第4頁 神との対面
また死んだのね……。いや、前世の場合は老衰だから仕方ないのでしょうけど。にしても、また真っ暗……。いや、この感覚は魂か。なら目がないわけだし、真っ暗なのも当然か。
あーあー、司書になりたかったな……。今頃家に帰ってアニメとかゲームして楽しんでたんだろうな……。あーあー、私の両親、絶対に心配というか悲しんでるわよね……。それもこれも全部あの神が悪いのよ……!
あんな状況で回避できるわけないじゃない。前世の私だったら避けられたかもしれないけど! でも、今世は霊眼も祓力も祓式も持ってないんだから避けられないわよ。本当、あの神だけは絶対に許さない。
と、ここでスポットライトが当たったかのように、私に向かって一筋の光に照らされた。私の真正面には、どこぞの玉座かってぐらいに装飾の行き届いた椅子があり、そこに男とも女とも取れない1柱の神が足を組んで偉そうにこちらを見ていた。
そいつは1つ括りにして肩に垂らしている緑のメッシュが混じった白髪を払い除けると笑みを浮かべる。
『やぁ呼んだ?』
『何が、やぁ呼んだ? よ……! あんた何、勝手に私の人生終わらせてくれてるのよ!?』
『いや~、ごめんごめん。ボクも仕方なくやってることなんだよ。元より桜葉初音の人生はここで終わると定められていてね。いや、本当に申し訳ない』
神は眉を下げながら両手を合わせ、首をこてんと傾けながら謝った。
『……その申し訳のなさが微塵も感じられないのは気のせいかしら?』
そう指摘すると、神は目を細めて元通りの姿勢に戻った。再び笑みを浮かべながら喋り始める。
『まぁね。何年神様やってると思ってるんだい? 人が死ぬ様は飽きるほど見てきたからね。それで、今世はどうだった? 君の望み通りに凡人として生きていたけど』
『そうね。まぁ前世よりも気楽には過ごせたかしらね。役目に囚われることもなく、悠々と日々を過ごせたわ』
まぁ、前世の優等生気質と目つきの悪さ、性格に容姿といった基礎的なものは引き継がれたみたいだけどね。どうせ平凡な人生を送れるのなら、そこら辺も調整してくれても良かったんだけどな……。
『それは無理な話だね』
『人の心を読むな!』
『いや、ボク神だから自然とそういうの分かっちゃうんだよ』
『で、なんで無理なのよ?』
ここで、神はどこからかワイングラスを出現させて、透明の液体を口に含んだ。本当、良いご身分ね……。私たち人間や生物みたいに苦労とかしたことないんでしょう、きっと。
神はワイングラスの中の液体を飲み終えると、グラスを消し、今度は前傾姿勢になってゲン〇ウポーズのような体勢を取る。
『聞こえてるよ。っと、君の問いに答えるとね。通常、魂の形は変えられないからさ。加えて、それ以外にも君たち人間を現世に送り出すには、色々段階を踏んで手続きをしないといけないからね。変えないことの方が多いんだよ』
『それってつまり、あんたたち神が面倒だからやりたくないだけでしょ?』
『ご名答~。流石、元は神に仕えていただけのことはあるね。何ならもう1回代報者やるかい?』
『もう結構よ。あんな堅苦しいのはもう懲り懲りだわ』
『まぁ破天荒な子たちばっかりだからね~。君には同情するよ』
その分、楽しくはあったけれどね。私が二次元にハマったのも前世があったおかげだし。そういえば、他のみんなはどうしてるのかしらね。まぁ、みんなの事だから自由気ままにやってるでしょう。気にはなるけど。さて、今は目の前の神との対峙が先ね。
『それで、私の人生を終わらせたんだから、何かあるに決まってるわよね?』
『んー、それはそうなんだけど、その自信はどこから湧いてくるんだい? まぁ良いや。焦らすのもあれだし率直に言おうか。実は君に頼みたいことがあってね』
こいつのことだからどうせまた面倒ごと押し付けてくるんでしょうね……。決して慣れて良いものではないけど、それ相応の覚悟はできてるわ。どーんと来なさい。
『君にとある世界を救ってほしい』
『……はい?』
『……あれ? 覚悟できてるんじゃなかったの?』
『いや、そのつもりだったわよ……。けど……』
世界を救えなんて馬鹿げてる。世界なんてそんな大それたもの救えるわけないじゃない。大体、救うって言ったってどうやって救うのよ? 魔法なんて空想上のものでも使う気?
戦争とかだったら真っ平ごめんよ。あんなの人間がやっていいものじゃないし、戦争を止めるだなんてそんな大それたこと私みたいな人間にできるわけないじゃない。
『なーんか色々考えてはいるようだけど、君に拒否権はないからね。これは議会の決定事項だ。まぁ、安心し給え。前世での能力とか諸々は引き継いどくからさ。はーい! それじゃあ、いってらっしゃーい!』
『はぁ!? ちょっと待ちなさいよ! まだ詳しいこととか何も聞いてな――』
抗議しようとするが、神はニッコリと胡散臭い笑みを浮かべながら、手を振っている。と同時に全身が淡い光に包まれ、私の視界は再び暗転した。マジで、あの駄目神いつか消し炭にしてやる。
これにて序章前世編が完結!第1章転生編も投稿していますので、引き続きよろしくお願いします!
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