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ドリイと楽園  作者: よた
付録
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地底の祝日

 以下は〈労働の日〉を除く。


〈学習の日〉……これは、『オミネス・マム』が作り上げた世界の成り立ちを学ぶとともに、その理解を深める日だ。学習には、いたって伝統的な脳内回路接続型自動学習装置を用いる方法で行い、自発的な学習を抑制する。これによって適切な知能指数を維持するとともに、地底社会に適切な人格を形成するのである。過度な思考力は『オミネス・マム』の教えに反した『非正義』な行動へ繋がるため、徹底的な言語統制のもと行われる。知への探究こそ、この世界の秩序を乱す最大の犯罪行為なのである。


〈感謝の日〉……読んで字のごとく、『オミネス・マム』への忠誠心を養う日だ。この世界で感謝という言葉の対象になる存在は『オミネス・マム』ただ一人だ。『オミネス・マム』がいなければこの世界はないし、『オミネス・マム』がいなければ、皆は毎日おいしい飯にありつけない。看守たちも『オミネス・マム』によって創造され、常に皆の健康状態や健全な思考を――なんとも慈悲深い愛情をもって――監視しているからこそ、いまの完璧な社会が実現されているのだということを再確認するのである。同時に、これは『オミネス・マム』と敵対する存在に対して憎悪の感情を爆発させる日でもある。かなりの精神的な負担を伴うため、大変良い効果が期待される。『オミネス・マム』と敵対する存在とはつまり、地底の外の存在を認める者である。


 ここで注意しなければならないことがひとつある。『地底の外の存在を認める者がいる』ということが、この世界が『オミネス・マム』によって創造された、という前述と矛盾すると思う輩がいるかもしれない。しかし、それは『非正義』な考えだ。なぜならば『オミネス・マム』が創造した地底こそが、この世界なのであるからだ。それ以外はなにも存在しないのだ。万が一、この考えに不満をもつ者がいれば、その者は再教育のために施設へと送られる。ちなみに施設から戻ってきたものは完全に『オミネス・マム』を愛したのち、廃棄される。こうすることで、秩序ある、そして、正しい、完璧な社会を実現するのだ。

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