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サイボーグ・シンディー  作者: ドンキー
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暗殺団

 シンディーがジャスティンとシンクロを果たしていた頃、ドーラセブンでは大変な騒ぎになっていた。先の大戦において、あれほど猛威を振るった電子生命体が何者かによって封印を破れらたのだ。その影響は計り知れない。なおジャスティンは自然発生的に生命をサイバー空間に宿したのだが、そのきっかけを作ったのは、誰であろうドーラセブンなのである。

「一体、どこの連中がそんな大それたことを……」

 ドーラセブンの設計局長であるアントニーは神経質そうな顔で頭を抱えた。

「メディアはどうだ?」

 アントニーは、部下のバイロンに尋ねた。

「気付いている気配はありません。それより問題は……」

 小声で囁くバイロンにアントニーはうなずき、言った。

「とにかく社長には、この旨を告げておく。今は微妙な時期だ。君は軍部の方を頼む」

「かしこまりました」

 バイロンは上司のアントニーに拝礼すると部屋を引き下がって行った。

 アントニーが微妙な時期と言ったのは、この銀河の星域にコロニーの新たな動力源となるテラジウムが発見され、その利権を奪うべく各勢力が密かに食指を動かしていた時期だったからだ。多星籍企業のドーラセブンとしては、事を穏便に運びつつ、テラジウムの利権を確実なものにしておきたい。そういう事情がある手前、あまり派手には動けないのだ。とにかくドーラセブンとしては、公にはジャスティンが逃げ出したことについて、見ざる聞かざる言わざるを貫くことになった。

 やがて、バイロンは廃棄コロニーに残っていたモニターから、その仕業がシンディーとアルフの仕事によることを突き止めた。バイロンは密かに口封じの暗殺団を派遣を決定し、ゴロツキどもを前に言った。

「調べによるとこの二人は、トレジャーハンターを称し、宇宙を荒らしまくっているならず者だ。ジャスティンの意味も価値も分からずにいるに違いない。今のうちに葬り去るのだ。報酬は百万ディール出そう」

 その報酬にゴロツキどもは顔色を変え、舌舐めずりしながら漆黒の宇宙へと解き放たれて行った。


「テラジウム? 聞いたことねぇな」

 シンディーは、自らのボディーに宿したばかりのジャスティンの話に首を傾げた。

『今、この宇宙の最もホットな話題さ。ドーラセブンは秘密にしようとしているがね。ある星域にコロニーの次期動力源となる資源の埋蔵が確認されたんだ』

「ふーん。なぁ、アルフは知ってるか?」

「いや、噂には聞いたことがあるけど、まさか本当だったとは思わなかったよ」

 意外そうに答えるアルフにシンディーは、うなずきつつジャスティンに尋ねた。

「そのテラジウムとやらは、当然、金になるんだろうな」

 途端にジャスティンの態度が失望に変わった。

『相変わらず君は低俗だね。世界のエネルギー地図を一変するほどの情報を前に金かい?』

「あぁ、他に何がある?」

 素朴な疑問を呈すシンディーにジャスティンは、独特の響きを持った魔の一言で答えた。

『覇があるさ』

 シンディーはキョトンとしている。

「覇?」

『次の銀河の帝王の座に僕達が就けるチャンスってことさ』

 それを聞いたシンディーとアルフは、思わず顔を見合わせた。所詮、宇宙の一トレジャーハンターに過ぎない自分達がこの銀河の帝王の座を簒奪するなど考えたこともない。だが、ジャスティンの言った言葉には、人を酔わせる響きがあり、その次元を超えた新鮮な発想が特にシンディーの好奇心と冒険心をこれ以上になく刺激した。

「覇、かぁ……」

 確かに今までシンディーがいた世界にもそれはあった。スラム街にいた時もあったし、軍属であった時もそれが重くのしかかって来た。どこに行っても上には上があるし、時にはそこに媚びへつらうこともあった。だがその覇を自らの手中に納めるチャンスが転がり込んできたのである。これ以上はないトレジャーハントの構想にシンディーの顔は、たちまち興奮に溢れた。

「いいね、ジャスティン。面白そうじゃねぇか。アルフ、うちらでその覇とやらを奪って、この銀河に君臨する帝国を築いてやろうじゃないか」

『ふふ、そう来ないとね。と、その前にやることがある』

 ジャスティンは、シンディーにドーラセブンから自分達に向かって放たれた暗殺団の情報を伝えた。

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