最上階
動かなくなったレオンを抱え、塔の最上階へ来たシンディーは、部屋の中央にかざされているものに目を止めた。
「なんだ?」
不審に思い近づいてみると、それは結晶の欠片だった。
「これは……」
それは、以前、遺跡で見つけたものと似ている。だが、所々模様が異なっていた。その結晶の欠片を手にとったシンディーの体の中に何かが流れ込んで来た。これまで経験したことのない様な謎の波動である。シンディーには、それが何か分かった。
「コンラートの術か」
ジャスティンが叫んだ。
『シンディー、この波動はかなり危険だ。下手したら命を落とすほどの有毒波動だぞ』
だがシンディーは、驚かない。
「あぁ、そうさ。それにうちが耐え続けることで、この術は会得出来るんだ」
そして、覚悟を新たにした。
「うちはやる。ここまで来たんだ。何がなんでもこの術を……」
シンディーは、ふうっとため息をつくと瞳をつぶりその波動を受け入れた。その途端、強烈な刺激が電流の様に体中を走り抜け、その刺激に気を失いそうになったが、ギリギリで耐えた。
『シンディー!』
「だ、大丈夫……だ……」
シンディーは、両手で体を押さえ、その場にうずくまって必死に駆け巡る刺激を耐え忍んだ。その刺激はボディーを執拗に蹂躙したのち、今度は頭の中に入り込んで来た。
「うがぁっ……頭が、割れる……」
シンディーは、頭を押さえ髪を掻き毟り、地面に転がるやのたうちまわった。徹底した苦しみの嵐は、終わることなく永遠と続いていく。汗と涙に塗れ、髪を振り乱して、もがき足掻きながら、シンディーはその術を自身の中へと押さえ込んでいった。
ーーうちはやる。この術を会得するんだっ
苦しみの涙を流しながら、シンディーは掌を拳にして耐え忍んだ。
どれほどの時間が経過したことだろう。ひたすら苦しみの境地をもがき続け、死の寸前まで行ったシンディーは、やがて、はたと術の波動が自身の体の中へと収まっていくのが分かった。それとともに力が漲ってくるのを感じた。
その謎の力に戸惑いを覚えつつ、ふと悟った。自分はコンラートの術を会得したのだと。シンディーには、その術がどんな効能を持つのかがなんとなく分かった。不意にシンディーは動かなくなっていたレオンの元に歩み寄った。そして、その頭をそっと撫でつつ、念力を唱えた。
その途端、それまでピクリとも動かなかったレオンが、目を見開き、シンディーの手を舐め始めたのだ。
『生き返った!』
驚くジャスティンにシンディーは、うなずいた。
「この術がどんな力でなのかは、うちにもまだよく分からない。おいおいと見出し、ものにしていくしかない気がする」
不意に塔が地響きを立てて揺らぎ始めた。
「なんだ!?」
シンディーは、辺りを伺った。何やら外で音が轟いているのである。
『シンディー、屋上だ!』
「あぁ」
叫ぶジャスティンに急かされる様にシンディーは、塔の屋上へと上がり、周囲を見渡して息を飲んだ。なんと異空間そのものが崩れ始めているのだ。
「シンディー!」
自身を呼ぶ声にはたと見上げるとアルフとカミラが宇宙船でシンディー達を屋上に迎えに来ている。
「飛び乗れ、シンディー!」
叫ぶアルフにシンディーは、ハッチの開いた宇宙船に飛び乗った。カミラが抱きついて来た。
「は、博士……」
「よかったシンディー!」
カミラは、シンディーの頭を撫でながらその自信に溢れた顔を見て言った。
「やったのね、シンディー」
「あぁ。うちはやったぜ」
シンディーは、カミラに明るくうなずいた。
「よし、じゃぁ行こうか」
アルフは、エンジンを全開にして崩れ始める異空間を脱出して行った。




