁ行くわょ。心配ないわ」
「大丈夫?アンソ、何をしたの?」
「俺は何もしてねぇのに、ヲタクが追っかけて来て…」
「まぁ怖い」
何でだw
「待てと逝ったのに逃げただろ?」
「貴方がヲタクだからょ。みんな、昭和通り口のヲタクから逃げて東秋葉原に来るの」
「大丈夫?テリィたん」
やっとラギィ警部と部下が追いつく。
「お手上げでしょ?ココらの連中は、誰も協力しないの…で、アンソ。アンタ、御立派な令状が2通も出てるわね?」
「だったら何だょ?」
「アラ?容疑を認めた?でも、今日は気分が良いから、そんなアンタにもラッキーチャンスを上げるわ」
「え。マジ?何でしょう?」
「アンタのお友達を探してる。ヴィス・ワッツょ。協力すれば、今回の令状の件は見逃してあげる。どーする、ブラザー?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1時間後。ヴィス・ワッツは捜査本部にいる。
「一昨日の夜、何処にいたの?」
「何だょコレ?取調べか?一昨日?いちいち覚えてねぇよ!」
僕達は、ラギィ警部とワッツのヤリトリをマジックミラー越しに固唾を飲んで聞き入る。
「6時20分には、貴方はライムと一緒だった。そして、6時45分。彼女は音波銃で撃たれて死んだ」
「あぁ確かに一緒だったな」
「ライムが撃たれた時、アンタは?」
「牛丼屋にスマホを忘れて取りに戻ってた」
「ヘタな言いワケ」
「何が聞きたい?」
「アンタは現場にいた」
「おぅ。だから、俺がカタをつけてヤル」
「どーゆーコト?」
「"イズミンパーク"の奴等は、思い知るハズさ」
「"イズミンパーク"?"13丁目シンジケート"と縄張り争い中の異次元人ギャングのコトか?」
「1人ヤラレたら5人ヤル。ソレが東秋葉原のオキテだ」
マジックミラーのコチラ側は騒然となる。
「異次元人ギャング同士の報復合戦だ!」
「大変です!秋葉原デジマ法の指定ギャング"イズミンパーク"への銃撃事件が3件、立て続けに発生してます!犯人は、目撃情報などから恐らく"13丁目シンジケート」
「でも、コレは…ライムの正体は未だバレてナイと言う証拠?」
緊急事態だけどジョホ情報官は安堵の顔だw
「でも、ソレじゃナゼ殺されたの?」
その場の全員の視線がマジックミラーの向こうで取調べを受けているワッツに集中スル。
「ライム捜査官が消された理由は、異次元ギャング同士の縄張り争い?」
「"13丁目"は"イズミンパーク"の仕業だと言ってますが…」
「もともと"イズミン"のクスリを"13丁目"がクスねたのが抗争の原因だ」
「内調は、組織の対立を把握してますか?」
「YES。抗争が起きる度に浮上した名前を記録してある」
「ジョホ情報官、ソレを見せて。ライム捜査官が殺された理由がわかるカモしれない」
「警部、私生活からも探りましょう。ライム捜査官はゲイだから、パートナーに何か話してるカモ」
「ゲイ上等。調べて頂戴」
仕上げに若い署員が駆け込んで来る。
「ジャドーのパツキン姐さんがお呼びです。みなさん、集まってください」
第3章 銃撃ドミノ
万世橋の捜査本部に全員集合。
ルイナは会議アプリでの参戦。
「みなさん。コレは行動連鎖分析ょ。過去4年の銃撃を3次元モデルにしてみた」
「何がわかるの、ルイナ」
「このグラフから、銃撃ドミノが予測出来るワケ」
「銃撃ドミノ?」
「次々とドミノ倒しのように発生スル、銃撃の連鎖のコトょ」
「報復の連鎖のコトね?よくある話だけど」
ココでルイナは咳払いw
「でも、この連鎖は最初の銃撃犯までさかのぼるコトが出来るの」
「え。目撃者とかがいなくても?」
「YES。例えば、ドミノを想像してみて。1枚目が倒れると連鎖が始まるわね?連鎖の長さはマチマチょ。途中で枝分かれしたりもスルし」
「夏休みの特番で良くやってるわ」
「でしょ?で、今回の事件で私達が見ているのは、連鎖が終わった状態。つまり、ドミノが全部倒れた状態ね。連鎖の再現は難しいけど、方法はアルわ。階層ネットワークとポアソン・クランピングで連鎖を反転させれば、最初に倒れたドミノまでさかのぼるコトが出来るのょ」
「え。ギャングの中で最初に銃撃に走った血の気の多い奴がわかるワケ?」
「YES」
「とゆーコトは、連鎖の元を絶てば…」
「理論上、もう銃撃は起きなくなるわ」
今度はジョホ情報官が咳払いw
「面白い仮説ね」
「面白い?絶対そう思ってナイ言い方ね。東秋葉原では、銃撃事件の18%で異次元人の第三者が犠牲になっている。10才の子供もょ。犠牲者の35%は16歳以下だし」
「私だってなんとかしたいわ。でも、内調は今まで何人も逮捕して来たけどキリがない。そもそも、異次元人のギャング同士の殺し合いナンて、首相は関心ナイもの」
「でも…異次元人とは言え、罪のない人が犠牲になってるの…」
食ってかかるルイナを、アプリの向こうで必死に押し止めてるのは…多分レイカ司令官w
「STOP!ルイナ、ソコまでょ」
「ジャドーのレイカ司令官?構わないわ。とにかく、学者がギャング抗争を根絶出来るワケないし。首相官邸から呼ばれたので、私は失礼するわ」
威嚇スルような視線で、捜査本部の全員を舐め回すように見てから、会議室を出て逝く。
「ごめんなさい、みなさん。別に官邸とモメたかったワケじゃナイの」
「聞いて、ルイナ。少しは譲って。官邸の情報官と言えば次官級ょ」
「しかも、この道20年のプロだし」
その時、捜査本部の後ろから一声かかるw
「気にせズがんばれ!パツキン姐さん!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたん?貴方がリアルテリィたんなの?抱いて!」
所変われば品変わる?いや、人変わるか…ファミレスで向き合った東秋葉原ふれあいセンター所長のオリビは興奮に小鼻を膨らますw
「貴方が、あの"国民的ヲタク作家"のテリィたんだったナンて!キャー!」
「コチラこそ、貴女が亡くなったライム捜査官のゲイのパートナーだったとは」
「ゲイだけど…子供を望んでたの。潜入捜査が終わったら作る予定だったわ」
「お気の毒に」
「最後の数ヶ月は、全然家に寄り付かなかったから。今でも死んだ実感がわかないわ」
「質問しても?」
「どうぞ」
「ライム捜査官は、最後の2週間、誰かや何かを恐れてたりはしなかった?」
「ライムが?そんな神経の持ち主じゃナイわ。だから、逆に心配で」
「仕事はベッドに持ち込まないタイプ?」
「だから、最近は会話が少なくて。私も建築の学校に通ってて…時間がなかった」
「わかるょ」
「でも、ライムは興奮してました。組織に溶け込めたから上手く行きそうだって。きっと、幹部が彼を信用し始めて、立場も上がって行ったのカモ。でも…相応のお葬式も出来ズ、埋葬も出来ないナンて」
思わズ僕は問い質す。
「え。ソンなコトを誰が?」
「首相官邸のジョホって女の人が来て、正体がバレるからと。テリィたん達も辛い人生なのね」
「え。うん、まぁ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドーラボにレイカ司令官がやって来る。
アラサーなんだが華麗なるコスモルック。
イカれたゲーセン店員のコスプレw
「万世橋の仕事ね。音波銃の資料ばかりだモノ」
「内調の覆面捜査官殺害の動機を探っています」
「連鎖とパターンを探ってる?」
「YES。でも、恐ろしく多くの殺人が絡んで最初の犯人にたどり着けないのです」
「銃撃の連鎖反応ね?」
「銃撃ドミノと呼んでいます」
「うーん全ての連鎖を解決するべきナンだろうけど…ガリレオを思い出して。彼は、惑星の研究だけに関心を持ち、木星の月を観察し、ついには天動説を覆したわ」
「え。だから何でしょう、司令官」
「あのね。壮大な理論って、1つの問題に集中してこそ打ち出せるモノょ。あら、なぜ被害者の写真を集めたの?」
コルクボードに多数の顔写真が並んでるw
「わかりません。犠牲者の年齢を見てたら、何だか急に顔を見たくなって」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。"東秋葉原ふれあいセンター"。
「じゃーねー」
「はい。さようならー」
「また明日!」
若い保育士とハイタッチしてセンターを出て逝く異次元人キッズ。
その目の前を、まるでパトロールするように通り過ぎるSUVには…
"外神田13丁目シンジケート"のブラザー達が乗っているw容赦のないガンが僕に飛ぶ←
「手伝います」
青空スクールの机と椅子の片付けを手伝う。
「え。あ、アンソを追っかけてた人…ま、待って!アンタ、あの"国民的ヲタク作家"の…キャー抱いて!」
「ま、待って!異次元人キッズが心配ナンです。救ってあげたい」
「私も!シクアです」
「テリィです。"国民的ヲタク作家"の。所長さんは、おられますか?」
「モチロン!ご案内しますわ!」
折りたたんでいたイスを放り投げるシクアw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたん!」
所長室で忙しく仕事をしていたオリビは部屋に入って来た僕達を見て思わズ立ち上がる。
「アンソを釈放してくれたのね!」
「はい。彼は無関係でした」
「間違いを認めるなんて!さすがは"国民的ヲタク作家"だわ!キャー(以下省略w)」
「先日の銃撃の件で」
「はい?何でしょう」
「目撃者が皆無で。所長の協力があれば証言が集まるかと」
「え。冗談でしょ」
「あれ?ダメですか?万世橋の捜査に何か問題でも?」
「異次元人は、いわば"リアルの裂け目"からの落ちコボレです。警察に協力するハズがナイわ。わかってあげて」
「アキバやヲタクをどう思おうと構わない。所長の影響力を見込んでのお願いです」
「テリィたんを見込んで?」
「まぁそんなトコです」
「ヲタクだから?だったら、もっと私、貴方のコトを知らないと、い・け・な・い・わ…」
ココで所長はヤタラ派手に脚を組み直しパンチラ寸前wこりゃ誘惑かょ?ミユリさーん!
「人が死んでます。ヲタク敵視は構わないが犯人を捕まえたい。気が変わったらTwipperで直メください」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
ミユリさんの流儀で、またまた女子は全員がメイド服を着用してて壮観。
でも、その中でも群を抜くのがミユリさんであるコトは逝うまでもナイ。
今宵は僕の大好きな和ロリ!
「ラギィ警部。調子どう?」
「ソレがミユリ姉様。事件の捜査が進展してないの」
「ルイナがいないわね。彼女は?」
レイカ司令官が引き取る。ミニスカメイド。
「ウチのラボにこもってるわ。過去4年の銃撃事件を全部調べてる」
「一生PCをいじってるつもりかしら。難題であるほど解きたがるのょね」
「手を広げ過ぎなのょ」
「うーん彼女は必ずしも解決出来るとは思ってナイみたい。特に、今回は異次元人差別の長い歴史と社会病巣に直結してる。根絶は難しいわ。ただ、ルイナは全体像を理解したいと思ってルンだと思う」
ソコへ当のルイナが御帰宅w
「みなさん!お話が…」
「ライムの件?他の4000件?」
「両方。銃撃ドミノのパターンを見つけた。ライムも含めて全10件」
「同じ銃撃ドミノで繋がってるの?」
「いいえ。でも、この10件は、いずれも連鎖の発端、最初のドミノょ。そして、ドミノを倒した犯人は、10件とも同一人物だったわ」
「ライム殺害の犯人が他に10人も?」
「もっとょ。ドミノは倒れ続けるから、犯人が直接殺した10人以上に犠牲者も増え続けてる」
「報復は報復を呼ぶからね」
「10件の銃撃ドミノで、都合60人以上の死者を呼んだ可能性がアルわ」
メイド姿の全員が顔を見合わせる。
第4章 シングルマザーを追え
万世橋の捜査本部。全員がスマホに向かって大声出す中、続々と箱が運び込まれて逝く。
「みんな、聞いて!ここ2年で10件の銃撃がライム捜査官の殺害に関係あるコトがわかったわ!」
「警部、関係って何スか?ってか何でメイド服なの?」
「え。あ、しまった…とにかく!犯人が同じなのょ!」
「同一犯人?」
「YES」
「10件とも?でも、そんな犯人がいたら、とっくに秋葉原の伝説になってますょ」
「そもそも10件は、抗争関係が全部バラバラですけど」
「でも、ルイナが関連してると言うなら確かなのよっ!」
「え。ジャドーのパツキン姐さんが?そっか。じゃ何かアルのかな…この3件は犠牲者が異次元人とソレ以外でゴッチャになってる。凶器も違いますょ。25口径に44口径に…9ミリ」
「とにかく!指紋や弾道を再照合して」
「…やや?警部、待ってください」
「何ょ?」
「ライムを含め、この4件は、最初に1人しか殺されてません。おい、そっちは?」
「ん?こっちもだ。だいたいストリートの喧嘩がコジれてからの発砲だから、犠牲者も複数パターンだがな」
「ソレが1発で1人かょ?10件とも?」
「コレも」
「コッチは違うが。例外?」
「おい。こりゃ偶然ナンかじゃない。ジャドーのパツキン姐さんの方程式通り、何らかの条件があるンだ。犯人は、ソレに基づいて標的を選んでる!」
「何らかの条件って?」
「バカ野郎。ソレを見つけるのが捜査のプロのヲレ達の仕事だ」
「早速調べよう。今宵は徹夜だ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナが煮詰まってるから、ちょっち遊びに来てあげて、とレイカ司令官から連絡アリ。
早速パーツ通りのゲーセン地下にあるジャドーに出向くと、既にレイカが話し込んでる。
「やぁルイナ。レイカ司令官も。しかし、そのコスプレ、派手だな」
「え。アラサーだと思ってバカにした?ミニスカートにもなるのょ」
「…今回の犠牲者の写真ばっかりだね」
「スゴい数でしょ?」
「犯人が、どーゆー基準で標的を選び出すのかを知りたいのょ。数学的には、行動モデルは無いけど基準は機会じゃないかと思ってる」
「どういうコト?」
ルイナは、まるで自分に話すかのように語る。
「この10件は、発端からの連鎖が長い。つまり、最初のドミノを倒してからの連鎖が長いの。東秋葉原の連鎖の平均は2.8回。でも、この10件の中には、7回も続いてるモノもアルわ」
「うーん確かにランダムならこうはならないね」
「平均値に落ち着くハズょ。やはり、何か基準がアルのょ」
「ルイナ。つまり、犯人は常に報復が最大限の効果を生むよう、慎重に標的を選んでるってコト?」
「でも、不用意に報復の連鎖が広がると、逆に自分の組織や仲間も標的にされる可能性が増えるわ」
ルイナ(いつもメイド服w)とレイカ司令官(コッチもメイド服w)が頷き合う中で、僕が発言←
「その前提がオカシイと思うょ。何で犯人が組織の人間だとわかるんだい?」
メイド服の2人はハッとして顔を見合わせる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、万世橋の捜査本部では過去10件の調査が佳境だ。真夜中なのに殺気に似た熱気←
「結局、ストリートギャング狙いの連続殺人ってコトか?」
「しかも、かなり慎重に標的を選んでるw」
「だから、内偵中の内調にさえ気づかれずに2年も続けてこれたンだわ。今回、やっと裏に潜む連続殺人鬼が浮上した」
「連続殺人鬼じゃない。連鎖殺人鬼だwしかし…報復を最大化させるためには、東秋葉原の内情にかなり詳しくないとダメだな」
ソコへさらに熱気を煽る情報が…
「あぁタイヘンだぁ!音波銃の周波数がデータベースでヒットした。先月のコスプレキャバクラ強盗殺人で使われた音波銃だ」
「何だと?音波銃のオーナーは?」
「ソレが…実在しないハズの銃ナンだ」
「どーゆーコト?」
「あ、警部。3年前の"音波銃回収プログラム"に提出された銃ナンです」
「"音波銃回収プログラム"?あの秋葉原デジマ法制定の前サバキで行われた"秋葉原の刀狩"と呼ばれるイベントだっけ?」
「YES。異次元人に効果の高い音波銃を秋葉原から一掃し、安全な秋葉原にスルための政策でした。その中で破棄されたハズの音波銃ナンですが…」
「実際は違ってたワケね?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。東秋葉原の和泉公園。真夜中の児童遊園では、コーナーにあるじゃぶじゃぶ池(夜は水が抜いてアル)で踊り戯れる異次元人達。
「いたぞ」
緩く走るSUVのウィンドウから突き出されたのはラッパ型の音波銃の銃口だw
ブラにマイクロミニだけつけて、腰を揺らす異次元人の女達に狙いを定める。
「キャー!」
悲鳴を上げ、次々と倒れる女達。居合わせたブラザーが拳銃を斜めに構えて応射。
アクセルを踏み込み逃走を図るSUVを追って次々と車に飛び乗り追いかけて逝く!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1時間後。現場はサイレンを鳴らし、ランプを明滅させるパトカーと救急車で埋まる。
制服警官が非常線を張る中、ストレッチャーに載ったブラザーが救急車に運ばれる。
「コレもライム殺害による連鎖のプロセスでしょうか。銃撃ドミノの始まり?」
「午後"イズミンパーク"の溜まり場が襲撃されたコトへの報復ですね」
「ドミノはまだまだ続くわ…ん?アンソじゃないの!」
地面に大の字…だが、血塗れで死んでるw
「あのママ保釈にならなければ、生きていたのに」
「警部、お話しが。"秋葉原の刀狩"こと"音波銃回収プログラム"で紛失した銃を調べたトコロ、妙な書類が見つかりまして」
「何ょ?サッサと話して」
「押収した音波銃の受取人の署名です」
「ジョホ・ウォカ?!官邸の情報官じゃないの!マジ?」
「残念ですが、リアルです。事件との関係は不明ですが、首相官邸がライムを殺した音波銃に関わってるコトは事実です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
「所轄が何様?首相官邸の情報官である私を事情聴取?」
「ジョホ情報官。凶器の音波銃の押収責任者に貴女の署名がアル。お話しを伺わざるを得ません」
「ソンな署名、いくらでもしてるわ。刀狩プログラムは、異次元人との融和を掲げる首相官邸の目玉政策だった。私自身は6年も携わってます」
「音波銃は、必ずしも全数、溶解処理されたワケでは無さそうですね」
「その代わり、今まで何丁の銃を回収し、何人の異次元人の命を救ったと思うの?」
「問題の音波銃は、ナゼ犯人の手に?」
「知らないわ。ソレを調べるのが所轄の仕事でしょ?刀狩プロジェクトは、ボランティアの手で運営されており、警備は完璧じゃないし、人の出入りも多い。恐らく当日は、多分50丁は回収してるハズょ。その内1丁がすり抜けても、49丁は回収してるの」
「問題は、その1丁が連鎖殺人鬼の手に渡ったコトです」
「ヤメて頂戴。その音波銃がなくても連鎖殺人鬼は別の音波銃を使って誰かを殺す」
「失礼します」
捜査官が割り込んで来る。
「追跡調査の結果、回収した音波銃の内、約10丁が未処理と判明しました」
「未処理って…今も何処かを流通してるワケ?ジョホ情報官、官邸肝いりの"秋葉原の刀狩"プログラムの流れを説明してょ。音波銃回収の手順は?」
「通常5〜6カ所の回収所があって…大抵は教会や地域の"ふれあいプラザ"とか…」
「引き取った音波銃が何処で回収されたかは、どーやって区別するの?」
「引き取りに立ち会い、署名した担当官の名前でわかる。この場合、全て、その、あの、まぁ私らしいンだけど…」
「では、全て同じ回収場所ですね?ソレは何処?」
「私の担当の回収所は"東秋葉原ふれあいセンター"ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたんに聞いて!」
満を持して踏み込むラギィ警部以下、万世橋御一行を前にオリビ所長は1歩も引かないw
「皮肉以外の何者でもナイわ。東秋葉原のために働いてるのに、万世橋に疑われるナンて!でも、テリィたんから頼まれればイヤとは言えナイけど…」
「オリビ所長。音波銃の回収は良いコトだと思います。そのために捧げられたボランタリーなイニシアティブには心から敬意を払いたい。だから、当時の記録を見せてください。音波銃の回収に関わった人物をどーしても知りたいの」
「みんな異次元人のボランティアょ。秋葉原デジマ法の制定前に自ら異次元人であると名乗り出た勇気ある人達なの。万世橋に名が流れたとなれば、もう協力してくれなくなるわ。でも、テリィたんから頼まれればイヤとは言えナイけど…」
「名前と住所を教えて欲しい。ボランティア採用の時の身元調査の記録があるハズです」
「拒否したら?でも、テリィたんから頼まれれば拒否しナイけど…」
ソコへ急な呼び出しに息せき切って駆けつけた僕は、そのママ所長の前に押し出されるw
「テリィたん!」
「オリビ所長。条件は?」
「あのね"地下鉄戦隊メトロんX"の次作に私を出して!」
「OK!チョイ役の女戦闘員。網タイツとか似合いそうだし…」
「嫌っ!生足勝負で悪の女幹部よっ!」
「年齢的に辛くナイか?」
「テリィたんの推しと良い勝負だわ」←
振り返るとラギィ警部以下の拝むような顔w
「わかった。メディアと相談してみる。でも、最終回は待たズに死んでもらうからね。OK?」
オリビ所長は、ニッコリ微笑み後ろの金庫を開けて(鍵がかかってナイw)書類を取り出す。
「誇らしいわ!捜査に貢献が出来て!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、捜査本部で読み込みが始まる。
「回収された音波銃に触る機会があった人物は10名です。コレが彼等の身元です」
「聖職者とかは外して、この6名が有力です。異次元人ギャングに詳しく、犯行能力があります」
「犠牲者との接点を調べて!特に最初の犠牲者とね。連続殺人鬼の時って、最初の殺害に大きな意味があるのょ」
「怨恨とか?最初の犠牲者とのつながりですね…コイツから当たりましょう。オマァ・ブライ。銃撃は2年前です」
「私は家族に会うわ。貴方は一緒に来て」
「警部、私達は聞き込みで容疑者との関係を探ります」
全員、上着を引っ掛けて真夜中の街へ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻の"潜り酒場"。
「おかえりなさいませ、テリィ様。何か私のコスプレがどーかしたとか…」
「ええっ?!何の話かな?!…あれ?ミユリさんひとり?珍しいな、ヘルプのつぼみんは?」
「さっきデートから帰ったばかりで。今、着替え中です。テリィ様、私では御不満でも?」
「ええっ?!まさか?!…あ、つぼみん!デートどうだった?!」
「あ、テリィたん。まぁまぁね。悪くはナイわ」
「で、バーマンの彼には何を?」
「もっとリッチなお食事にすれば良かったのに」
お!ミユリさんの話題がソレた!ブラボー!
「いやいや、ミユリさん。男って、割とデートの記念になるモノを欲しがるモンさ」
「あぁ聞くの怖いわ。で、つぼみん。彼には何をあげたの?」
「…石鹸です。メイド長」
「え。」
「とても高価な石鹸です」
「そ、そう?で、反応はどうだった?」
「そうですね。大喜びは…されませんでした。丁寧に御礼は言われましたが…あぁ!やっぱり失敗だわ!」
「え。うまくいったンじゃないの?」
「最高だったとは言ってません…」
盛り下がるw話題チェンジ!ルイナの出番だ。
「ラギィは、容疑者と最初の犠牲者の接点が不明で悩んでたな。まぁ容疑者がいるだけマシだけど」
「え。何で容疑者と最初の犠牲者を結びつけたがるの?」
「連続殺人鬼って、最初の犠牲者が鍵ナンだって」
「うーん銃撃ドミノは、連鎖全体を見なきゃ意味ナイのょね」
「と逝うと?」
「私、連鎖をドミノに例えたわ。仮に、私が犯人だとして、ギャングのボスを殺したいとスルわ。直接撃っても良い。でも、組織の構造さえ知っていれば、もっと賢く動けるわ。ボスでなく、側近を撃つの。側近を殺せば、銃撃ドミノが起きて、標的のボスが殺されるってワケ」
「ナルホド!ソレなら、犯人は直接手を下さズに済むのね?」
「金の動きもなく、殺す動機もなく、疑われる余地がナイ」
「でしょ?銃撃ドミノは、全体を見れば犯人が見つかる魔法の方程式ょ」
「スゴいな。恩に切るょ(ラギィがw)」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部は騒然となるw
「最初の殺人じゃなくて、銃撃ドミノ全体を見ルンだ!」
「捜査方針の変更?」
「真の標的は、最初の1人ではなく、ドミノの先だってょ!」
「なるほど。確かにそーかも」
「ブライ殺害で疑われたのは、全員"イズミンパーク"のメンバーだった。その後、殺されたアルバ・ロスコとか」
「ロスコ殺害のファイルならココにアル。ブライが殺された1週間後に殺されてる。ドミノ連鎖の2番目の犠牲者だ」
「…ん?待てょ?おーい!"東秋葉原ふれあいセンター"のボランティア名簿、誰か使ってるか?」
「ココにあるけど何か?」
「見ろ。ロスコは、別の銃撃事件の容疑者になってる。ロスコの犠牲者は…5才のアウェ。ムゴいな。アウェの母親は、当時シングルマザーで"東秋葉原ふれあいセンター"で働いてたらしいw」
「何?ホントに?」
「YES。そのシングルマザーは"秋葉原の刀狩"にもボランティアとして参加してます!」
「彼女が…息子を撃ったギャングを銃撃ドミノを使って殺した?」
ラギィ警部が溜め息をつく。
「ドミノの輪が閉じたわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"東秋葉原ふれあいセンター"は戦場だw
シングルマザーのシクアは"刀狩"からクスめた音波銃を握りしめ人質もとらズ籠城中。
周囲は、対異次元人装備のジャドー特殊部隊が固めて、サイキック抑制蒸気を放出スル。
ラギィ警部が駆けつける。
「彼女は1人です。サーモグラフィで確認。電話に出ません」
「隣人がラッパ型の銃口を目撃してます。窓際に誘き出せば狙撃出来ますが…」
「え。殺す気?ダメょ!」
「近隣のヲタクから苦情が出てます。彼等の命もまた、危険にさらされている」
「そんなw彼女だって同じヲタクょ。何とか説得してみるわ…テリィたんが」
え。僕かょw
「"国民的ヲタク作家"の出番ょ。テリィたんなら出来る!」
「そ、そんな」
「テリィ様。彼女にもチャンスをあげて。誰も死なズに済むカモしれません…ムーンライトセレナーダーが、お供致します」
振り向くと黒いセパレートにヘソ出しコスプレをしたムーンライトセレナーダーがいる。
ヤレヤレだ。彼女がスーパーヒロインに変身スルと僕の身にはロクなコトが起こらない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕とミユリさん…じゃなかった、ムーンライトセレナーダーは、前後左右を熱線銃や電波銃を手にした特殊部隊に守られセンターへ。
特殊合金の盾の影から恐る恐る叫ぶ僕←
「シクア!聞こえるか?ふれあいセンターの青空教室で片付けを手伝ったテリィだ。覚えてるか?」
「…え。"国民的ヲタク作家"のテリィたん?あの"地下鉄戦隊メトロんX"の原作ライターの?」
「YES。いつも声援ありがとう!東秋葉原で僕と握手だ!」←
激しくガラスが割れる音がして、キュートなツインテが顔を出す…
その瞬間、彼女のオデコに赤い点が…照準用レーザーポインター?
「狙撃中止!誰も撃つな!落ち着いてくれ」
「話すコトはナイわ」
「ソレなら聞いてくれ。事情は知ってる。息子さんアウェのコトだょな?」
「まだ5才だった。5才よっ!守ってやれなかった。ママ失格なの!」
「ヒドい事件だった。だが、もう人を傷つけちゃダメだ」
「手遅れだわ!」
「ふれあいセンターのキッズ達は?まだ救えるだろ?キッズにはシクアが必要だ!」
「どうせ、私は蔵前橋(の重刑務所w)行きよっ!」
「お願いだ。音波銃を置いて出て来てくれ。今日は、もう誰も傷つけちゃダメだ」
きっと今頃、彼女は亡くした息子の写真を取り出しジッと見詰めてるハズだ。
そして、音波銃のラッパの形をした銃口を自分の側頭部に当て悲しく微笑む…
「シクア!僕と話をしてくれ!」
「テリィ様、立ち上がらないで!」
「伏せるのよっ!テリィたん!」
銃声。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「結局、あの銃声は喜びの祝砲だったワケ?」
「テリィたん、彼女に何て言ったの?」
「この腐女子転がし」←
"潜り酒場"のカウンターで頭を抱える僕w
僕は、自殺寸前のシクアに"メトロんX"の悪の女幹部役を打診、錯乱した彼女は(死んだ)息子が喜ぶと狂喜乱舞し武器を捨て投降w
「…でも、内調の捜査官を銃撃ドミノで謀殺した彼女が特撮番組に出れるハズがナイ。今頃シクアは蔵前橋だ…」
「今日のテリィ様は、御立派でした。もっと胸を張って。みんなが命を落とさズに夜を迎えた。シクアでさえ。ソレだけで、東秋葉原では奇跡です」
「あぁシクア…」
「テリィ様、わかりました。ガード下の巨乳メイドカフェへ行ってらして。メイド長のカノンには私から電話しておきます。はい、お小遣い…あら、つぼみん。何処逝くの?」
「あ。ミユリ姉様、デートですぅ」
「マモロくん?彼とは終わったンじゃないの?」
「ソレが!成功率の高いミュージカルのチケットが手に入ったのです。ルイナさんの計算結果によれば…」
「まぁ石鹸よりマシなのは、数学が0点でもわかるけど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ある日の"東秋葉原ふれあいセンター"。
「誰かに音痴だと言われたらどーする?腹が立つだろうけど、どうすれば良いか、先ず考えルンだ。そして、自尊心を守るタメには、もうふたり、音痴な友達を作ろう」
ソンな話をドア越しに聞いてるオリビ所長。
気配に振り向き彼女に気づいた僕は苦笑い。
「シクアの代わりが入るとは聞いてたけど、まさかテリィたんとはね」
「和音の話をしてる。僕も子供時代、こーゆー施設でコードを覚えた」
「そーなの?」
「YES。ヤンチャだったからね」
「だった?」
「手厳しいな」
吹き出すオリビ所長。
素顔が…美しい人だ。
「終わったら…職員に知らせてね」
「わかった」
「内調にお友達がいるなら…私の電話番号も直ぐに調べられるでしょ?」
僕達は、お互いに指を差し合って別れる。
再びバンドに向き合うと全員ニヤニヤ顔w
ヤレヤレ。マセたキッズだな←
「話に戻るょ。もし誰かに音痴だと言われたら、他に音痴の友達を2人見つけて、3人で和音を響かせルンだ。3人なら人間でも、異次元人でも構わない。きっと美しい和音が響くハズさ。この東秋葉原でね」
おしまい
今回は、海外ドラマでよくテーマとなる"事件のドミノ現象"を軸に、殺人ドミノを駆使するシングルマザー、東秋葉原にある異次元人ふれあいセンターの所長、内調の覆面捜査官、その上司で次官級の情報官、犯人を追う所轄の警部と部下達、ヘルプのメイド、殺人ドミノをモデル化した天才、作家としても頭角をあらわす主人公などが登場しました。
さらに、ダウンタウンとしての東秋葉原、主人公の売れっ子作家ぶり、ヘルプメイドの恋バナなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第4次コロナ宣言が解除となり急速に感染者の減る秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。