その20 「動きだす邪」
最初のほうは、ソウイチ視点ではありません。
「ふはぁ~。暗いね~。」
「当たり前ですわ。夜なのですから。そもそも、何故この時間に見回りなんて………」
真夜中のロードル城の廊下を、二人の少女が歩いていた。
「いや~。なんとなくかな?」
焦げ茶色の髪に赤い瞳の、のほほんとした少女。黒宮 御影。二組の生徒の一人であり、普段から、のほほんとして何を考えてるか分からない。忍者に憧れているらしいが、何故かは分からない。二組で一番よく分からない人物である。
「なんとなくって………貴女という人は本当に……はぁ。」
金髪ドリルツインテールに、つり目碧眼の少女。冰麗院 姫華。ミカゲと同じく二組の生徒であり、大財閥のお嬢様。高飛車で傲慢だが、本当は傷つきやすく涙もろく、落ち込みやすい女の子。それが、シグレにバレてからは、二組の皆なにもバレて、可愛いと認識された。西倉 京が好きで、頑張ってアピールしている。
「して、どのくらい引き込めた?」
「はい。半分ほど………」
「ふむ。まだ足らんな。」
二人が歩いていると、近くの扉からそんな声が聞こえてきた。
「なんですの?」
「【消音】【消臭】【透明化】【気配消去】【効果広範囲化】」
「え?」
声が聞こえた直ぐ後、ミカゲが隠密系のスキルをいくつも発動させる。
「こういう時は、こっそりやらないとね~。」
「こっそりの度を越えてませんこと?」
二人は扉の側に行き、耳をそばたてる。そして、中にいる人の話を盗み聞きする。
「それにしても、今回の勇者は単純な奴が多いのぉ。」
「えぇ。勇者とは思えない程私欲にまみれております。」
「そうか、そうか、そう言えばあの無能はどうした? 黒髪黒目の男の。」
「あぁ、あの男ですか。奈落の底に突き落としました。死んだでしょう。」
「そうか、我らの計画には雑魚は不要だからな。引き続き、勇者共を邪人に変えていけ。」
「はっ!」
話し合っていたモノの一人が、部屋から出ていく。そいつとは反対方向に、ミカゲとヒメカは歩いて行った。
「この辺なら大丈夫だよね。」
「えぇ、大丈夫だと思いますわ。」
「シグレくん。死んじゃったのかな?」
ミカゲが悲しそうにそう呟く、しかし、ヒメカはそれを鼻で笑って
「わたくし、自分の目で見たモノしか信じませんの。」
「え?」
「シグレの死体を見ていませんから、まだ死んでないと断言出来ますわ。」
「そっか、そうだよね。希望を持たなきゃ。」
「そうですわ。とりあえず、今聞いた話を皆さんにお話ししないと。」
「うん! 行こっ!」
二人は仲間達のもとへ急ぐ、しかし、事態は既に取り返しのつかない所まで進行していた。
◇
昨日ミカゲとヒメカから聞いた話しは、驚く事ばかりだった。シグレが突き落とされたと聞いた時は、ショックだったし、ヒナは絶望していた。だけど、ヒメカの言葉で希望が持てた。諦めたら駄目だな。とにもかくにも、この国から脱出する事にした。
「ソウイチ、準備できた?」
「葉月か、できたぞ。」
森野 葉月。青髪黄色い目の女で、サバサバとしていて話しやすい。格闘技の天才児で異世界でも、素手で魔物と戦っていた。
「ハヅキー。ソウイチ君早く、早く。バレないうちに。」
佐藤 波奈。緑の髪に緑の瞳の少女。普通の女の子だが、その実大岩を投げ飛ばす怪力娘。
「クックック。遂に始まるのだ。妾達の伝説が!」
水無 有朱。赤紫色の髪に、白い瞳。左の目に眼帯をしている、厨二病女子だ。眼帯している方の目は、邪眼だと言っていたが誰も信じていない。しかし、異世界に来た際、マジで邪眼というか、魔眼のようなモノになったらしい。
「そうだな。行くか!」
そう言った次の瞬間。俺の視界が暗転し、全く別の場所になっていた。その場にいるのは、俺とヒナと、リン。そして、この国の宰相と一組の輝里 秀一がいた。
何故か、宰相と輝里は、濁った赤紫色の目をしていた。




