すぅちゃんの1日 そのななじゅうさん
スオウ・フォールスは実家が商家であり、さらにはスオウ自身もそれなりに資産がある。
故に、そういったものを目当てとして集まってくる女性がいないわけではない。
スゥイを虫除けに使っているという自覚があるスオウだが、スゥイ自身に悪意が及ぶ事を良しとはしていない。勿論程度にはよるが。
しかたがなく、と直接話を付ける場合もある。
「ねぇ、今度の休日一緒にどこかへ出かけないかしら? もしなんでしたら私の行きつけのところに」
身を寄せ腕を掴み、明らかに態とと思われるほど胸を押し付けながら告げる女性。
それを僅かに目を顰め、彼女の顔を感情の篭らぬ目で見た後気付かれないようにため息を付く。
「すまないが休日は予定が埋まっているので付き合えない」
「で、では次の休日で構いませ「貴女とは今後友人関係としてなら付き合うが……、あまり露骨なことはしないで欲しい」
ぎし、と腕を掴む力が増したことを感じて再度内心でため息を付く。
彼女の実家はそれなりの資産家だ、故に後ろ盾の無いスゥイが傍にいることが気に入らないのだろう。事あるごとに彼女に突っかかっているところが見える。俺に対しても対抗心も有るのだろう。
無駄に年を取ることも考えものだ、幼いままならばこの状況に喜びもしたのだろうが、背後関係が透けて見えて辟易する。
やんわりと腕を彼女から放しながら断りを告げるがどうやら納得がいかないようで僅かに語気を荒げながら彼女は問い詰めてきた。
「何故ですかっ! あの女より私のほうが美しいでしょう! スタイルだって私のほうがっ」
告げてきた言葉に軽く目をつぶり、そして頭を振った後その意味を告げる。
「……あまりこういう事を言うのは好きではないが、君の目的は俺の資産か? 商家の後ろ盾か? だとするのならば出すべき手札を間違えている。君のその美しさを価値とし、資産として表に出すのならばそれに価値は無いと言おう。美しさやスタイルに対してこちらがその対価として出すべきメリットは何も無いんだよ。その美しさは何年継続できるんだ? おそらく10年20年もすればその価値は著しく落ちるだろう。故にその美しさを対価に付き合うメリットなど有りはしない。あぁ、短期的なデートだけの付き合いと言うならば、レンタルという概念で計算し等価値になるかもしれないが生憎と俺はそれを望んでいない」
「なっ……、あ、あなたっ!」
「出す手札を考え直すんだな」
わなわなと震えだす彼女の肩を見ながら目をつぶる。
しまった、火に油を注いでしまったと思いながら。