取引
「つまり、あなた達は私の身柄を奪い合っているってこと?」
宇宙船の中で、カミラはシンディーに聞いた。
「あぁ、ドーラセブンの完全乗っ取りを目論むゴードンと革命勢力を率いるデイモンが奪い合っている」
答えるシンディーにカミラは聞いた。
「で、あなた達はデイモン側にいるって事ね」
「脅されてるんだ。体内に爆弾を仕込まれていてね」
「そう。色々事情がありそうね」
カミラは、うなずきため息をついた。その目はどこか虚ろだ。
「まぁ、私も似たようなものよ。したい研究もさせてもらえない会社の言いなりの奴隷」
それを聞いたアルフが横から口を挟んだ。
「でも次世代のコロニー動力源の研究をしてんだろう。有意義な仕事じゃないか」
「そうじゃないの」
カミラは、かぶりを振ると身振りを交え必死に訴えた。
「テラジウムは、そんな利権争いに塗れるような俗物じゃない。私は、もっとテラジウムの真価を見極めたいの」
「テラジウムの真価?」
シンディーは思わず聞き返した。
「えぇ、あれは、もっと……そう。全ての生命体にとって根源的な意義のあるものなのよ。でも誰もそれを分かってくれない」
全ての生命体にとって根源的な意義ーーそのフレーズにジャスティンが反応した。
『その可能性があるとは、知らなかったな』
「何だ、ジャスティン。気になるのかい?」
『まぁね。今、分かってるテラジウムの可能性を考えるとそのポテンシャルもないとはいえないね』
ジャスティンと会話をするシンディーをカミラが怪訝な顔で見た。
「シンディー、あなた誰と話しているの? ジャスティンって誰?」
「あぁ……うちの中で飼っている電子生命体がいてね。ボディーの中に匿ってるそいつと話してたのさ」
「電子生命体ですって!?」
カミラは、シンディーを何かを見つけたような目で見つめた。
「シンディー、あなたその電子生命体と一緒にいるのね」
「あぁ」
カミラは、シンディーに詰め寄った。そして、真剣な瞳で聞いた。
「シンディー、あなたはデイモンの束縛から逃れれたら、私に協力する気はない?」
「協力?」
聞き返すシンディーにカミラはさらに魅力的な条件を付け加えた。
「取り分は半々でいいわ。その代わり研究の方針は私が握る。どう?」
思わずシンディーは、隣のアルフと顔を見合わせた。
「アルフはどうだ?」
「僕は問題はないよ」
「ジャスティンは?」
『右に同じさ』
「よし」
シンディーは、カミラの方に向き直り、手を差し伸べた。
「カミラ博士、その条件で手を打とうじゃないか」
シンディーとの握手の後、カミラはシンディーのボディー内に仕込まれた爆弾を確認した。
「これね。確かに厄介ね……でも、何とかしてみるわ」
それから数時間、カミラは時限爆弾と向き合い続けた。カミラはこの道の専門家ではないが、その方面に通じた知識も豊富に持っている。刻一刻と痺れるような時間が流れる中、カミラは一つ、また一つと時限爆弾の回路を解除して行った。そして、遂に最後のパーツの解除に成功したカミラは、ふうっとため息とつきシンディーに言った。
「出来たわ」
カチッと音が鳴り、シンディーのボディー内に厳重に設置されていた時限爆弾がカミラの手によって取り出された。
カミラは、ニッコリ微笑みシンディーに言った。
「シンディー、あなたの身はこれで自由よ」




