すぅちゃんの1日 そのろくじゅうに
「氷菓子ですか?」
雷魔昌石を利用した扇風機の前でスゥイが興味深そうに返事を返す。
「あぁ、魔術で氷を出すのは高度な技術を必要とするからあまり発展していなかったが、母と協力してな、沢山の種類があるアイスクリームショップを出すことにしたんだ」
似たような氷菓子はあったが、種類も少なく日持ちしないためなかなか出回ることはない。遅延魔法をかけると単価が高くなるし、一部の貴族や富裕層の楽しみとしては存在しているが、一般市民に出回るほどの物ではなかったのだ。
「以前話してた保冷庫とやらを利用してですか?」
「ああ、マイナスにいくまでの物はなかったしな、試食品としていくつか送って来てるから一緒に食べるか?」
「勿論です」
満面の笑みで返してくる。こう素直だとかわいいのだが、どうしてこうひねくれているのか不思議でならない。いい加減いい人を見つけて欲しいものだと思う。
「何か失礼なことを考えていませんか?」
「いや、なにも考えていないが……」
届けられた保冷箱の中には色とりどりのアイスクリームが鎮座していた。その後アルフやライラ、リリスも呼んで簡単なアイスパーティーになったのは言うまでもない。
「これで価格は銅貨10枚ですか、今までの基準からすれば破格ですね。味もこちらの方が極上ですし」
「売りに出す前に現職の人との兼ね合いが必要だな。卸で扱うか、価格を上げるとそもそもの前提が崩れるからな」
「日持ちするものでもないですし、薄利多売ですね。やはりコンフェデルスで始めるのが無難でしょう、カナディルではもうだいぶ敵を作ってしまっていますから」
「そうだな、また押しつけるとするか」
くすりと笑い手紙を書き始める。アイス他含めの詳細内容と販売ルートの契約書類。
それを、ローズとベルフェモット、レイズに送る。
「さぁて、どこが高く買ってくれるかな?」