すぅちゃんの1日 そのろくじゅうなな(番外編)
今年も有難う御座いました。
待たせすぎたお詫びの一本。
ですが、改訂版との整合はあまり考えてません。完全な番外編の様なものです。
ではでは、来年こそ改訂版のアップを出来ると祈って!
「何を作っているのですかスオウ?」
雪が降るカナディル、暖炉の火が部屋を暖める夜の一時。キッチンでなにかをこねているスオウにスゥイが尋ねる。
「ん? あぁ、蕎麦だよ。これがないと年は越せないからな」
腕まくりをしてこねるこねる、振り返り答えたそこには黒い髪をアップにまとめたスゥイが立っていた。
先ほどまでコタツでぬくぬくしていたスゥイ。転寝していたと思ったがどうやら起きてきた様だ。
「そう言えば毎年作っていましたね。……そもそも何故蕎麦を食べるのでしょうか?」
「諸説は色々あるけどな、“細く長く達者に暮らせることを願う”というのが一番一般的だが、蕎麦が切れやすい事から“一年の苦労や借金を切り捨てる”という意味も有るそうだ」
まぁ、実際なんとなく食べてる。という人が多いのだろうが。
「10代の私達が細く長く達者に暮らせる事を願うのですか……。それに後者の苦労はともかく借金はありませんね」
「湯水の如く儲けたからなぁ、その分新業種、新案件で金は飛んでるんだけどな」
蒸気船の開発費にかかったお金など考えたくも無かったりする。
ようやくほど良い硬さになったところでボウルから移して平らに延ばす。
「何か手伝いましょうか?」
「そうだな、湯を沸かしておいてくれ」
覗きこんできたスゥイが手持ち無沙汰に申し訳なさを感じたか申し出てくる。
折角なのでお湯を沸かしてもらうことにした。火魔術を使えば直ぐだが細かい調節はスゥイの方が圧倒的に得意だし好意に甘えておく。
数十分後、なかなかの出来栄えの蕎麦がコタツの上に出揃った。
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「アルフはどうしてるでしょうか?」
「どうだろうなぁ、いい加減手を出していそうな気もするが……」
「六家の人間が黙っているでしょうか?」
「加護持ちと縁を結ぶことにか? まぁ、そういう内政外交的な面は忘れよう。結局アイツの気持ちしだいだ」
それもそうですね、と頷き蕎麦を啜るスゥイ。そしてふと思ったように箸を止め……。
「今年は色々と有難う御座いました。来年もよろしくお願いいたしますスオウ」
「こちらこそ一年有難う。来年もよろしく頼むスゥイ」
年が終わる、年が明ける。
さて、来年の目標は何にするかな?
「ところで、この蕎麦の風習ですがこの大陸の物ではないですよね? どこの風習ですかこれは?」
「それはなんというか、まぁ、どっかにある風習だよ。うん」