2-8
「もう、わかってるくせに…」頬を赤く染め、少しずつ龍人に詰め寄る。しかし龍人もそれに合わせるように少しずつ後退する。
「僕に告白したいってことでいいのかな?それとも何かの宗教へのお誘い?」おどけた風に話ながら探りをいれる。
「前者の方かな。それでお答えを聞かせてもらえる?」自分からは告白をしようとはせず、答えを伺うが龍人は黙りを決め込み曜子を少しにらみ重たい口を開く。
「ごめん。君とは付き合えないよ…」それは否定の言葉、拒否する言葉。2人の間に重い重い沈黙が続く。それは何時間にも感じられた。
「じゃあ他に好きな人がいるってこと?」突然に話しかけられ、ビクッとしたがそれを隠すように言葉を返す。
「それは違う。誰も好きじゃないから、好きな人がいないから断るんだよ」あくまで冷静に、心の動揺を悟られないように静かに話す。そして、自分に言い聞かせるように、自分の心に問いかけるように…。
「あなたは私と付き合うことで、自分に好意を寄せている人が傷つかないために断るの?それとも、ただ本当に好きな人がいないから?」曜子は自分が否定されるとは思っていなかったのか語気を荒げ次から次へと質問を浴びせる。
「何で?何で私じゃダメなの?理由を、理由を教えなさいよ!」最後には泣きながら大声をあげている。まるで駄々をこねる子供のように。
それをみた龍人は静かに歩みより頭を撫で、ゆっくりと言い聞かせるように話しかける。