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龍人の父親は厳格であったが家族サービスはしっかりとするなど、家庭的な一面を持っていた。
「お、お母さんはどうなったの?…もしかしてお母さんも……?」父親の死はまだ幼い龍人にとって心を崩壊するには十分であったが、それに加え母親まで亡くしては、もはや龍人もただではすむまい。
「お母さんは大丈夫。お父さんは信号無視をしたトラックに……」うぅ…とまだ泣いている。
しかし、何故か龍人はいくら悲しくても涙は出なかった。
〜 一週間後 〜
葬式が静かに執り行われる。
「龍人。私もうダメかもしれない。あの人がいないと…」父親が亡くなってからというもの母親は毎日のように泣いていた。
「お母さん…」やはりとても悲しい気分だ。
だがしかし、涙は出ない。
やがて葬式が終わり、龍人はいつものように学校に通う。
そして今に至る。