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3- SFドラゴン爆誕!

(……あれ?)

 唐突に意識が目覚める。目の前に見えるのは、自分の元の身体が入った培養層。それを少し見下ろしている感じだ。それに、なんだか感覚が朧気だ。それこそ、夢の中にいるような……。

(ニューロ転送ってこんなのだっけ……?)

 ニューロ転送中、夢を見るなんて聞いたことはない。ドラゴン体なら人の姿が見えないところにあるから、目の前にあるのはおかしいはずだ。ニューロ転送は今やメジャーな技術だが、実際に行われることは少な目だ。元が医療行為だから……古代で例えるなら、一体どれだけの人が、臓器移植を経験するか、という話。失敗したという話は……ないわけじゃないが大抵が『死』だ。それも、極々稀のケース。

(こんなタイミングで? そういや死亡フラグだって言ってたなぁ……)

 それで死んだというなら中々滑稽だなぁ。笑い声をあげながら、何処かに引っ張られるのを感じる。そして、再び意識が闇に堕ちた。



(う……ん……)

 身体の感覚が朧気だ。さっきまで、何を見ていたんだっけ。ニューロ転送を指示して、服を脱いで培養層に入って……よく思い出せない。

『意識の覚醒を確認。培養液を排水、衝撃吸収ジェル展開。培養層開きます』

その電子音声と共に、周りにあった生暖かい水がなくなっていき……空気が抜けるような音と共に目の前の壁がなくなった。そして、何か柔らかいものの上に身体が落ちる。

「えっ……と……」

『起床時特有の意識混濁を確認。船長、起きてください』

 ……寝起きだっけ? なら後5分くらい。そう思った直後、頭に何か冷たいものがかけられた。

「冷てぇ! リラ、何しやがる! 風邪でもひいたら――」

『その身体はその程度じゃビクともしませんし、風邪もまずひきません。その事は船長がよくご存じのはずです』

 その注意で我に返り、辺りを見渡す。何もかもが、小さくなったように……それこそ、今まで見ていたコップが人形のコップくらいになったようにさえ感じられる。あぁ、そうか。

「……『ドラゴン』体の状態は?」

『バイタルは興奮状態である以外は正常。身体的異常なし。体内の各機械群、ナノマシン群は正常に稼働中。右目のモニターで確認できます』

 それと同時に視界の中にエネルギー残量及び、各部位の動作状況が表示された。VRシミュレーションでは幾度となく目にしたが……リアルに見て、感じるのではやはり感覚が違う。

「リラ、今の身体を見れる鏡を用意してくれ」

『既に準備済みです』

 そういうと同時に鏡がせりあがった。そこに映るは、真っ赤なドラゴン。口を開けばドラゴンがその顎を開く。背中の感覚を動かせば、翼が動く。尻にある感覚を動かせば、尻尾が揺れる。立ち上がれば――

「ん?」

『船内フィールド及び船長のEシールド稼働。身体が大きいのですから立っての移動は遠慮してください』

 漏電するような不安な音と共にモニター内のエネルギー残量がコンマ1くらい減って、すぐ回復した。俺は頭を下げ、前足を顔に当てた。そうだよな、標準で7mあるんだから頭位ぶつけるよな……シールドあるから痛い、ってならないだけで……。だが。

(……ふふ)

 前足を踏みしめる。VRシュミレータでの訓練はばっちりだ。4足でも違和感少なく歩ける。

(……ふふふふ)

 翼を思いっきり広げる。翼の先が壁に当たる。元々持っていない部位なのに、当たったという感覚が翼から背中へ。背中から俺自身に伝わってくる。

(…………ふふふふふふ)

 尻尾で軽めに地面をたたく。強くは叩いていないので重量物を地面に下ろしたような音が辺りに響く。聴覚・触覚がこの身体が……ドラゴンであると教えてくれる!

「がおぉぉおおぉおぉおおん!」

 歓喜の叫び、いや、咆哮! ドラゴンの吠え声にふさわしい声が辺りに響いた! 船内フィールドが稼働したように思うが気にしない! 俺は、ついに! ドラゴンになったんだ!

『音波攻撃でも被害が出ます、船長自重してください』

「吠え声くらい上げさせろよ。ドラゴンだぜ?」

 軽口を言いつつ、吠えるのはやめる。ラボ区画、壊れてないよな? 周りを見渡すも、基本的には大丈夫そうだ。置いてあったコップが地面に落ちたくらいだろうか。

「さて、と……」

 翼を閉じてから貨物用の扉を開き、ラボ区画から、貨物区画に出る。……やっぱドラゴン体はでかいなぁ。貨物区画以外には行けそうにないや。ドラゴン体で出歩く想定にはしていないから当たり前といえば、当たり前なんだけど。

(なら、やることは一つか)

 ラボ区画の扉を閉め、隔壁を手動で作動させてからリラに指示する。

「リラ、貨物区画のエアロック作動、宇宙空間へ出れるように」

『警告、当該惑星の情報収集が完了していません。完了度は12%です』

「情報データは地上で受け取る。今回は俺の地上降下を先にしてくれ」

『確認。宇宙空間用のEシールドをONにして下さい。確認後、貨物区画エアロック作動させます。』

 身体の機械に命令し、宇宙空間用Eシールド及び重力制御装置をONにして翼を開きなおす。本来ならきっと、この惑星の衛星軌道を何周もして、探査機を送り込んで、色々判明させてから降下するべきだろう。だが……そんなの待ってられるか!

(この身体なら、無茶も利くし! よっぽどのことがなければ何でもない!)

 貨物区画の空気が抜けていき、真空状態になる。ラボ区画、および宇宙艇や貨物室内の貨物が固定され、身体が宙に浮き始めた。

『完了。ハッチ解放、いつでもいけます』

(ハッチ解放! 降下したら、例の貨物を降下地点に頼むぜ!)

『了解』

 元気よく声を出したつもりだが……声はでない、真空中だから。そのまま、翼を羽ばたかせ、宇宙空間に躍り出た! 当然、空気の流れはない。実際は重力制御を行い、飛んでいるわけだし。

(宇宙空間はやっぱり不気味なくらい静かだなぁ。外から見る惑星は、いつ見ても綺麗だけど)

 昼の面だから、地上の面が明るく見える。緑色の靄がかかってはいるが、雲は通常通り白く、海はエメラルド色らしい。地上には植物の緑と、雪の白。あとは、荒野か山脈かの茶色。茶色というにはちょっと違うし、色々あるけど。

(さて、降りるか。待ってろよ、理想のドラゴン生活!)

 そのまま、惑星の降下軌道に入る。古代じゃできなかったらしいが……シールド内温度さえ保てれば、Eシールドと重力制御装置があるだけで生身だろうと――

(大気圏突入しても平気だかんな!)

 きっと、地上の文明がこれを見て居れば、隕石が落ちてくるように見えるだろう。まぁ……ドラゴンの門出には丁度いいか!


 だけど、俺の想像以上に、地上が大騒ぎになってたのを知るのは大分後の話。まー、未開文明に降りる場合、よくあることではあるんだけどな……。

次回更新は2月17日予定です。よしければ、感想・評価などお願いします。

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