モヤモヤ
午後の授業を終え、ゆりと例のお菓子やさんへ向かった。
ーカランカランー
扉を開けると甘い匂いがして、ショーケースには可愛いケーキやお菓子がたくさん並んでいた。
「いらっしゃいませ。」
「あのカヌレってありますか?以前食べたらすごく美味しくて」
「それは良かった。あれ、俺のおすすめだし、気にいらなかったらどうしようと思ってたんだ」
「え?」
顔を上げると、高木先輩が立っており、ニコニコしながらこちらを見ていた。
「高木先輩!?なんでここに?」
「あの日、バイトの面接があるって言ったじゃん?実はここのことでさ。」
「そうだったんですね!甘いもの好きなんですか?」
「おう!実は…元カノがここのお菓子好きでさ。貰ったりしてるうちに俺も気に入っちゃって。未練タラタラで恥ずかしいよな」
「そんなことないですよ!一途に思っていられるなんてすごく素敵です」
悲しそうに笑う先輩にいてもたってもいられなくなって、反論したが、慰めのようにしか取られなかったようだ。
「そういえば、カヌレだったよな?ちょっとまってて」
そう言われ、お店の外でゆりと雑談して待っていると突然声をかけられた。
「え、可愛い女の子いんじゃん!この後、俺らとカラオケとか行かね?」
「おい、怖がってんじゃん!ごめんね〜、こいつチャラくて」
他校の制服をきた、男子数人がいきなり私達を囲んできた。あまりの怖さにゆりと手をつなぎ、固まっていると、その中の1人がいきなり腕を掴んできた。
「なあ、無視?悲しいんだけど」
「やめてください!離して!」
男の人の強い力には逆らえず、周りに助けを求めたが、周りの人たちは見て見ぬふりをした。
「おい!何やってんだよ、その女の子離せ」
いきなり聞こえた声は紛れもなく先輩の声で、安堵のあまり、その場に座り込んでしまった。
「警察呼んだんで!もうすぐ来ると思いますよ?」
スマホを相手に見せながら、睨みつける先輩の姿に怯んだのか、すぐに逃げて行ってしまった。
「大丈夫?2人とも怪我とかしてない?」
優しく微笑む先輩の姿に、ゆりも私も安堵した。
「あの、ありがとうございます。先輩がいなかったら、私達…」
「いえいえ、無事でよかった。」
先輩は無邪気に笑って、首を振った。
「あの警察って…」
「あ〜、あれは嘘だよ。1人じゃどうにもできないしね」
「そうなんですね…ほんとにありがとうございました」
その後、ゆりは彼氏に迎えに来てもらい帰り、私は高木先輩に家まで送ってもらうことになった。家までは15分もしない大丈夫だと言ったが、先輩は危ないからと言ってバイトも早めに終わらせてくれた。
「小暮さん、ほんとにあの時はごめんね。」
あの時、とは先輩が誤解して話しかけて来た時のことだろうか。
「いえいえ、あの状況じゃ疑われても仕方ないですよ」
「あの後さ、噂広めたやつに聞いたら、白状したわ。人の別れ話広げて何が楽しいんだろうな」
「…」
どう返事をするべきか悩んでいると、気づけば家の前だった。
「ここ!私の家です。今日は本当にありがとうございました。」
「いえいえ、当然のことをしたまでだよ。ああいうやつはたくさんいるから、気をつけるんだぞ」
そう言って、頭を撫でてきた先輩に驚き硬直していると
「すまん!つい癖で!」
「いえ、大丈夫です」
「じゃあ、またな!」
焦ったように帰っていった先輩を見送り、家に入った。今日の先輩の助けてくれた姿や別れ際に撫でられたことを思い出し、胸の高まりを感じると共に、元カノのことが忘れられず悲しく笑う姿を思い出し胸がいたくなる。
「頭を撫でるの癖って言ってたな…西条先輩にやってたのかな?嫌だな…」
ふと出た本音に自分でも驚いた。
(最近高木先輩のことを考えてばっかだし、今も嫌だなって思った。この気持ちは何?)




