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煌く海の聖乙女  作者: 優姫
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約束

男が走り去ると。剣を持つ男は腰から下げた鞘に剣を終い。

お金の入った袋を拾ってくれた。その袋の口を少し開け中身を確認すると自分の手を一瞬中に入れてから出し。口を締めた。

セルティアは、彼が何故袋に手を入れたのか気付いていた。入れた時、かすかだが「チャリン」というお金とお金がぶつかる音がした。おそらく子どもが楽しめるように多めにお金を入れてくれたのであろぅ。

男は地面に座り込むセルティアの前に袋を差し出した。

「 これは、君から彼に返してあげると良い 」

セルティアと金髪の青年はそこで始めてお互いの顔を見た。

金髪の青年は美しい顔つきをして微笑んでいた。

金の髪に王族だけが持つと言う紫の瞳。ジャスティと並ぶ美しさだ。

過去に会った事のあるような気がしてきた。

相手の青年もそう思ったのか、瞳を大きく見開き何も言わずにセルティアを見つめている。

「 ・・・・・・・・君。名前は・・・・? 」

青年は驚いた表情のままセルティアに名前を聞いてきた。

「 え・・・あ。セ・・・あ、ゼン・・・だ・・・! 」

『セルティア』と答えそうになったが。今の状況を思いだし、『ゼン』と言い治した。

「 ゼン・・・・・? そうか・・・ゼンか・・・ 」

そう言いながら青年は視線を別の方に向けた。

「 名乗ったんだから。そっちも答えるのが普通じゃないのか? 」

セルティアは視線をそらした彼の手から、お金の入った金を奪うように取り立ち上がりそう言った。

そう言われて、青年は「あぁ。そうだったね」と返事を返し。背筋を伸ばして立つと胸の前に片手を当て少し頭を下げて名を言った。

「 私の名はカルタリア国第二王子、ウィリアムと申す者 」

その名を聞いていち早く反応を見せたのはジョンだった。

「 カルタリアだと!? 」

そんなジョンの甲高い声に。その場にいた人間全員が驚いた。が、すぐにもジョンは「いや・・・失礼しやした・・・」と一歩後ろに下がった。

場の空気を戻そうと。セルティアはファドに抱えられている子どもに袋を渡した。

「 ほら。もう取られるなよ 」

袋を返してもらうと。ファドは子どもを下に下ろした。

「 ありがとう!お兄ちゃん! 」

セルティアは子どもの頭を撫でてやる。撫で終わると、子どもはそのまま走り去って行った。

走り去る子どもを、ファド・ジョン・セルティアは姿が見えなくなるまで見つめる。

だが、ウィリアムだけはセルティアを見ていた。

子どもが見えなくなると。セルティアはウィリアムの方を向いた。

「 では、皇太子殿下。この度は助けていただきありがとうございました 」

セルティアはそう言うと、ウィリアムに向かって頭を下げた。ジョンとファドもそれに見習って頭を下げる。

頭を下げるとそのまま後ろを向いて去ろうとすると。ウィリアムに腕を掴まれた。だが、すぐにその手をジョンが叩きウィリアムとセルティアの前に立つ。

「 挨拶はしました。まだなにかおありですか?皇太子殿下 」

殿下の手を叩いて置きながら、言葉遣いは丁寧だ。

だが、今のウィリアムは咎めるよりも最優先があるようだ。視線の先は先ほどとは変わっておらず、セルティアをずっと見つめている。

「 あぁ。君、ゼン・・・と言ったか・・・?また、また会えるだろぅか・・・・? 」

視線をそのままにウィリアムはセルティアにそう問う。

ジョンの態度がおかしい事に不満を抱き。セルティアは今は断ったほうが良いと悟った。

「 申し訳ないが。俺たちは海賊一見の者。皇太子殿下とはもう会う事はないだろぅ 」

ファドとジョンがセルティアの言葉にウンウンとうなづく。

「 そうですか・・・。では、またいつか偶然にも会えたらお声を掛けてください 」

そう言い、今度はウィリアムの方が胸に片手を当て一礼をしてからきびすを返し立ち去って行った。


その後。セルティア達三人はサーガ港町を散策。何の問題もなく、ジャスティ達のいる最初の酒屋に戻ってきた。

運良く帰る所だったようだ。

「 おう、ゼン! おかえり、楽しめたか? 」

酒屋から出てきたジャスティは、セルティアを見つけるなり声をかけてくれた。

セルティアが答えようとするとジョンが、ジャスティに近づき皆に聞こえないよう耳元で何やら話しをする。

「 ・・・・・・何・・・・?そうか・・・・・・ごくろう 」

「 はっ!! 」

と返事を返し。ジョンはセルティアの後ろに控えるように戻ってきた。

先ほどまで微笑んだ表情でセルティアを見つめていたジャスティの表情は今では、なにやら怒っているような考え込んでいるような状態になっていた。

そんなジャスティの空気に船員達も当てられ、これ以上怒らせないためか黙ったまま船までの岐路を辿った。


船に戻ると。いつもならしばらくは港に船を止めたまま1晩かけて食料などの調達を行うのに。何故か今回はすぐ港を離れる事になった。

「 足場を中に!碇を上げろーー!!帆を上げろ!行くぞー!!」

「「「 アイアイサー!!! 」」」

ジョンから聞いた話しでは、食料は別の町で調達する事にしたらしい。

だが、何故そうする事にしたのかは教えてもらえなかった。


その日は仕方がないのでセルティアは寝る事にした。

部屋に戻り。帽子を外し髪を下ろす。

寝巻きに着替え。ジャスティがどこかから手に入れてくれた寝台に体をうずめる。

今日は12年ぶりの町に降りたからかそぐにも眠気がきたので、セルティアはそのまま眠ることが出来た。

その頃船長室では。ジョンとジャスティが話しをしていた。

「 カルタリア国のウィリアム・・・・・・そう言ったのか・・・・・・? 」

船長椅子に座り。机に両肘を当てて手を組み、ジャスティはジョンにそう問いかけた。

机の前に立つジョンは何も言わずにただ、頷いて見せた。

「 そうか。で、セルティアの様子は・・・・・・? 」

「 気付いてはいないようだったな 」

「 そうか・・・・ 」

ジャスティはそこまで言うと、少しホッとしたかのように背もたれに体を預けて深く、息を吐く。

「 姫には教えないのか・・・・・・? 」

ジョンの問いに、ジャスティは視線をジョンに戻す。

「 言わないほうが良いだろうな。まだ発覚したわけじゃない 」

「 わかったよ。ファドには?あいつも一応その場にいたわけだし・・・ 」

「 そうだな・・・・・細かい部分は教えず。あいつに隠し通す所って言うのだけ話しておくか。呼んでくれ 」

「 りょーかい。船長 」

そう、返事をするとジョンはファドを迎えに部屋を後にした。

――――――――――言わないほうが良いんだ。カルタリア国がルシーバ国を潰したかもしれない。しかもウィリアムが・・・・・・セルティアの生まれた時からの婚約者だと言う事実は・・・―――――――――――

ジャスティは。セルティアの母であるお妃との約束を忘れたことなどなかった。

『お願いです。その子を、守ってください。そしていつか。国を滅ぼした者を捕らえ。国の再建を・・・。』

「 必ず。必ず守ってみせます。国もセルティアも 」

誰もいない部屋で。ジャスティはその一言を小さく呟いた。



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