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ショートショート集

監視

作者: Yakumo Sugawara

 壁一面にモニターの並んだ部屋に二人の人物がいた。中年の男と青年だった。二人とも黒い制服を身に付け、パソコンが並ぶ机の前に座り、モニターを見つめていた。そして時折、何かをパソコンに打ち込んでいた。モニターに映っているのは、街角の大通りを行き交う人々やどこかの店内、駅構内など、監視カメラからの映像のようであった。

「先輩…こんな仕事、人がやる必要があるんですかねぇ。AIにでも任せた方が正確で早いんじゃないですか?」

 青年は呟くように言った。中年の男は青年の上司のようだった。

「新米、俺もこの仕事を始めたときはそんな風に思ったもんだよ」

 上司は答えた。

「それに一時期は全部AIに任せていたこともあったらしい」

「じゃあどうしてまた人がやるようになったのです?」

 まだ新米の青年はいささか驚いたようだった。

「まあ、いろいろ問題があったということだな…。AIに任せた途端に、犯罪兆候を持った人々の発見件数が激減したんだ。あのときは担当部門責任者が相当焦ったらしい」

「それにしても、どうしてです?」

「AIってのはどうも条件に厳格すぎるようなんだ。人の判断で、こいつは怪しいと睨んでもAIの判断では問題無しとなることが多かったんだ」

 上司はパソコンの画面を指先で軽く叩きながら言った。

「そんなものですかね」

「じゃあ、いっちょ試してみるか」

 上司はそう言うと、パソコンを操作した。

「例えば、だな。この人物はどうかな?」

 中心のモニターに男の顔が拡大されて映し出された。

「目つきが怪しいですね」

 青年は言った。

「そうだな。何かありそうだ」

 それから、上司は淡々とした様子で映像の男の顔を認識システムにかけ、情報を呼び出した。

「さてと、ここらで試しにAIに判断をかけてみよう」

 しばらくすると、AIは対象を白と判断した。

「特に問題はなさそうですよ。胡散臭そうな顔はしていますけど…」

 青年が言った。

「まあ、これからだな。さらに情報を呼び出してみよう」

 上司はさらにパソコンを操作した。そして、画面に新たな情報が現れた。

「これだな。どうやらこの男、一時は世の中に対する不満や社会批判ともとれる発言をインターネット上にしていたようだ」

「でもオリジナルソースは削除されているみたいですね」

 青年がデータを見ながら言った。

「そのようだな。だが、今現在のこの男の頭の中までは分からんぞ。過去の発言を消したところで、どう“考えているか”何てのは直接尋くしかないからな。それに、そんな考えを持っている人は世の中にどんな影響を与えるか、分からんからな」

 そう言うと上司は治安部門の担当者へ通報をした。

「よし、後は彼らが適切な対応をしてくれる」

 上司は満足そうにため息をついた。だが青年は、ちょっと納得しかねるといった顔をしていた。それを見た上司は胸を張るように続けた。

「まあ、新米、最初はよく分からんだろうが、いずれ分かる。社会の平穏と安全は我々にかかっているのだ。これは市民を危険から守るという重要な仕事だよ」

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