その39 「食材と置物」
「「「「「おぉ~。」」」」」
「………。」
馬車と馬を『預け屋』という、馬車や馬を都市に滞在中世話してくれる店に預け、アルハラの門を通り抜けた俺達の目に入ったのは、とても賑やかな様子だった。
そこら中から呼び込みの声が聞こえてくる。
「どう? 賑やかな国でしょ?」
「そうだな。」
シャロンが胸をはって応える。
本当に賑やかだな、ここなら米が見つかるかもしれない。勿論、アイテムボックスの中にもあるが、限りがあるからな。出来れば、定期的に手にはいるようにしたい。
「はい。ここが私が任されているお店で、シャロン商会。この大陸にある各地の特産品は勿論。他の大陸から輸入した物も、少量だけど売ってるんだ。」
「へー、他の大陸ね。」
ならば、米とかあるだろうか?
「さてさてお礼だけど、倉庫にある物で欲しいものがあればあげるよ。あ、でも━━━」
「よっしゃー! 倉庫しらみ潰しに探せ、アレがあるかもだぞ!」
「「「「いえっサー!」」」」
「…………!」
シャロンが示した扉を開けて、皆なで中に潜りこむ。目標は米! もしくは、日本食に使える物!
「あ、ちょっと!」
「お嬢様、まさか!」
「うん。」
とりあえず、食材っぽいものを特定して調べて行くが、こっち特有の食材か、俺達が欲しているのとは別の食材ばかりだ。
「マスター!」
「お?」
シアが持って来たのは、よく分からない置物。
「それはっ!?」
シャロンとクロが複雑な表情をしている。どうやら、持ってっちゃいけない物のようだ。
「返してこい。俺達が欲しいのは、食材だろ?」
「はっ! そうでした。珍しそうな物だったんで、つい。」
「「はい?」」
「ん? どうした?」
「ううん。なんでもない。」
シャロンがそう言って首を振ったので、「そっか。」と返事をしておく。
「シグレくん! 鰻っぽい魚が生け簀にいました!」
「マジか! っていうか、生け簀あるのか!」
「うん。新鮮なままがいいと思って。」
ここの倉庫凄いな。それにしても、鰻があるなら余計米が欲しくなるな。
「シグレ! 山葵見つけたわよ!」
「おぉ!」
山葵か………寿司食えるかな? そのためには米がなぁ。
「主殿! 大豆がありました!」
「……………。」
『大根あったよー!』
大豆なら、醤油やら味噌やら納豆やらつくれるな。大根も美味しいしな。
そして、暫く倉庫を見て回った結果。
色々と和食に使える食材を見つけたが………
「こ、米がない。」
「残念だね。」
「まぁ、少しはあるし、他にもお店あるから探すわよ。」
「…………。」
「そうですね。諦めなければ、見つかりますよ!」
とりあえず、見つけた食材は全部買っておいた。なんでも、何に使えるか分からないものばかりだったらしく、格安で買えた。
鰻なんか、シャロンはうげーと、見ていた。美味しいんだよ。この見た目で、ぬるぬるしてるけど、美味しいんだよ?
「んじゃ、俺達は宿探して、今日のところは休むことにするよ。」
「そっか。また何かあったら来てよ。ここでのことなら、力になるよ。」
「そうさせてもらうよ。」
シャロン達と別れて、俺達は宿をとるために、人混みの中に入った。
◇
シグレ達が去った後のシャロン商会。
シャロンとクロは、シアが珍しそうな物と言った置物を持って、フードつきマントで顔を隠して、アルハラの中を歩いていた。
暫く歩いた後、アルハラの中心にある大きな屋敷に、裏口から入った。
「お帰りなさいませお嬢様。」
「ただいま。」
出迎えのメイドに挨拶して早々に、二階に上がり一つの部屋に入った。
「お姉ちゃん、クロさん、お帰り。」
「ただいま、ウィノ。調子はどう?」
「うん。今日は元気━けほっ。」
「ウィノ!?」
「ウィノ様!?」
ウィノと呼ばれた、白銀の美しい毛並みを持つ狐の獣人の少女が咳をすると、二人は慌てて、彼女の寝ているベッドに近寄る。
「ただの咳だよ。大袈裟だなぁ。」
「ウィノ…………」
シャロンは安心したようにため息を吐いた。
「お嬢様、そろそろ。」
「うん。ウィノ、はいコレ。」
「お姉ちゃん、コレ何?」
「ウィノが良くなるように、お守り。」
「そっか、ありがとう。」
ウィノに置物を渡したシャロンは、クロと一緒に部屋から出ていこうとする。
「お姉ちゃん。」
「何?」
「大丈夫………だよね?」
「うん。」
「そっか。」
笑って応えたシャロンに、ウィノも笑い返す。
「おやすみ。」
「おやすみ。」
シャロンが去って言った部屋の中。
ウィノがベッドの側の本棚の上に置いた置物からは、赤紫の煙が出ては、空色の光が消すということが起きていた。




