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サイボーグ・シンディー  作者: ドンキー
20/55

トーマス

「シンディー、しっかり!」

 苦戦するシンディーに外で見守るカミラが声を上げた。それほどまでにシンディーは追い詰められていた。ふらつき倒れかけるところを精一杯踏ん張って耐え忍びながら、荒い息で活路を必死に探るシンディーに対し、生命体はじわりと忍び寄って来ている。

 ーー遂にうちもここまでか……

 シンディーが、観念しかけたときだった。

『シンディー』

 ジャスティンはシンディーにある情報を伝えた。シンディーは思わずジャスティンに聞き返した。

「本当か、ジャスティン?」

『多分ね、賭けてもいいよ』

 そう答えるジャスティンにシンディーは、しばし考え、そしてうなずいた。

「分かったぜ」

 一息つくやシンディーは大胆にも生命体に対し、ガードを下げほぼ丸腰で手招きした。常にギリギリの切所を切り抜けてきたからこそ思い切れる大胆さがシンディーにはある。

 その挑発を生命体は機と見た。一気に決着をつけるべく地を蹴りシンディーに対し一気に距離を詰めたのだ。そして、まさにそこにジャスティンが見抜いた生命体の攻め手に関する動きの癖が如実に現れた。

「来たっ!」

 あらかじめ生命体の動きを読んで逆に打って出たシンディーの思い切った一撃が生命体の顔面を貫いた。シンディーの背面肘打ちがカウンターでもろに入り、生命体はよろめいた。

「決まったっ!」

 思わずシンディーは、声をあげた。遂に手も足も出なかった生命体に対し戦機を掴んだのである。

『今だ、シンディー!』

 叫ぶジャスティンに背中を押された様にシンディーは、生命体にラッシュを掛けた。ここで決めてしまわねば、もう好機は来ないーーそんな決意で迫るシンディーの怒涛の攻めに生命体は、押されまくっている。

「行けぇっ!」

 トドメとばかりにシンディーは、相手の顔面目掛けて跳び膝蹴りを放った。まさに最後の力を振り絞って仕掛けた大技である。

 それが見事に決まるや生命体の顔面は、音を立てて木っ端微塵に砕け散り、その後、胴体から足にかけて粉々に雲散霧消して行った。シンディーの勝利である。

「よしっ!」

 敗色濃厚の中に逆転勝利を掴んだシンディーは、両手で拳を作り全身でガッツポーズを取った。

「シンディー」

 駆け寄ってくるカミラにシンディーは、よろめき地面に手をついた。最後のラッシュに全身の全ての力を使い切ってしまったシンディーは、もはや立ち上がることも出来ない様子で、尻餅をついたままカミラに情けなく笑って見せた。

 そんな二人の前にふわふわと光の塊がゆっくり降りて来た。光の塊は二人の周りを漂いながら、何かを伝えようとしている様である。それを見ていたカミラは、はたと目を見開き叫んだ。

「トーマス、トーマスなのね!?」

 それを見たシンディーは、カミラに聞いた。

「トーマスって、博士が話していた実験中に正体不明の事故で消息がつかめなくなったって言う博士の思い人のことか?」

「えぇ」

 カミラはうなずき、光の塊に何かを話しかける。それに応える様に光の塊はカミラの周りをぐるぐると回ったのち、やがて、全てを伝え終えたのか、カミラの元を去り遺跡の中に消えて行った。

「博士……」

 シンディーには、トーマスがカミラに何を伝えたのかはなんとなく分かった。これまで研究を通じて追いかけていてくれたことへのお礼であり、思い人への最期の別れの様だった。

「トーマス……」

 肩を震わせて泣き続けるカミラをシンディーは、複雑な視線で眺め続けた。


 やがて、遺跡を制覇したシンディーとカミラが奥まで進むとそこには、結晶の欠片の様なものが転がっている。

「これは?」

 シンディーがその結晶の欠片を手に取ると遺跡が音を立てて崩れ始め粉々に砕け散り、二人は光の中に消えて行った。そして、その光を抜けると、周囲の景色はもといたシンディーのアジトに戻っていた。

「?」

 シンディーは、ふと目の前で吠える一匹の動物に目を止めた。子犬である。その子犬は盛んにシンディーに周りをぐるぐると回っていた。まるでシンディーに懐こうとしているかの様である。

「なんなんだこの子犬は? 一体、どこから……」

 困惑するシンディーにカミラは、笑って言った。

「どうやら、これが彼らのメッセージの様ね」

「この子犬がメッセージだって?」

 シンディーは、困り果てた様に頭を掻いた。

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