すぅちゃんの1日 そのはちじゅうなな
「てーれってれってーれ、てーれってれってーれ」
燦々と真夏の太陽が降りしきる中、数十メートルはあるであろう大きな草っ葉らで額に汗を垂らしながら聞き慣れない鼻歌を歌いだす男が一人居た。
「なんですかその歌は?」
「ん? いや、この状況で歌わないわけにはいかないと思ってな甲子園でのお決まりだ」
ふふん、と自慢げに訳の分からない事を言うその男、もといスオウにイラっと感じながらもいつもの事だと話を流す事にした。
真夏日、講義が無い時期。
所謂夏休み時期なのだが、実家に帰省する人が多い中数名の居残り組を集めてスオウがヤキュウなるものを始めたのだ。
目の前では白い白球に風の魔法を纏わり付かせ、全力で投げるもとい射出する同級生。
それに対するは同様に風の魔法で衝撃を打ち消し、身体強化魔法で木製バット(スオウ作製)を振るうアルフが居た。
「うらぁぁっ!」
高速、いやもはや音速とも言える程の勢いで振られるバット。しかし体は強化したとしてもそのバットは所詮木製に過ぎず……。
魔法効果の持つボールなど受け止められる訳でもなく粉々に砕けるーーが。
「っしゃぁぁっ! 走れっ!」
「回れ回れ! って、誰だ火炎中級魔法を打ち込んだ奴は! ランナー妨害だろ!」
「うるせぇー! 風魔法でボールの飛距離を誤魔化しただろーがっ! そっちが先だろう!」
「なんだと! お前ら! ボールが飛んでった先に初級土属性魔法で壁をつくっちまえ!」
「てめぇー! やり過ぎだ!」
暴動、もとい乱闘に近い状況。やはりどっかぶっ飛んでるのは朱に交われば赤くなるというか、変人には変人が集まるというのか、ただでさえ少ないスオウの友達では有るが、どうにも最近選ぶべきだったと思っているらしい。
はぁ、とため息をついたスゥイはとりあえず上級範囲水属性魔法を頭上に降らせる為に詠唱を行った。
「お、おぉぉぉ……、て、手製のバットがこな、ごな……」
打ち拉がれているスオウも勿論範囲に含めて。