K70星雲
シンディーにせかされるように宇宙船は、アルフによってアルバート星を飛び立って行った。
「どうだジャスティン、何か新しいことは分かったか?」
尋ねるシンディーにジャスティンは、答えた。
『いや、相変わらず様々な情報が錯綜し、どこもかしこも混乱状態だよ』
「そうか」
次期動力源と目される資源開発だけにあらゆる危険が想定された。そんな中で、分かって来たのは、どうやらどこかの連中が次世代開発に先手を打つべく仕掛けたらしい、ということだった。
やがて、K70星雲に着いたシンディーは、その惨状に目を見開いた。どこもかしこも破壊されたスペースプラントの残骸が無残に浮遊している。その隙間を縫うように飛んでいくシンディー達は、やがて、ある星へと着陸した。
「調べてみようぜ」
シンディーは、立ち上がると宇宙船から這い出てその星へと降り立った。武器は携帯している。辺りをうかがいゆっくり調べを進めていくうちにシンディーとアルフは、ある痕跡を見つけた。
「これは……」
それは、余程特殊な任務にしか使われない炸薬が混じっている。
「シンディー、どういうことだ?」
アルフが困惑する横でシンディーは、うなずき言った。
「これは明らかに特殊部隊の仕業だ。それもとびきりの……」
そこでシンディーは、何かの気配を機敏に感じ振り返った。
「どうした? シンディー」
「何かいる」
そう感じた次の瞬間、目の前に何かが飛んできた。それが爆発物であることに気付いたシンディーは、すぐさまアルフを庇った。
と、物凄い爆発が起き、シンディーはアルフもろとも吹き飛ばされてしまった。
「しまった……」
遠のく意識の中でシンディーの視野にある男の姿が現れた。その男の顔を確認したシンディーは、思わず呟いた。
「大佐……」
そして、目の前が真っ暗になって意識は途絶えてしまった。
………
……
…
シンディーは、いきなり顔面に水を引っ掛けられて目を覚ました。そして、目の前にいる男を確認するや唇を噛んだ。
「大佐」
それは、かつてシンディーが軍に所属していたときの直属の上官のデイモンだった。
「久しぶりだなシンディー、また会えて嬉しく思うよ」
デイモンは、ニンマリ笑っている。そのニヤケ面をぶん殴ってやろうかと思ったシンディーは、はたと自身がロボットアームを取り外され無防備な状態であることに気付いた。
「残念だな。シンディー、君を解体させて貰った。以前のように殴られかねないからな」
以前のように、とはある昔の任務での話だ。自らの部隊を見殺しにしたデイモンの指揮にたまりかねずシンディーは、上官であるデイモンを拳でぶっ飛ばし、それが原因で軍を追われたのだった。それだけにデイモンは冷酷非情で油断のならない男だった。
「ふん、悪いが大佐。うちはアンタの言いなりにはならないよ」
そっぽ向くシンディーにデイモンは「そうか」とうなずき、部下に命じあるものを見せた。それは、爆弾を身体中に括り付けられたアルフの姿だった。
「アルフっ!」
叫ぶシンディーは、思わずデイモンを睨んだ。
「大佐、アンタは何が望みなんだ?」
「話が早くて助かるよ、シンディー。君もこの一帯のテラジウム資源開発の事は知っているだろう。私はこの資源を一部の独占された階級のみが支配するのではなく、万民のものとしたいと考えた。つまり革命だよ」
「ふん、嘘をつけ。その実、全てを独り占めする気だろう。だがそれは出来ないぜ」
怪訝な顔をするデイモンにシンディーは言った。
「あれはうちのもんだ」
それを聞いたデイモンは、大声をあけて笑いながら言った。
「そうか、まぁいい。だが、その前に君達にはやってもらいたい事がある」
「やってもらいたい事、だと?」
聞き返すシンディーにデイモンは、ニンマリ笑ってうなずいた。
「そうだ。君達にしか出来ない事だ」