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煌く海の聖乙女  作者: 優姫
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生まれ変わりの魔法

セルティアの部屋に続く扉が締まると。ジョンはゆっくりと前を向き、ジャスティに視線を向けた。

「 ・・・・・何かあったのか・・・? 」

ジョンの問いかけに、ジャスティはまだ横を向いたままで「何もない」と言いながら机の引き出しを開け、中から葉巻を取り出した。

長年ジャスティと一緒にいるジョンには、今のジャスティの返事で「何かあったんだ」という事が充分にわかった。

「 何があったんだ。姫が泣くなんて。あの御強い姫が・・・ 」

ジョンはそう言いながら、船長机に近づき両手を机に当てて詰め寄った。

ジャスティは葉巻に火を付け。横目でジョンを睨み付けた。

「 何もないと言っている。「そんな事」よりさっきのやつは、牢に入れて服を着せたか? 」

ジャスティの言葉を聞くなりジョンは目を見開き。そのままジャスティの襟首を掴み立たせた。

「 そんな事って何だよ!! お前なに怒ってんだよ! 今日のお前おかしいぞ!! いらついてるからって姫にそれをぶつけるなよ!! 」

襟首を捕まえれたまま立たされたジャスティは。捕まれたままジョンを睨みつける。

「 この船の船長は俺だ。この手は何だ。俺のやる事に文句があるなら、この船を降りたって構わないんだぞ 」

これ以上は何を言っても意味がないと悟ったジョンは。ジャスティの襟首から手を放し、セルティアの部屋に続く扉を開けその向こうに姿を消した。

ジャスティは服を調えると、床に落ちた葉巻を拾い火を消し。そのまま窓辺に近づき、窓に右上を当て腕に額を当て瞳を閉じ。一言呟いた。

「 セルティア 」


「 姫 」

ドレスに着替えるなり。ベッドの上で枕に顔をうめていたセルティアは、声のした方に視線を向けた。

扉の方からだ。ベッドから降りて、涙を拭いてから扉に近づき開けると、そこには、ジョンがいた。

ジョンはセルティアの瞳が少し赤いのにすぐに気付くと、セルティアの目に右手の親指を当て涙を拭うようにして声をかけた。

「 姫・・・。あの・・・大丈夫、ですか? 」

セルティアには、ジョンがどれくらい自分を心配してくれているのかがわかり少し重く感じていた体が。少し軽くなったように感じ取れた。

「 ・・・えぇ。 入ったら? 」

入り口で立ち話もあれなので、セルティアはジョンを部屋に入るように促した。そして部屋にある一人掛けのソファに座るように言った。セルティアは、その椅子の向かい側にある一人掛けのソファに座る。

ジョンは、セルティアの方をチラッと見る。目の下が赤いのを確認する。

「 あの・・・・・姫 」

「 んー? 」

机の上にあった。既に冷めたお茶をゆっくりと口に運びながら返事をした。

「 姫は・・・・王妃と国王の事は覚えておいでですか? 」

「 ・・・。お父様とお母様の事? 」

「 はい 」

ソーサーの上にカップを戻すと。セルティアは目をゆっくりと閉じて思い出にふけるように語りだす。

「 勿論。忘れた事などなかったわ。お父様とお母様と私と、三人で旅立つ海賊達に城から手を振るの。海賊が無事に旅から帰ると城で大々的にお祝いをして。海賊達もそんなお父様とお母様の事を好きでいてくれて。国の者達も、海賊の事やお父様とお母様のやり方を気に入ってくれて。毎日がとても楽しかったわ 」

楽しそうに、幸せそうに語るセルティアを見ていたジョンは。一度セルティアから視線を外し、目を閉じなにやら考える。そんなジョンを、セルティアは不思議そうに見つめるが、すぐに視線に気付いたジョンが決意したかのように話し始めた。

「 姫。あの・・・。12年前の・・・あの日の事を覚えておいでか・・・? 」

その言葉を聞くなり。セルティアの表情が一瞬にして暗くなった。覚えている証拠だった。

「 覚えているわ。お父様とお母様が亡くなられた日だもの。でも、悔しい事に殺めた者の顔も声もどういう事があったのか。そういう事は思い出せないの 」

ジャスティから前もって話しを聞いていたので。ジョンは知っていた。

「 あの日。船長が国王と王妃様を見つけた時、国王は既に亡くなられていて王妃様がかろうじてまだ生きていらっしゃいまして、その王妃が船長にある願いを託されたのです 」

「 願い・・・?そ、それはどんな・・・? 」

先ほどまで泣いていた事など忘れて。セルティアはジョンに詰め寄る。

「 国の再建のため。貴方様を命をかけて守る事。そして、国を滅ぼした犯人を見つけ出し。捕らえる事。先ほどは何があったのかは俺にはわかりません。でも、わかっててほしい。船長が姫に冷たい態度を取るのは、いつか王宮と言う華やかな場所に戻る姫を完全な海賊にしないためだと言う事を 」

―――――――――まぁ・・・理由はそれだけじゃないだろぅけどな。早く、気持ちに気付けよ。ジャスティ―――――――――――

ジャスティの冷たい態度の意味を知ったセルティアは一瞬。固まっていたが、少ししてハッとしたかのように動き出す。

「 そ、そぅ・・・・・・お母様が・・・そのような事を・・・。国の再建など言われなくてもわかっていたのに・・・。我が国がないと、海賊達の帰る場所が帰る目的の場所がなくなってしまうもの。ジャスティがあんな冷たい事を言ったのは、そういう意味だったのね・・・ 」

―――――――でも・・・・・・・それ以外にまだ・・・・何か、ひっかかる ―――――――

まだ他にも事情がありそうなことにセルティアは、気付いていた。だが、それ以上を語ろうとしないジョンにそれだけ重大な事なのか。知らないのか、と理解し。それ以上は聞こうとしなかった。

セルティアの言葉を聞くなり。ジョンは微笑み、一度頷くと立ち上がり扉に向かって歩き出した。

「 もう行くの? 」

「 はい。まだ、やる事があるんで 」

そう言いながら扉に手をかけ開ける。見送りにきてくれたセルティアの頭に、右の手を置き人撫ですると扉の向こうに消え扉を締めた。

船長室までの階段を、何も言わずに上がり。船長室の扉に着くと、扉を開ける。中に入るとジャスティはソファの上で横になっている。どうやら、眠っているようだった。

ジョンはそんなジャスティに一度溜め息を付くと、何も言わずに外につながる豪奢ごうしゃな扉を開けて船員達の居る場所に戻って行った。



夕方近く。コツ、コツ、コツ、コツ。牢屋に向かって近づいてくる足音がした。

コツン。足音は牢屋の前で止まった。

「 おやぁ?貴方様は~船長さんじゃないですかぁ~。お話し合いはお済みですかぁ? 」

と、今度はちゃんと船員よりもボロイ服をまとった、先ほどの海から引き上げた青年がジャスティに話しかけた。

ジャスティは、青年の問いかけには答えずしばらく腕を組んだまま、青年を見ていたが少ししてから重い口を開いた。

「 記憶がないんだったな 」

「 はい~ 」

気の抜けた返事に、一瞬目を細めたがとがめる事なく話しを続けた。

「 カルタリア。と言う国に聞き覚えはあるか 」

「 いいえ~?ありませんねぇ。どうしてですか? 」

気の抜けた返事ではあるが。ジャスティには何故か、青年が嘘をついているとは思えなかった。

「 お前の質問に答えるギリはない。お前をここから出してやろう。そのかわり今聞いた事、国の名を俺意外に洩らすなよ。もし洩らしたらこの手で殺す 」

「 気の難しい方のようですねぇ~。大丈夫ですよぉ~。誰にも言いませんからぁ 」

青年の言葉を聞くなり。ジャスティは牢屋を開けてやる。青年が、牢屋から出るところを見届けないままきびすを返しその場を去って行く。


ワイワイワイ。ガヤガヤガヤ。

夜。食堂にて。船員達は食事を取っていた。

酒を飲み暴れている者。酒に酔い寝てしまっている者。船員達の席から少し離れた場所ではジャスティとジョンが食事をしていた。

食事は日によって船員が作る。勿論セルティアも作る日がある。今日がその日だった。

セルティアの作る料理だからなのか。船員は文句も言わず、いつものように汚らしい食べ方などをしている者は一人も居なかった。だが、せめてお酒くらいはいつもどおりに飲んでほしい。というセルティアの願いから。船員達は酒に関してはいつもどおりの飲み方をしている。

「 わぁ~~。賑やかですねぇ~。僕も混ぜてくださいよぉ~ 」

そこに。またあの気の抜けた話し方のルーアが入ってきた。

船員達は一瞬で静まりかえる。そして、一番近くに居た男がルーアに詰め寄った。

「 あぁ!?お前何でんな所にいるんだぁ!?どうやって牢屋から出やがった!! 」

「 え~?貴方方の船長さん、ご本人が出して下さったんですよぉ~? 」

男の問いに。ルーアは平然と答えた。ルーアの答えに。船員達はジャスティの方に視線を向けた。

そして今度は、ジャスティの席に一番近い場所に居る船員がジャスティとジョンのいる席に近づく。

「 船長。ほんとっすか?あいつ出していいんすか?あんな、身元もわからないようなやつ・・・・・・ 」

黙々と酒を飲みながら食事をしていたジャスティは。質問されると手を止め、船員の方を向いた。そして、溜め息を一度付くと口を開いた。

「 仕方ねぇだろ。ずっと牢屋に入れておくわけにもいかねぇし。あいつの言ってる事が嘘とも限らねぇ。様子見だ。だが、もし何か不快な行動をしやがったら・・・・・わかってんな!おまぇら!! 」

「「「 アイアイサー!!! 」」」

と、いつもなら拳を上に上げて返事をする船員だが、今回はビールの入ったコップを持ったほうの手をコップを持ったまま上に掲げて返事をした。

その様子をセルティアは、ただただ船員達に囲まれた席から見つめていた。

「 では~~。誤解?が解けたところで~。僕歌いますね! 」

そう言うと。返事も待たずにルーアは、近くの机の上に立ち踊りだした。

「 ふか~い ふか~い 海の底~ 神住む場所に~ 生きる者~ むか~し むか~しの伝説の~聖なる乙女がおわす場所~ 」

聞いた事がない歌をルーアは歌いながら踊りだした。

その踊りと歌はとても美しく。どこかの王宮の踊り子だったのではと疑うほどだった。

聞いた事はないが。内容的に聖なる乙女の歌だろうという事だけは、セルティにはわかっていた。

ルーアのおかげか、その日の食事はいつも以上に楽しいものになった。


グー。。。グー。。。グガー。。。ボリボリボリ。。。

食堂では船員達のイビキが鳴り響いていた。

セルティアは食堂の屋根。甲板に座り込み月を眺めていた。

「 眠れないのですかぁ~? 」

突然背後から声をかけられ。セルティアは振り向いた。声のした方にはルーアがいた。

「 隣に座っても~? 」

ルーアは首を傾げて聞いてくる。

「 えぇ。良いわよ 」

セルティアがそう言うと、すかさずルーアは隣に座ってくる。

「 月を見ていたのですか? 」

「 えぇ。今日は満月。とても綺麗・・・。 」

セルティアとルーアは二人で月を見上げてそう呟く。

「 知ってますか?伝説の聖乙女は、天と月の女神との子どもと言う話しがあるのです 」

「 え?初めて聞くわね 」

セルティアは横に座るルーアの方に視線を向ける。ルーアはまだ月を見つめていた。

「 月の女神は。娘を海の神の花嫁にする時。ある魔法をかけたそうです 」

「 魔法?? 」

「 えぇ。その魔法は生まれ変わりの魔法。娘が死した後、また生まれ変わり海の神の花嫁となれるようかけた魔法だとか。ですが、女神はそのような魔法。本当はかけたくなかったそうです 」

「 では、何故かけたの? 」

そこで、ルーアはセルティアの方に視線を向ける。

「 娘である、聖乙女の願いだったからだそうです 」

「 聖乙女が・・・望んだ・・・ 」

「 えぇ。聖乙女は、人間界に降りた時父である天の神から神人としての全てを奪われました。それは、ただの人間になるという事。神は永遠死ぬ事はありませんが聖乙女は、人間になった事で「寿命」を得たからです。自分が死した後、新たな花嫁が海の神の元へ来る事で、海の神が静まってくれるように 」

セルティアはルーアの話しをただただ、黙って聞いていた。

「 そうだ!知ってますか? 」

突然、ルーアは両手をパンッと鳴らしセルティアに詰め寄った。

「 え!?な、何を!? 」

「 海の神がどうやって花嫁を迎えに来るか! 」

「 あぁ。それなら習ったわ。確か・・・ 」

「 海の神の傍には常に人魚が付き従っているんです。その人魚が、聖乙女に選ばれた少女だけが放つ光と力を感じ取り、迎えに来ると言われているんです~ 」


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