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初片思い  作者: maro
8/8

西条先輩という人

『 やっぱり、先輩は西条先輩のことがまだ好きみたい…』

お風呂上がり、ゆりと電話をして今日の出来事を話した。

『 でも、朱里はよく頑張ったよ〜、職員室に乗り込むなんてw』

ゆりは楽しそうに話すが1個も面白くなんかない。高木先輩の気持ちは今も尚、西条先輩のものだってことを改めて突きつけられたのだから。

『 高木先輩は西条先輩のことが好きなんだよ?』

もう無理、耐えられなかった。

涙が勝手に溢れだして止まらなくなった朱里は「ごめん、もうきるね」とゆりに言ってから、電話をきった。

初恋は実らないなんてただの迷信だと思ってた。片思いは辛いけど楽しいなんて嘘だと思ってた。

実際、自分が初めてその立場になって気づく。

好きな人がこっちを見てくれない苦しさを。

こんなに好きな人ができるなんて自分でも思ってもみなかった。

いつだって頭を占めるのはあの日みた先輩の横顔。

「こんなことになるなら恋なんてしたくなかった、しなきゃ良かった…」

枕に顔を埋め泣いているうちに気づいたら寝てしまっていたみたいだ。

スマホを確認するとゆりから頑張ろうとうさぎのスタンプが来ていた。

ゆりに感謝と謝罪のLINEを送り、急いで学校の準備をした。


校門につく。

(はぁ、先輩に会ったらどんな顔したらいいんだろう。いつもみたいにできるかな。)

朱里がそんなことを考えながら歩いていると3年生の教室の窓から高木先輩がこちらに手を振っていることに気づいた。

辺りを見回しても誰もいない。

(もしかしなくても私に振ってる?)

勇気を出して小さく振り返してみると先輩が満面の笑みで笑った。

胸が高鳴り、高木先輩への気持ちが大きくなるのを感じる。

顔が赤いのがばれないよう足早で玄関に向かう。

「あ!朱里おはよう!昨日は大丈夫だった?」

振り向くとそこにはゆりが心配そうな顔をして立っていた。

「ゆり、昨日はごめんね。私……」

「朱里、片思いって辛いこともあるけど、それだけじゃなくて楽しいことも嬉しいこともいっぱいあるんだよ!私だって今カレと付き合うまで2年片思いしたしね!」

ゆりは中学の間ずっと片思いしていた相手に卒業式に告白して実は両思いだったことが判明して付き合ったらしい。

ゆりはすごいな。

自分の気持ちちゃんと伝えられて。

それが実って。

また落ち込みかけた私にゆりが微笑む。

「もう朱里!元気だしてよ!私の憧れる朱里はもっとまっすぐだよ!」

ゆりの言葉に胸がジーンとする。

「ゆり……ありがとう」

目頭が熱くなるのをぐっと抑えて、ゆりの頭をなでる。

ふたりで話しながら歩き始めるとふと後ろから声がかかる。

「あなたが小暮さん?私、3年の西条花恋です。少しお話いい?」

びっくりして声が出なかった。間近で見る西条先輩はすごく美人で声まで素敵だった。

(高木先輩の元カノさん、綺麗で素敵な人だな。こんな人に勝てるわけないよ、)

「小暮さん?」

「あ!はい!ごめんなさい!話せます!大丈夫です!」

緊張と焦りで声がびっくりがえってしまった。


ふたりで人気のない階段下に移動した。

「ふふ、そんなに緊張しないで。いきなりごめんね。葵のこと聞きたいだけなの。」

(葵って高木先輩のことだよね。どうして私に。)

「た、高木先輩のことですか?」

「そう。この前、小暮さんと一緒にいるの見てしまって。」

(自販機にいた時かな?)

「そ、それはたまたま…」

「私、まだ葵が好きなの。誰にでも優しい葵が嫌で勢いで別れるって言ってしまっただけなの」

寂しそうに俯く西条先輩になんて声をかけたらいいか分からない。高木先輩と西条先輩がまだ両思いだってわかってしまって胸がはち切れる程痛い。泣きそうなのを我慢して言う。

「なんでそれを私に、?」

「小暮さん、葵が好きでしょ?表情見ればわかるよ。私自信なくて、、小暮さん、葵のこと諦めてくれない?」

西条先輩の声が震えているのが分かる。

(きっと高木先輩は西条先輩が好きだ。だから、私がここで身を引いたって引かなくたって多分何も変わらない。でも……)

先程ゆりに言われた言葉が頭に過ぎる。

(私はここで身を引くなんてできない)

深く頭を下げてお腹から声を出す。

「ごめんなさい。それは出来ないです」

思った以上に声が出てしまい、西条先輩が驚いているのが分かる。

「私も初めての恋を大事にしたいんです」

西条先輩の目を真っ直ぐ見つめて言う。

すると先程まで儚く揺れていた瞳は嫌悪に満ち、凛とした立ち方も気だるげな感じに変わる。

大きなため息が聞こえたかと思うと西条先輩の顔とは似合わないほど低い声がする。

「面倒くさ。どう考えたってわたしのが可愛いって分かるじゃん」

「え?」

「だから、葵みたいなイケメンには私くらいの美少女がお似合いだって言ってんの!あんたみたいなブスお呼びじゃないのよ」

放たれる言葉が右から左に抜けていく。

脳が理解することを拒む。

(本当にこの人は西条先輩?あの可憐で可愛らしい人はどこに?)

「とにかく。諦めてね?さもないと私何するか分かんないよ?」

そう言っていつもの凛とした姿で去っていく西条先輩の背中をぼーっと眺めていると、朝のHRのチャイムがなり、私は急いで教室に向かった。


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