すぅちゃんの1日 そのななじゅういち
「ん……、どうしましょう……」
とある休日の昼下がり、珍しくも一人自室にいる黒髪の少女。
机の上に置かれた一通の文を睨みながら顎に手を当てて思案する。
彼女の名はスゥイ・エルメロイ、そしてその文は所謂ラブレターであった。
「スオウにそれとなく見せましょうか……、いや、あの男がそんな事で動くなら苦労しません、逆に応援などされたらキレる自信が有りますね、主に私が」
ふむ、と安易に想像出来る状況を浮かべひとり頷く。
とはいえ相手はそれなりに位の高い貴族の様だ、断るにも理由が必要だろう。しかしーー
「はぁ、しかたがありません、利用価値が有るのでしたら考慮の余地はありますがはっきりと断るとしますか」
利用価値が有るかどうかが前提としてある時点でスゥイも相当な物では有るのだが、兎にも角にもそう呟いて文を持つ。
適当にスオウと恋人だと吹いておけば良いだろう。あの男も虫除けになるからと変に否定はしない。
虫除け扱いなのが頭にくるが、まあ、それはいいとする。
スオウは実家が金持ちで成績優秀、貴族階級ではないがそれなりに優良物件なのだ、貴族の3女や4女ならば声をかけようと思うだろう。
「そうですね、折角ですからどうせ部屋に引きこもって本でも読んでいるのでしょう。引っ張って行くとしますか」
告白の場所へ男と二人で行く、これ以上無い断り方でありかなり酷いやり方でもあるのだがスゥイは気にもしない。
この話が噂として広まって声をかけるヒトが減ったとかいう話が有るのはまた別の話。