彼の視線の先
「朱里〜、おはよう」
いつも以上にニヤニヤしながら、ゆりが話しかけてきた。
「それで、朱里は高木先輩が」
「ゆり、声が大きいって!こっち来て!」
教室の端にゆりを連れていき、小さな声で先輩への思いを打ち上げた。
「私、高木先輩がす、好き」
「きゃー!朱里可愛い、顔真っ赤〜」
「うるさい!ちょっと黙って!」
これでもかと、いじってくるゆりに怒っていると、後ろからいきなり声がかけられた。
「なんの話ししてんの?」
「大和くん!あのね、朱里がね!」
「ゆーりー?」
「なんでもないです!」
「えー、余計気になるんだけどw教えてよ」
大和くんは興味津々に身を乗り出してきた。
(ち、近い…大和くんファンからの視線が痛いんだけど)
「もう、なんでもないって!全く、大和くんも聞こうとしなくていいから。ゆり、先生のところ行くんじゃなかったの?」
「そうだった!やばいやばい」
大和くんから避けるように立って、職員室にむかった。
「高木!他校の生徒に手を出したっていうのは本当なのか?今が学校から電話が来たぞ!」
職員室からいきなり怒鳴り声が聞こえ、目を向けると顔を真っ赤にして怒る先生と高木先輩がいた。
「だから、誤解っすよ。ただ後輩にちょっかいかけてたんで、警察呼ぶって脅しただけです。」
先輩は半分呆れたような声で反論していた。
(もしかして、後輩って私?もしかしなくても、昨日のことだよね)
気づいたら、先生と高木先輩のところに向かい、言い放っていた。
「その後輩、私です。腕を掴まれて困っていた所を先輩が助けてくださいました。もう少し、生徒を信じたらどうですか?ていうか、高木先輩はそんな事しないですよ!誰にでも優しくて、周りが見えて、他人のためなら自分が犠牲になるような人です。」
数ヶ月、先輩を良く見てきたから分かる。教科書を運ぶ女子を手伝ったり、友達の壊したものを自分がやったと言ったり、普通の人はできない様なことを先輩は嫌な顔せずやっていた。それが当たり前かのように。そんな先輩が私は…
「それに、」
「もういいから、恥ずかしいからやめて」
気づいたら、横には真っ赤な顔の高木先輩がいて私は我に返った。
「…すみません、」
気づいたら2人して真っ赤になっていて、先生たちにはすごいからかわれた。
「ちゃんと話も聞かずにすまんな、お幸せに」
「そ、そんなんじゃないですよ!余計なこと言わないでください」
やっと解放された私たちは自販機に向かっていた。
(助けてくれたお礼って…先輩、消しゴム拾っただけでもなにかお返ししそうな勢いだよ)
「ほんとにでしゃばってしまって、すみません」
勢いよく頭を下げると、高木先輩がすぐに答えた。
「全然、助かったよ!むしろ、なんかごめんな〜、先生たちに誤解されちゃって」
「だいぶしつこかったですよね!そのうち、忘れますよ」
そうだね、なんて話をしながら、歩いていると自販機の前まで着いた。先輩が突然一点を向いて立ち止まったので、何かと思ってそこを見ると西条先輩が男の先輩と楽しそうに笑っていた。
「あの、先輩?」
「な、なんでもない!早く買うぞ」
わざとらしく笑う先輩に胸がキュッと締め付けられるのを感じた。その後は、なんだか会話が弾まなくて、ジュースを買って直ぐに解散になった。




