おみくじ議論
「おみくじを買いたい」
「買うの?個人的におみくじは引くものだと思うけど」
「細かい奴だなあ。いいんだよ、お金を払って手に入れることに違いはない」
「それもそうか。有名な神社にもなると、結構バカにできない金額だしね」
「そう。個別に金額の設定が利くことで、おみくじの派閥も常時変動してると言える」
「おみくじの派閥って何さ」
「たとえば初詣に行っておみくじを買う。なんと凶が出てしまった。そこからの行動で派閥が別れると俺は定義している」
「そこからもなにも、悪い内容が出たら境内の木に結び付けるだけでしょ。最近だと糸が張ってある所も多いけれど」
「一番多い層は君みたいに、不吉を神様に祓ってもらおうとするタイプ。非常に一般的で面白みがない」
「今の発言は何気に多くの参拝客を敵にまわしたと思うぞ」
「対抗馬としては俺のタイプ。大吉が出るまで納得しない層の存在だ」
「おみくじの価値が暴落している。一回きりだからこそのありがたみなのに。その上特別珍しいわけでもないし」
「最終的に神頼みなんてものは当事者の自己満足だと思う。たとえおみくじに何千円使ってでも、運気がいいところで終わりたいものじゃないか。まして初詣なら一年の運気を占うとも取れるから、今年は凶の年かと落ち込みながら家路につくこともあるまい」
「分からないこともないけれど、もしも大吉を引くまで納得できないとなると、確率上ドツボにはまる人が出てきそうだ」
「そこは財布と現実的な相談をしながらの戦いだ。どうせ大した不幸は起こらないと高をくくって、中吉で満足した人間がどれだけいることか」
「世の中君みたいな人間ばかりじゃないと思う。というか君の家だからこそできる暴挙だ」
「まあ他人のことはどうでもいい。とにかく俺は、今すぐにでもおみくじを買いに行きたいと思っている」
「勝手に行けばいいじゃないか。近場に有名な神社なんかないから、割と遠出になると思う」
「なんだ、ついてきてくれないのか、俺と君の仲だろうに」
「僕と君にそんな大層な関係性はない。でも話している内に、少し興味は出てきたよ。主に君がいくら注ぎ込むかにだけど」
「決まりだな。しかし初詣でもないのに、本格的な参拝に行く気はしないな」
「探せば小さな神社もあるだろうけど、おみくじを常備しているかは疑問が残るね」
「仕方ない、今回は確実性を優先しよう」
「結局遠出するの?僕は嫌だよ、軽く二時間はかかるじゃないか」
「時間の心配は必要ない。目指すのは最寄りのコンビニだ」
「それはおみくじじゃない!」