誤解と和解
放課後
いつも通り、放課後の教室1人で日誌を書く。
「お前がみんなに広めたの?いるよな、噂ばっかして人の関係、勝手に詮索する女」
急な出来事に声の方に目を向けると高木先輩が教室の入口に立っていた。こちらを蔑むような目で睨みつける様子は昨日見た、立ち去る西条先輩の背中を見つめる様子とかけ離れていて、思わず下を向く。
「私じゃ、ないです。」
「じゃあ、誰だよ。昨日、ここで盗み聞きしてたよな。」
あの時、目があったのは気のせいではなかったようだ。しかし、私は誰にも言っていない。どうにか誤解が解けないかと言葉を探しても見つからず、諦めて私が広めたと言おうと上を見上げる。
「あ、あの...!」
「先輩、広めたの小暮さんじゃないですよ。3年の吉田とか言う、先輩が振った人が逆恨みして広げたらしいっす。いますよね、証拠もないのに決めつけて、関係ない人攻める人」
高木先輩のいるドアとは反対側のドアには、いつもの穏やかな表情とはかけ離れた酷く冷たい顔をした大和くんがいた。
「大和くん…どうし…」
「すまん!」
私が言い終わる前に高木先輩が勢いよく頭を下げた。
「俺、昨日振られてイライラして、お前にあたった…本当にすみません!」
「いえいえ、頭をあげてください!あの状況じゃ疑われて仕方ないし…」
「いや、ホントに申し訳ないです」
深く頭を下げたまま、謝罪の言葉を述べる高木先輩に怒りを忘れ、どうにか頭をあげてもらおうと焦っているとようやく高木先輩が頭をあげた。
「ホントにごめんな?名前なんて言うの?あとでお詫びさせて」
「1年の小暮朱里です。お詫びなんて…誤解が解けたなら良かったです。大和くんも、ありがとうね」
誤解を解いてくれた大和くんに感謝の言葉を述べると大和くんは何事もなかったように帰ってしまった。2人きりになった教室にきまづい雰囲気が流れる。
「あの、私帰り…」
ます。といい切る前に先輩のスマホが鳴った。
「あぁ忘れてた!今日バイトの面接日だった!ごめんな、小暮さん。お詫びはまた今度で!」
高木先輩はあっという間に教室を出て行ってしまい、教室に一人残った私は先程の高木先輩の慌てた姿を思い出し、思わず声を出して笑ってしまった。少したって1人で笑ってるヤバいやつだと気づき、無性に恥ずかしくなった。
(恥ずかしい、誰も見てないよね?さっきの高木先輩、面白かったなぁ。)
昨日の高木先輩とは全く違う一面を知り、お詫びという名目だがまた会えることを嬉しく感じていた。はじめて感じるこの気持ちの名前は分からないが、少なくとも私はこの感じは嫌いでなかった。
数日後、お詫びをしに訪れた先輩はいかにも女子が好きそうなお菓子を持ってきた。用事の済んだ先輩はすぐに自分の教室に戻ってしまい、ついさっき先輩が持ってきたお菓子だけが残った。
「なになに!?朱里、高木先輩と仲良かったの?私の知らないところで一体何が!」
騒ぎ立てるゆりに事情を話そうと思ったが、明らかに聞き耳を立てているクラスメイト達に気づき、お昼休みに中庭で話すことにした。




