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Mr.Blanket

作者: ぶるすけっ太

7年前にボカロで投稿した曲の裏設定みたいな話です。

ファイル整理してたら見つけたので供養供養。


自我が目覚めたのはいつからでしょう。

もしかしたらもっと昔かもしれないけれど

僕が覚えている中で

一番古い記憶が自我の始まりなのかもしれない。


最初の記憶


気づいたら僕はその場所にいて

同じ形をした物がいっぱい周りにありました。

後に自分も同じ形をしてる事を知るまでは

その物達と自分が同じ形だとは思いませんでした。


次の記憶


時間という概念を知らなかったので

どれくらい経ったのかわかりません。

周りにいた同じの形の物達が

段々といなくなっていきました。

誰かに選ばれるとここからどこかに行くようだった。


出会い


ここからははっきりと覚えています。

周りにいた同じ形の物達がすべていなくなり

僕だけがその空間にいました。

いつまでもここにいるのは

僕が駄目なやつだという事で、

しばらくしたらショブンというところに行くという事。


そんな時に君に出会いました。

周りの人は「これでいいの?」と不思議がりましたが

君は「これがいいの」と笑いました。

その日から僕は君の物になりました。


そこから僕が知ったのは

君が人間で僕が毛布だという事。

夜になって君を包んだ時に

自分の存在理由というものを知りました。


君との日々


君は最初はお父さんお母さんと同じ部屋で寝てましたね。

まだ小さかった君は僕の中に潜って探検ごっこなんてしてた。

僕の事を凄く気にいってくれて夏になってもずっと使ってたね。

でもやっぱり暑いから僕は蹴飛ばされて遠くに行ってた。

君に黙ってお母さんが僕を洗濯した時は

捨てられたと思って大泣きしてましたね。

そこから少し大きくなって自分の部屋が出来て

初めて1人で寝ようとした夜は少し寂しくて泣いてたのに

お母さんには1人で大丈夫だと強がってましたね。

怖い話を聞いた日はトイレまで僕を引きずって行ったり

まあ、おねしょの話は君の名誉の為にも止めておきましょうか。


友達と長電話してお母さんに怒られたり

友達と喧嘩して仲直りしたり

失恋して泣いたり

いろんな事を経験して君は大きくなっていきました。


就職が決まって1人暮らしの為の引越し

お母さんに「新しいの買えばいいのに」と

呆れられながらも僕を連れていってくれてありがとう。

カーテンの色や部屋の小物の趣味が変わっても

僕を変えようとしなかったね。


毎朝慌ただしく準備して

1人暮らしなのに「いってきます」って出ていって

その日が良い日だったのか悪い日だったのか

「ただいま」の声の感じでわかる君に

僕はいつも「いってらっしゃい」と思いながら

その日の君の無事を祈って

「おかえり」と思いながら

君が無事に帰ってきた事を喜んでいました。


お化粧と料理が段々と上手になっていく君を見て

うれしさと寂しさを覚えました。

疲れてそのまま眠ってしまったり

急に寂しくなって僕をぎゅっと抱きしめたり

出会った頃の君とあまり変わってないところ君を見て

少しほっとしました。


別れ


そんな君も素敵な人が現れて

恋して喧嘩して仲直りして結婚しました。

僕は君の身体を温める事しか出来なかったけど

その人はちゃんと君の心も温めてくれたんですね。

何となくその時に僕の役割が終わった事を感じました。

いよいよ二人の新居に引っ越すという時

僕は箱にしまわれました。

とても暗くせまいところでした。


それから君に会う事も

外の世界を見る事もありませんでした。


再会


どれくらい経ったのでしょうか。

僕の入っている箱を誰かが開けました。

久しぶりに見た君は

最後に見た時とずいぶんと変わってました。

髪の毛は白くなって顔にはしわがあって

でもすぐに君だとわかりました。

優しい瞳は変わってなかったから。


「久しぶりだね」

君が話しかけてくれました。

「これからまたよろしくね」

そして僕は毛布から

ひざ掛けへと生まれ変わりました。

お裁縫上手くなったんだね。


僕がいなかった間

君がどんな時間を過ごしてきたのか

わからないけど

君に似た小さな子が

「おばあちゃん」って笑顔で呼ぶから

幸せだったんだなあって安心しました。


ひざ掛けになった僕は

君のお出かけにもお供が出来るようになりました。

いつも見送る事しか出来なかったから

初めて外に出た時は緊張しました。


お芝居を見に行ったり

昔の友達に会ったり

旅行にも連れて行ってもらったね。

電車の中に忘れられそうになった時は

元毛布ながらヒヤヒヤしました。

あまり面白くなかったですか。


最近の君は

あまり外に出なくなりましたね。

縁側でゆっくりするのも

嫌いじゃないからいいけどね。

でもこんなところで寝ると風邪ひきますよ。

そういうところは昔から変わらないね。

そろそろ暗くなってきたし起きて

晩御飯の準備をしないといけない時間ですよ。

ねえ。

ねえってば。



そのまま君はずっと眠ったままだった。

君の身体を温めようとしたけど無理だったよ。

僕はちゃんと君の役にたってたのかな。

大事に使ってくれてありがとう。

僕を選んでくれてありがとう。


今日たくさんの花に囲まれた君と一緒に

僕も箱の中にしまわれました。



みなさんも物は大切に扱いましょう。

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