その2 「修行と……」
「ふわぁ~。朝か、うん?」
朝起きると、なんだか少し身体が軽い。あれか? 異世界に慣れたからか? そんな事を考えつつ、部屋の扉を開けると
「あっ。おはよう、シグレくん。」
「おはよう、ヒナ。」
扉の前には、白い髪に空色の瞳になった、ヒナがいた。名前呼びなのは、ヒナから名前で呼びあおうと、言われたからだ。
「何か用事?」
「うん。一緒に大広間に行こうと思って。」
「いいよ。」
大広間というのは、昨日料理を食べた場所だ、今日の朝食もそこで食べるらしい。
「朝起きたら、ここ何処だろう? って思っちゃったよ。」
「確かに。異世界なんて、なかなか信じられないもんな。」
たわいもない話をしながら、大広間に向かう。十分もしたら、着いた。
「ヒナ!」
「リンちゃん、おはよう。」
「おはよう、ヒナ。上本、ヒナに変な事してないでしょうね?」
「するわけないだろ。」
五十嵐 凛。ヒナの親友であり、高校ではヒナの保護者と言われている。ヒナに近づく変態どもを、排除するのが普段の仕事であり、めちゃくちゃ強い。こっちにきてさらに強くなったらしい。ちなみに、赤毛ポニーテールに真紅の瞳だ、凄く似合う。
「来たかシグレ。」
「四人揃ったし、食べ始めるか。」
「そうだな。」
朝食を食べながら、今後の予定を話し合う。とりあえずは、武器の使い方や、魔法の使い方を学ぶ。さらに、この世界について情報を集める。これぐらいだろう。
今後の予定も決まり、朝食も食べ終わったので、俺達は武器の使い方を学ぶため、騎士達がいるところへ向かった。
◇
「成る程。武器の使い方を学びたいと」
「はい。教えてくださいますか?」
ここにいるのは、二組の、近接武器を使う者だけだ。委員長率いる魔法系は、魔法士のところに学びに行った。
「ふむ。いいでしょう。まずは、武器を選んでください。」
「ありがとうございます!」
騎士団長さんに案内されて、武器庫に入る。中にはお馴染みの剣に、斧槍や、普通の槍、弓矢等。色々な武器があった。
とりあえず、剣を手に取る。重い。ちゃんと使えるかな?
「まずは、素振りからするといいですよ。」
騎士団長さんに言われた通り、素振りから始めていく。こうして、俺達二組の修行が始まった。
◇
修行を始めて一週間がたった。騎士さん達と仮試合をやったりして、大分上達した。しかし、俺は大分焦っていた。他の皆なについていけるとはいえ、能力値の差があり、そのうちについていけなくなるだろう。
能力値を上げるには、今回のような修行と、魔物を倒す、という二つの方法がある。
「………はぁ。」
このままじゃ、俺は役立たずだな。
「シグレ様。今、よろしいですか?」
「え? はい、大丈夫ですけど。」
今日の訓練が終わり、部屋に戻るため廊下を歩いていると、お城の人に声をかけられた。
「実は、いい修行場所がありまして。」
「え!?」
「そこで修行すれば、他の皆さんに追い付けますよ。」
「本当ですか!?」
「えぇ。」
「行きます! 何処ですか?」
「此方です。」
思えばこの時、他の誰かを誘って、一緒に行けばよかったのかもしれない。そもそも、こんな美味い話など無いと、断ればよかったのかもしれない。いや、今さらこんな事考えても仕方ない。どのみち俺は━━━
お城の人に案内され、馬車に乗り、揺られる事一時間ほど、目的の場所に着いたようなので、馬車から降りる。
今度は、森の中をお城の人の案内で歩いて行く。着いた場所は
「あの、本当にここなんですか?」
「えぇ、そうです。」
目の前には、切り立った崖があり、底が見えなかった。
「どう見ても崖なんですけど?」
「まぁまぁ、覗きこんでください。」
「覗きこむ?」
言われた通り、崖下を覗きこむ。しかし、真っ暗で底が見えないだけだ。
「あの、何もありませんが━━」
『トンッ。』
誰かに背中を押され、宙に浮く俺の身体。何故? そんな考えが浮かぶ。
だが、崖から飛び出した岩が見えた。このままだとぶつかる! 身体を捻って背中からぶつかる。
「ガッ!」
強い衝撃とともに痛みが走り、意識がもっていかれる。薄れ行く意識のなか、俺の頭の中に、男とも女とも言えない声が響いた。
《……共有率50%》
《これより一次能力を解放します。》
《スキル【武器術】を獲得しました。スキル【超感覚】を獲得しました。スキル【思考拡張】獲得しました。スキル【自己再生】を獲得しました。》