その8 「盗賊退治と……」
「ふっ!」
『グシャ!』
「グ、グルゥ……」
「グルゥ……」
アシュレの破壊力はヤバイな。森の中を歩いてたら直ぐに狼に囲まれた、そしたらアシュレが、どれくらい戦えるか試したいと言い出したので、任せる事にした、その結果がさっきの音。
アシュレが斧槍を具現化させて、狼に向かって振り下ろしたら、狼の顔が潰れました。んで、それを見た他の狼達がビビった。
「アシュレちゃん、凄いですね。」
「狼が可哀想になってくるんだけど。」
「失礼ね、生き物を殺していいのは、殺される覚悟のあるヤツだけ。戦いの世界では可哀想とかないのよ。」
まぁ、確かにそうだけど、俺は少し前まで非戦闘民族の日本人だったんだぞ。
「非戦闘民族は、あんな集中の仕方出来ませんよ。」
「はて? 何の事かな?」
「終わったから、さっさと行くわよ。」
どうやら、全部倒しきったようだ。なんか、むちゃくちゃグロテスクな物体があるんだけど、もう狼じゃなくて肉片なんだけど。
「なんで肉片になってんの?」
「属性を獄にして【地裂撃】やったら、ああなったのよ。」
「これじゃ、一円にもなりませんね。」
「とりあえず、収納しとこう。」
肉片を収納して、さくっとSPに変換させる。うん、たいしたSPにはならなかったな。
「さっきから気になってるんだけど、シグレ、そのお面なに?」
「今さらだな。」
「ほんとですね!」
「頭がおかしくなったのか、趣味かと思ってたわ。」
「地味に酷いな、実はかくかくしかじかでな。」
「シグレを……突き落とした?」
アシュレ? なんで、黒い笑顔を浮かべてるの? なんで、斧槍磨いてるの? 必要ないよね。
「ふーん。世の中には、シグレよりバカなヤツがいるのね。対人の練習相手になってもらおうかしら? 勢いあまって潰してもオーケーよね。」
「あ、私もやります! 勢いあまって斬ってもオーケーですよね。」
「うん。ほどほどにな。」
突き落された本人としては、止めるのはなんか違う気がする。それに、殺すなんて優しくないか? やっぱり、じわじわ苦しめるのが最て………おっと、ダークサイドに堕ちるところだった。
「それで? まだ着かないの?」
「あぁ、もうすぐだ。」
「そういえば、町に入る時お金いりますかね?」
「ん? そうだな、いるかもな。」
まぁ、こっちに来たとき活動資金として、金貨5枚貰ったから大丈夫だろう。
「あ、街道が見えましたよ!」
「街道を歩いて行けば、直ぐに着くから、後少しだな。」
「やっと着くのね、早く行くわよ。」
街道をのほほんとしながら歩いて行く。長閑だな~、さっきまで奈落の底にいたのに、外はこんなに長閑なんだな~。あれ?
「シアは何処に行った?」
「あそこ。」
「ん? 何やってんのアイツ。」
目を話した隙に、盗賊に襲われている馬車へ向かって走っていた。
「はぁ。しゃあない行くか、アシュレ武器になってくれ。」
「分かったわ。」
シアの時と同じように、光になって俺の右手に来た後、斧槍に変わる。
おぉ、やっぱりしっくりくるな。それじゃ、行くか。
「か弱い人々を、大勢で囲んで襲う。その悪逆非道、見過ごせません! この私が成敗します!」
「なんだてめぇ! へへ、なかなかいい女じゃねぇか。」
「自分から来るなんてバカなヤツだぜ。」
シアをバカだと見抜くとは、なかなか頭のいい盗賊だな。
「おらぁ!」
「ふっ!」
「がはぁっ!」
「安心してください、峰打ちです。」
両刃のはずなのに、どうやって峰打ちしてるんだ?
「なんだコイツ強いぞ!」
「ここは、一旦引くぞ!」
いやいや、逃がすわけないでしょ。
「割り込み失礼!」
「ぐぼふぁ!」
「あ、マスター!」
「なんだてめぇ!」
「通りすがりのウェポンマスターだ!」
ちなみに、斧槍で直接攻撃したら、ヤバい見た目になるから、柄のほうで攻撃している。
「たぁ!」
「ぐぼふぁ!」
「しっ!」
「げほぉっ!」
殺さないように気をつけて攻撃する。シアと二人で潰していけば、五分もかからず終わる。一人に十秒もいらないからな。そんなわけで、三分ほどで終わった。
「さて、コイツらどうしよう?」
「それより、シアが勝手に行動してるわよ。」
「シアは………まぁ、いいや。」
アイツは自由人だからな、ほうっといても問題ないだろう。ヤバかったら念話するだろう。
「大丈夫ですか?」
「はい。危ないところを助けて頂きありがとうございます。」
「助かったよ。ありがとう。」
「いえいえ、当然の事をしたまでです。あ、申し遅れました、私、剣乙女シアといいます!」
「シアさんですね、わたくしは、ロロフィ・ロードル。この国の第二王女です。」
「僕は、レイベ・ロードル。第一王子だよ。」
助けたのは王族だったよ、マジか。
「王女様と、王子様だったんですね。」
「シア。話終わったか?」
「あ、マスター! ご紹介します。こちら、王子様と、王女様です。」
「あぁ、聞こえてたよ。俺はシ━━じゃなくて、レイン・タイムズといいます。(シア、アシュレ、これからはこの名前でいくから。)」
「「(了解。)」」
「私は、斧槍乙女アシュレといいます。」
偽名を考える時間がなかったから、ゲームで使ってる名前にしてしまった。蒼一とかには速攻でばれそうだな。
「剣乙女に、斧槍乙女……何か意味でもあるのかい?」
「意味……よく分かりません。すいません。」
王子様が、シアとアシュレの言葉に疑問を感じたのか、訊ねてくる。ゲームの設定だからな、とりあえず、言葉を濁す。
「レイン様は何故お面を着けてるんですか?」
「まぁ、色々ありまして。」
今度は、王女様がお面に疑問をもったので、お次も言葉を濁す。
「そうだ、何かお礼をしないとね。」
「いえいえ、善意でやった事です。お礼はいりません。」
これ以上王族と関わっていると、正体がバレそうだ。王女様はともかく、王子様はかなり頭がきれるようだからな。
「皆さんはどちらへ?」
「この先にある町に行くつもりです!」
「わたくし達もそうなんです。そうだ! 馬車でお送りします。どうぞ、乗ってください。」
「いいんですか? お言葉に甘えて。」
「お邪魔しまーす。」
「え?」
王女様の純粋な優しさに、シアとアシュレが甘えてしまった。なんか王子様が心の中で、ナイス! とか思ってそうな気がする。
とりあえず、質問されても言葉を濁して、誤魔化そう。