その32 「竜と少女と黒タイツ」
ガタゴト、ガタゴトと、馬車が街道を進んで行く。そんな馬車の中、ぼーー、と外を眺める。馬車の中には賑やかな話し声がするが、混ざるきはない。
「や、やめてください!」
「じっとしてて、しばれないよ。」
「夜弥ちゃん! せっかくヒナちゃんが可愛くしてくれてるんですから。」
「………………。」
「わ、私はどうやっても可愛くなりません!」
あんまり無理強いはするなよと声をかけつつ、再び外を眺め始める。にしても、同じ風景ばっかりだし、盗賊も魔物も襲ってこないし、少しつまらないな。まぁ、何度も襲われたりしたら、それはそれでめんどくさいけどな。
「ねぇ、シグレ。」
「どうした?」
御者台からアシュレの声がしたので、こちらも声をかけると
「少し向こうに倒れた━━」
「誰か倒れてるのか?」
「━━倒れた竜がいるんだけど。」
「竜!?」
普通人が倒れてるハズだろうが! なんでドラゴンなんだよ! つうか、なんでこんな所にドラゴンが倒れてんだよ! 心の中でツッコミつつ、御者台から前方を見ると、傷だらけのドラゴンが倒れていた。
「とりあえず、様子を見てくる。」
「分かったわ。」
馬車から飛び降りて、ドラゴンに向かって走る。『俊敏性:EX』のおかげで、一秒もかからずにドラゴンの下に着いた。見たところ気絶してるな、それに、翼が半分千切れかかってるし、何があったんだ?
暫く容態を確認していると、馬車が来て、皆なが降りて来た。
「白銀のドラゴン! かっくいいです! 血だらけですけど………」
「酷い怪我ですね。」
「生きては、いるみたいね。」
「とりあえず、回復させましょう。【治癒の涙】」
ヒナが魔法を使った治療を始める。普通なら、ドラゴンの傷を癒せるのは、ドラゴンもしくは、その主人となった者だけだが、ヒナはスキル【慈愛の心】があるので、種族関係なしに全てのモノを癒すことができる。聞いた時思ったんだが、このスキルかなり凄いよな。
「一応傷は癒しましたけど、流れた血はそのままです。起きたら、鉄分のあるものを食べさせないといけませんね。」
「分かった、準備しておくわね。シア、夜弥、ローズ、手伝って。」
「「はい!」」「……………。」
必要なものを取りに馬車に戻って行く四人。さて、俺はどうするかな? とりあえず、ヒナの護衛とこのドラゴンの見張り━━━
『キンッ!』
「きゃっ!?」
悲鳴を上げるヒナのほうを慌てて見るが、どうやら怪我はないようだ。弾いたナイフとは別の攻撃かあったのか? と一瞬思ったが、杞憂だったようだ。
ナイフを投げた犯人は、民族衣装かな? 動きやすそうな服を着た、少女だ。投げたナイフと、彼女の持っているナイフは普通とは違い、途中から二股に別れていた。
「白神様をよくも!」
「しらがみ? ちょっと待て! 何か誤解して━━」
「問答無用!」
「のわ!」
つき出されたナイフを、刀で捌きながら、どうするか考える。とりあえず、誤解を解きたいのだが、かなり頭に血がのぼっているようで、話しかけても聞いてくれない。
「ちょ! 話を聞け!」
「黙れ! よくも白神様を……………よくも私達の村をっ!」
「いや、ほんと誤解━━━」
「みーっけた!」
突然聞こえた声に、一旦少女から距離をとって、声のしたほうを見ると、全身黒タイツを着た男がいた。うん。変態か。
「貴様ッ!?」
「あっれー? 守人のお嬢ちゃんじゃん。竜を追って来たのかい? でも、今から俺が止めさしちゃうから! って、なんで傷なくなってんの?」
「え?」
黒タイツの言葉に、ようやくドラゴンの様子に気づく少女。さて、どうするかな?
「ま、いいか。さっさと、殺っちゃ━━っ!?」
「忍法“影留”」
夜弥の忍法により、影こど動きを封じられる黒タイツ。どこかの忍者マンガに出てくる、一族みたいな事出来るのか。
「くそっ! だが、魔法な、『ゴンッ!』ら!」
「敵はこいつ一人だけ?」
動けないところに、アシュレの拳骨を食らった黒タイツは、気絶した。さて、少女と黒タイツ、この二人から色々聞いてみますか。




