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第一話 天の御遣い (改)

初めての方もそうでない方もお久しぶりです!


ついに、ついに九頭竜隼人がなろうの世界に帰ってきました!


これからは僕が一番最初に書き始めたこのお話を改訂しながらゆっくりと投稿してまいりますので、応援のほど、よろしくお願いしますm(_ _)m

 ―静かな目覚めだった。俺は元々通っていた高校の、自分の席に座り、うたた寝をしている状態で目が覚めた。


 「俺の役目か……」


 そう、俺は今まで、三国志であって三国志でない世界で、天の御使いとして曹猛德とその仲間達と共に天下を目指して戦っていた。


 そして、曹猛德が天下を統一した日の夜、俺、北郷一刀は役目を終え、元々いた現実世界に戻って来た。


 「俺の役目は、曹猛德に天下を取らせること。それが終わった今、俺には何の用も無いってか……」


 確かに、俺の役目は曹猛德に天下を取らせることだったのだろう。


 しかし、俺はもっと、みんなと一緒に平和になったあの世界で、暮らしていきたかったし、その為の案も準備していた。


 「なのに……こんな事って無いだろ……」


 無意識のうちに泣いてしまっていた。


 俺はあの世界を、自分の故郷のように思っていたようだ。あの世界は、俺を必要としてくれた。


 人とふれあい、一緒に笑い、一緒に泣いて。この世界ではあり得ないことを俺に経験させてくれた。 


 そこで人を愛して、愛されて。


 「まいったなあ……帰りたいよ、あの世界に……」


 心の底からそう思った。


 それと同時に、今はもう、あの世界には戻れないことがはっきりと解った。


 「また、あの世界に戻れたら、あの時言えなかったことを……言うよ」


 俺はもう、何が入っていたか解らないぼろぼろの鞄を手に、立ち上がる。


 そして、胸をトンと一つ叩き、自分に気合いを入れる。


 「何時になるか解らないけど、また逢おう、愛しい華琳、愛しい魏の仲間達……」


 一つだけ決まった目標を胸に、俺は新しい……いや、元の世界で、あの世界に戻るための一歩を踏み出した。

  一年半後

 

 俺は頭に浮かべた春蘭を相手に剣を振るっていた。俺の知っている相手の中では、春蘭が一番強い。強い人と戦う事が、一番の鍛錬になるとじいちゃんが教えてくれた。


 この1年半の間、強くなるために、そして、あの世界に戻るために色々と努力をしてきた。経済、治水、機械、漢文。それに加えて警察やアイドルのプロデュースのことなども一生懸命に学んだ。


 そして、とても嫌だったじいちゃんとの剣の修行も、じいちゃんに土下座して教えて貰っている。


 あの世界に行くまでの俺なら―何でこんな事をしなきゃいけないんだ―とか、こんなの現代では必要ないだろ―とか言って剣術を習うことから逃げてた。


 けど、あの世界に行ってから、俺は少し変わった。


 あの世界で、直接じゃなくとも、俺は人を殺している。殺さなければ自分が殺されたとはいえ、俺の策で人が死んだりしたことは確かだ。


 そのせいだろうか、俺には覚悟という物がどんな物なのか、解った気がする。


 人を殺す覚悟なんてしたくないけど、あの世界に戻る気なら、そうゆう覚悟もしなければならない。


 じいちゃん曰く、「良い顔をするようになったな。1年半前は腐った魚のような、現状で満足した人間の目じゃったが、今は前に進もうとする決意が見て取れる」だそうだ。いくら身内とはいえ死んだ魚はひどいと思ったが、よくよく考えればあの頃は惰性で毎日を過ごしていた気がする。


 確かにじいちゃんの言ったように、この一年半で俺は変わったのだろう。体つきや精神、頭の回転といった所はかなり進歩したんじゃないかとは思う。


 しかし……


 「学べば学ぶほど、強くなれば強くなるほど、みんなへの道が遠くなっている気がするよ……」


 俺が学べば、あの世界に行く方法が限りなくゼロに近いと言うことが解ってきて、強くなれば強くなるほど、みんなとの実力は離れている事に気が付き、自分が本当に弱い人間なんだって事が見えてくる。


 「俺は、あの世界に戻ることは出来るんだろうか……」


 稽古が終わった道場で、胴衣のまま大の字に寝転がり、つぶやく。


 この一年半、俺なりに考えて思い付いた事がある。


 それは俺の戻る方法は、きっと華琳が俺、天の御使い北郷一刀を、本当に帰ってきて欲しいと願った時なんじゃないかという事だ。


 俺の役目は華琳の魏を、華琳の代で天下統一に導くこと。つまりは華琳が本当に俺を必要としてくれた時、俺はもう一度あの世界に戻れるんじゃないか……そう思っている。


 「ふ……」


 けど……


 「華琳に限ってそんなことはないよなあ……」


 華琳なら、我らの誇り高き王なら、「一刀は役目を果たしたのよ。だから、天の国に帰ったの。私達は、一刀の分までこの国をよくしなければいけないの」とか言って、俺を必要としないだろう。


 「……」


 あの馬鹿……と、口に出そうになる。何時も近くにいて、彼女の思想にふれていたから、彼女が言いそうな事がわかってしまう。


 「一刀、少しよいか?」


 「じいちゃん」


 じいちゃんが俺の近くまで来ていた。


 「お前に話がある。着替えて儂の部屋に来なさい」


 じいちゃんはそう言うと、部屋に戻っていった。


 俺はすぐに着替えて、じいちゃんの部屋に向かった。

「失礼します」


 俺はじいちゃんの部屋の前で一礼し、部屋に入る。


 「そこに座りなさい」


 じいちゃんの前に、座布団が敷いてあり、そこに座る。


 「なに、じいちゃん。稽古なら終わったはずだけど……」


 「一刀、お前にこれを見ておいてもらいたくてな」


 そう言って、じいちゃんが手渡してきたのは、我が北郷家に伝わる日本刀「蒼鬼」と「赤鬼」我が家の道場主に伝わっている宝刀。


 「あれ、これって……うちの家宝の日本刀?」


 「そうじゃ。こちらが蒼鬼」


 そう言って長い方の刀を差し出してくる。


 蒼鬼は刀身121㎝、重量が鞘を含めて2.1㎏。その重量と長さを生かし、敵を叩き潰すように斬る。


 「こっちが赤鬼じゃ」


 赤鬼は長さ49㎝、重量1㎏。重さ、長さと比例しない強度を持つ。蒼鬼で防御、赤鬼で攻撃するのがこの日本を持った時の基本の剣術となる。余談になるけど、長い間剣道では二刀流は禁止されていたが最近は認められるようになったらしい。


 「けどじいちゃん、何で今これを俺に?」


 「お前に聞きたいことがあってな。昔お前に教えたが、この刀の前では嘘をつくことは許されん。さて一刀、お前の剣を取る理由はなんじゃ。お前が昔言っていたように、今の時代に剣の道は必要不可欠という訳ではないじゃろ?」


 「え?」


 「お前の剣を取った理由は何だと聞いている。あれほど剣術の修行を嫌っていたお主が」


 じいちゃんは有無を言わせない調子で俺に聞いてきた。思えば、これが初めてじいちゃんに真剣に前の世界のことを話したのかもしれない。


 「前にさ、俺が学校からぼろぼろになって帰ってきたことあったでしょ?」


 「おお、そう言えばそんなこともあったのう」


 「あの時、夢かもしれないけど、俺は間違いなく三国志であって三国志でない世界にいたんだ。そこで、守りたい人や、守りたい物、守りたい生活を見つけて、少しかもしれないけど、あの世界のために力を尽くしていたんだ。けど、紆余曲折あって、俺は守りたいと思っていた人との約束を破ってここにいる。だから、俺はあの世界に帰りたい。俺のいるべき場所は、この世界じゃなくて、あっちの世界なんだって、帰って来てから思ったんだ。ここまで育ててくれた親父や、お袋には凄い感謝してるし、何時か恩返しできたらいいなと思う。けど……俺はどんな手を使ってでもあの世界に戻りたい。その為に、俺は弱いままじゃいれないんだ。華琳の……俺の好きな女の子の隣に立つためには、覚悟と力、知力、全てが必要だって解ったんだ」


 俺は一回話すのを止める。何故か解らないけど、涙が出てきていた。


 「じいちゃんには、俺の言ってることは信じられないかもしれないけど、これは本当の事で、俺の偽り

ざる気持ちなんだ」


 「……にわかには信じられん話じゃが……お前は素直な子じゃ。この緊迫した場面で嘘をつくような子ではないという事はわかっておるよ」


 じいちゃんは一呼吸おいて、また話し始めた。


 「お前の目は真実を言っている目じゃ。儂は長いことお前に剣を教えていたが、この一年半の間、お前の剣から強い意志を感じられるようになった。その意思が、先程お前が語ってくれた理由からきているとすれば、信じることなどたやすい事じゃ」


 この言葉を聞いて、俺は昔じいちゃんが俺に教えてくれた事を思い出していた。


『剣は自らの心を映し出す鏡のようなもの。雑念が混じっていれば剣は鈍るが、逆に心に強い意志がある時、持っている実力以上の物を発揮できるようになる』


 「して、先ほどの質問の答えじゃが、答えは大切な人達との約束を果たすため。で、よいのかの?」


 「ああ、俺はもう迷わない。みんなを守るために、俺は剣を取る。たとえその道が血塗られた修羅の道であっても、俺は進む。華琳たちの前に、胸を張って帰れるように!!」


 そう俺は宣言する。宣言したからには、必ず実行するという決意を込めて。


 「そうか……」


 じいちゃんは心なしか笑って、蒼鬼と赤鬼を持って立ち上がる。


 「ついてこい一刀。お前に、教えたい技がある」


 それは、俺とじいちゃんの過酷な修行の始まりだった。


 北郷家には母屋の他にも剣道場があって、この一年半の間俺はここでじいちゃんの指導の元、剣術の練習をしている所だ。


 「一刀や、これまでわしが教えてきた剣は本来の北郷の剣ではなく、土台となる基礎の部分だ。これからはお前の覚悟に応じて、修業の段階を一つ引き上げる。これからは素振りや型、『氣力』を練る修行から、わしとの一対一で撃ち合いを主にしようと思う。言っておくが、わしは手を抜くようなことはせん。北郷家に伝わる『氣力』を使った飛燕流の技も使う事になるじゃろう。何度か死にかける事もあるかもしれん。それでも、やるか?」


 「……勿論やるさ。強くならないと、華琳達の隣には立てないし、今の俺じゃ弱過ぎて話にならない。強くなる為なら、何でもするよ」


 「よい覚悟じゃ……一刀、お前の机の上に飛燕流で使う技の解説書を置いておいた。お前にはこの一年半で飛燕流を使えるようにきっかけは教えてある。それを発見するのはお前自身でやるのだ。こればかりはわしが直接教えてやれるものではないからの……」


 「わかった。ありがとうじいちゃん」


 「うむ。稽古は明日の朝からじゃ。しっかりと解説書を読んで、寝る前に『氣』を練っておくんじゃぞ」


 じいちゃんが道場を出て行ったことを確認して、俺は道場に大の字になった。


 「流石はじいちゃん。じいちゃんが剣術家の人たちに尊敬される理由がわかるよ」

 じいちゃんは日本に知らない人がいないとまで言われた剣術家で、じいちゃんが戦国時代にいたら宮本武蔵や佐々木小次郎と並び称される剣術家として名を遺しただろうといわれている。一年半前は理由はわからなかったけど、今ならわかる。全身からあふれ出す生気、そして剣を構えた時の剣から感じられる剣気、両方とも一線を退いた人間には出せないようなものを持ち、そこに胡坐をかかず毎日稽古を欠かさない。自分の剣に対してストイックであり、その技術や稽古方法を誰にでも分け隔てなく親切に教えてくれる。人間としても、剣術家としても尊敬できる人間だからこそ、日本に名の知られる剣道の先生や警察の偉い人からも尊敬されるんだと思う。


 「ほんとに、俺なんかにはもったいない先生だよ」


 強くなったら目の前から消えるかもしれないといっているような弟子に自分の持てる技術をすべてつぎ込んでやると言ってくれたじいちゃんに報いるためにも、必ず強くなってやる。


 そう覚悟を決めた俺は、まずじいちゃんが置いておいてくれた解説書を読破するために自分の部屋に戻っていった。


10月15日


蒼鬼、赤鬼の長さ、重さ、行間の修正

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