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サイボーグ・シンディー  作者: ドンキー
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トラップ

 シンディーが廃棄コロニーからドーラセブンの暗号資産に関する情報をダウンロードし終えたのを確認したアルフは、無線を取った。

「よし、シンディー。引き返して来い」

 その矢先の事だった。突如、アルフの宇宙船の端末に異常事態を知らせる警報がけたたましく鳴った。

「何だ!?」

 見ると誰もいない廃棄コロニーがまるで生命を吹き返したように作動し始めている。緊急事態を察知したアルフは叫んだ。

「シンディー!」

 だがその無線が切れた。

 ーーまずい。

 思わぬ事態に焦るアルフは、すぐさま計器類を指で弾きながら宇宙船を動かした。


 ーー危ねぇっ……

 シンディーは、突如、自身を襲ったレーザーをほとんど直感だけでかわした。廃棄コロニーが音を立て、その隠された生命活動を再起動させている。迎撃装置が次々に作動し、シンディーは周囲を包囲されつつあった。すかさずシンディーは、宇宙空間で活動する自身の機械的なサポートの時間的余裕を確認した。

 ーーあと五分強……

 明らかに限界が間近に迫りつつある。

「相変わらず、楽はさせてくれねぇな」

 絶体絶命の境地でシンディーは、ふっと笑い自身の生まれ持った運命を呪った。シンディーの人生は、常に切羽詰まった危険な綱渡りと隣り合わせにある。生まれ育ったスラム街然り、かつて籍を置いていた軍隊然り、常に危険が身に纏う。切れるか切れないかの際どさの死線の中にあるのだ。

 今回の仕事もそうだ。危険を承知で引き受け勝負を賭けに行っている。その危険が形となった今こそがまさにその勝負所だ。

 シンディーは、自らが死線にいると悟るや驚異的な速度で周囲の迎撃装置を蹴散らしにかかった。まず前方のレーザー砲をロボット化した脚で蹴り飛ばすと、間髪つけず左右に展開する迎撃装置を自身の電子銃で寸分狂いない照準で破壊した。さらに近場の瓦礫をバリケードにするや廃棄コロニーを無我夢中で脱出し始めた。

 その強引な脱出の最中にあってシンディーは、冷静に次のことを考えている。脱出経路である。

「この廃棄コロニーは死んだフリをした立派な要塞だ」

 そうである以上、この先も罠が張り巡らされていると考えるべきだ。

「となると……」

 シンディーは、体を捻らせ、通常考えられるコースの逆を取り始めた。何と正面に据えられた二機のレールガンが配備されている真ん中を走り出したのである。

 そんな生死を分けるギリギリの駆け引きの中でこそ、シンディーの本領は発揮される。溢れ出すアドレナリンをそのままに、こちらに撃ち出されるレールガンの弾をシンディーはほとんど芸術的な体捌きでかわすや、その勢いのままに二機のレールガンの火線が重なり合うポイントに身を投じた。そこにレールガンの弾が重なった。

 途端に二機のレールガンは、自らの手でお互いの砲を破壊してしまった。たちまち凄まじい爆発が放射状に広がり、その破片と衝撃にシンディーは、吹き飛ばされた。

「くっ……」

 シンディーは、必死にその衝撃に争っている。

「こんなところで死ねるかよ!」

 やがて、壁に叩きつけられる手前で体を転がし、そのまま宇宙空間へと飛び込んだ。

 ーーあとは……

「頼んだぜ、相棒!」


「シンディー!」

 あらかじめシンディーの行動パターンを阿吽の呼吸で読んでいたアルフが、爆炎が上がる廃棄コロニーから飛び出して来るシンディーを見つけるや、その前に宇宙船を滑り込ませた。

「乗り込め! シンディー」

「いいぜ相棒」

 シンディーは、開いたハッチからアルフの宇宙船に転がり込んだ。

「よし、脱出だ」

 次々に誘爆していく廃棄コロニーから間一髪で危機を脱出したアルフとシンディーは、一目散でその場を逃げ出して行った。

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