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男と彼女と彼氏シリーズ

彼女と彼氏と男と将来

作者: 阿井 亜斗
掲載日:2026/02/14

「彼女と彼氏の結婚と男」の続き。

「当主辞めた~。」

「フーン。」


 長い付き合いで驚かなくなった。

 というか、仕事もすぐ辞める人がいるので、当主を辞める人がいてもおかしくないのだろう。

 まだ、まだ若いが。


 結婚式の後、新生活の準備などで忙しくはあったが男とはちょこちょこ会ってはいた。

 当主の仕事も順調そうで、奥さんがほぼ辣腕をふるって対応しており、ほぼお飾りのような扱いのため気が楽だっと言っていた。


 今いる場所は、夫と私の家だ。

 平日の昼のため、夫は仕事中だ。


 ちなみに、近所からの声や道を通る車の音が聞こえない。

 この男と会うときは、いつもこんな感じだ。


「何?奥さんに捨てられたの?」

「いや、適度に付き合いがあるよ。奥さんは、ここ最近さらにパワーアップしたんじゃない。」

「奥さんが当主になる決意をしたの?」

「いや、義兄が戻ってきて当主になりたいといってきた。」

「あれっ、駆け落ちしたんじゃないの?」


 今更帰ってきてもといった感じなのでは。


「なんか、お相手の人にお金をぶんどられて捨てられたらしい。」

「よくあるパターンだね。」

「初めて会った時よりも、人相が変わってた。いいところの人って感じだったんだけどね。」

「苦労したんだね・・・。」


「その顔をみた奥さんが、『お父様が帰ってきた!』と感激して、当主の座を下ろされた感じ。」

「どういうこと?」

「ハイエナと熊をまぜたような顔になって戻ってきたんだ。」


 それは人間なのだろうか。


「兄弟誰も義父に似てなくてね。あんな顔した義父からよくこんな兄弟が生まれたのかと思ったけど、実際に義父の若いころも捨てられる前の義兄のような顔をしていたのかも。」


 義兄の今の顔を想像してみたが、モザイクがかかってしまった。

 想像力の限界なのか、それともみてはいけない顔をしていたのかもしれない。


「奥さんもそれでウキウキしてパワーアップしたんだよね。」

「へー。じゃあ、暇になったんだ。」


 この男、いろいろな立場になりすぎて暇をしていることをみたことなかった。


「ゆっくりできていいんじゃない。」

「そうだね、前よりは時間できたなかな。子どもも落ち着いてきたし。」


 ・・・は?


「子ども・・・?」

「使用人の人に見てもらうことが多かったけど、ミルクあげたりおむつしたりしてたよ。遊ぶ時間も増えたし、よかったかなと思ってる。」


「なんで生まれるとき連絡しなかったの!」

「生まれる時期を漏らすのよくないんだよ。奥さんの家、敵も多いし。文化的なものもあって生まれてから3年たってから公表するみたい。」


 文化的なものならしょうがないか。


「男の子?女の子?」

「男。」

「年齢は?」

「もうすぐ5歳。」

「ちょっとまっててね。」


 男とあっているのは、私たちの家だ。

 夫は今仕事だ。


 ご近所さんの声が聞こえたりする平日なのに、男がいるのでご近所さんはいないようだ。


「はい、渡し損ねた結婚祝いのプレゼント。」

「うん?」


 結婚祝いをこの前渡せなかったため、渡すことにした。


「わーい、ありがとう!みていい?」

 と開け始めた男。


 中身は木箱にはいったハンカチ。


「あなたは別にいいけど、奥さんの好みがわからないしお金持ちだからどうしようかと思って。ハンカチならなんでも使えると思って色違いにしてみた。」

「奥さん喜ぶよ。もらえるものは何でもうれしいタイプ。」


 それはお金持ちっぽくない。


「気に入ってなければ、責任もってあなたが使ってね。」

「もちろん!使わないように大事に持ち歩くね。」


 いや、ハンカチなんだから使えよ。

 なんか言い方がキモイ。



「いや、ハンカチだから使って。」


 声に出して伝えたところ、

「えー。じゃあ、何に使おうかな~?」

「ハンカチとしての用途ととして使って。」


 やっぱり、きもかった。


「あと、子どもに。」


 ちょっと前に、私が編んでいたマフラーを渡した。


「子ども用のサイズになってからつかえると思う。まだうちの子には大きいサイズにしてしまったから丁度いいし。」


 家の中には、子どものものであふれかえっている。

 私達が買ってきたものもあるが、この男がもってきたものもある。


 ベビーベッドからみえるのは、私と夫の子どもだ。

 就寝中である。


「あなたの子どもが赤ちゃんの頃もこんな感じだった?」

「そうだったと思う。」


 男は親の顔をしていた。

 私は安心した。


 昔は、幸せになる将来が見えないような感じだったのに私達より優先するものができたのだ。

 今後はもっと疎遠になるだろう。

 ライフスタイルが変わっていくとは、寂しいがそういうことなのだ。


「今度は電気ネズミのぬいぐるみ買ってくるから楽しみにしてて。」

「いや、こんだけもらったから大丈夫だよ。」

「何が必要?子どもにはあげたから、今度は君たちに出産お疲れ様プレゼントをあげたい。」


 まだまだ、寂しくなることはなさそう。


 穏やかな昼さがり、夫に心の中で助けを求めながら男からのプレゼント攻撃を耐えていた。

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