1:利用停止命令
「お師さま……。先ほど役人が来てこれを……」
工房に帰り着くやいなや、弟子のモリーが一枚の羊皮紙を渡してきた。
そこには工房の利用停止命令が書かれている。
「なぬーッ! わしの研究成果を妬む役人どものさしがねか!? 任せとけモリー、先日でき上がったこの『ダイナマイト』で奴らには目にもの見せてやる。……ククククク」
わしが振り返り、向かおうとした時。モリーが叫ぶように言った……。
「違うんですお師さま! 最後までちゃんと読んでください、家賃未納による退去命令なんです!」
「へ?? いや……だってほらモリー。わし、国家調合師だよ? 半年前だって、王から名誉勲章と報酬で1,000万ガルドもらったばっかじゃん……」
「お師さま……確かにあの時、受け取りました。ですがッ! お師さまの飲み代のツケや新しい機械を買って、もう私のバイト代じゃまかなえなかったのです……」
「そんな……」
力が抜け、手にしていたダイナマイトが床を転がった。
「お師さま、売りましょう……。あの、自動粉末ロボット『ハヤテ君三号』を!」
モリーは粉末作業中のハヤテ君三号を指差した。
「いやじゃあああ! わしがどんな想いでハヤテ君三号を手に入れたか、モリーも知っておろう!」
モリーの足にすがると、バイト先のパン屋さんの香りがした。
「……とはいえ、この粉末作業しか出来ないポンコツのせいで私たちの生活は火の車! 私たちの食事代よりもかかる燃料費って何なんですかッ!?」
「ぐぬぬ……それはハヤテ君が食いしん坊さんな訳で」
「わかりました……。お師さまがどうしてもと言うのであれば、私にも考えがあります」
「なんじゃ、考えがあるなら先に言ってくれればわしだって協力するぞ! ほれ、言ってみい」
「今、協力するって言いましたね? では、言わせていただきます。私の実家、魔王城に引越ししましょう!」
モリーは工房の窓からわずかに見える魔王城を指差していた。
今は人の姿に化けているが、わしの弟子は魔王の孫。
モリーの祖父である魔王が勇者と和平条約を結んで五年。
わしはモリーと、里帰りすることになった……。




