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第34頁 七名家の集まり

「分かりました」

 

 私と薫、竜胆は入り口を塞ぐように立っている杉崎先輩と辻本先輩の間を割り込むように通り抜け、仙城先生の元へ向かう。仙城先生は私たちの方を見たかと思うと、杉崎先輩と辻本先輩の方に視線をやる。

 

「ま、勧誘も程々にな」


 仙城先生が軽く注意すると、2人は教室から離れて何処かへ行ってしまった。何はともあれ、仙城先生には助けられたわけなので、お礼を言う。

 

「良いって。それより桜波と柳月、ついでに竜胆に着いてきてほしいところがある」

 

 私と薫は一瞬、顔を見合わせてから、先生に向かって頷く。先生は廊下を歩いて東館の方へ歩き出したので、私たちもそれに着いていく。

 

「おい、仙城センセー。ついでって何だよついでって」

「おー、すまんすまん。お前は別に来ても来なくてもどっちでも良かったんだがな……」

「はぁ? 薫のガーディアン何だから着いて行くのは当然だろうが」

「そういやそうだったな。あぁ、俺も七名家の人間で記録者だからおおよその事情は聞いてるから安心して良いぞー」

 

 確か、仙城って苗字も七名家に含まれていたわね。なら、竜胆が親しげなのも当然か。


「そういえば、先生の髪って地毛なんですか?」

「そうそう。よくハーフ? とか染めてる? とかって言われるんだけど、地毛だし列記とした日本生まれ日本育ちだよ。後、眼の方もそう。仙城家の人間は代々俺みたいに金髪銀眼だから勘違いされやすいんだよな……」

「そうなんですね」

 

 苦労してるのだと思っていたら、前を歩いていた仙城先生が立ち止まった。今いる場所は東館4階。ここのフロアは基本的に部室か空き教室になっていることが多い。


 そして、先生が止まった場所は見るからに空き教室っぽいけど、ここに何か用があるのかしら……。と、先生が教室の中に入っていくので、私たちも着いていく。


「遅いぞ仙城」

「お疲れ様です仙城」

 

 中には会議などでよく使われる4つの長机が向かい合わせにくっついた状態で置かれており、椅子が6脚置かれていた。そのうちの1席にネイビーブルーの短髪蒼眼に眼鏡を掛けた男子生徒がいた。見た感じ同い年で真面目そうだ。


 彼の斜め後ろには右眼部分がメカクレで、肩までの紫髪を左サイドでツインテールにしている金眼の女の子がいた。服装がガーディアン制服なことからこの子は機械人形なのだろう。寡黙で大人しそうな雰囲気が見て取れる。

 

「すまんすまん。ちょっとこいつらが厄介な2人組に絡まれててな」

 

 厄介な2人組ってね……。あくまであの先輩方はこの学園の一生徒なのだけど、それで良いのかしら。

 

「で、お前たちが仙城の言っていた桜波初音と柳月薫か」

「そうそう。ま、簡単に自己紹介してってくんない?」

「俺は高等部1年B組・冷泉冬磨(れいぜいとうま)。七名家の1つ冷泉家次期当主で記録者だ。よろしく頼む」

「私は菖蒲(あやめ)。冬磨のガーディアンを務めてる。よろしく」

 

 なるほど。彼も同じ七名家というわけか。これで私含めて4人揃ったわけね。私と薫も軽く自己紹介を済ませてしまうと、空いている席に座らせてもらう。


「で、私たちに何の用? ここは何?」

「ここは代々七名家の人間が集う場所であり、俺たち助援部(じょえんぶ)の活動場所だ」

「じょ、じょえんぶ……? 役者でも目指すの?」

 

 それを聞いた仙城先生が腹を抱えて笑い出し、冬磨が呆れたような表情で溜息を吐いた。分かるわ薫。やっぱりそういう反応になるわよね。


 で、ここが駄目神の言っていた助援部か。世界を救うための第一歩としてここに入れって言われたけど、一体何をする部活なのかしら。

 すると、冬磨が説明を始めた。

 

「助演ではない。助けるに援助の援と書いて助援部だ。助援部は七名家の人間が入部する部活でな。その全員が記録者かガーディアンで構成されている。活動内容は主に人助け。具体的に言うと、学園内外のボランティアや困り事を解決し、助けることが目的だ」

「だから助援部なのね。要するに学園内外の何でも屋ってわけ。で、その助援部に入ってほしいってことなんでしょう?」

「あぁ。話が早くて助かる」

「それなら答えはノーよ。少なくとも私はね」


 人助けなんて前々世の代報者時代で散々やってきたけど、それ相応の見返りなんて早々入って来ない。契約を結べば別だけどね。あれは生きていくために、自分の使命だからやっていただけ。何でも屋、しかも無償でなんて所詮は良いように使われるだけの存在だし、少なくとも今はそんな役目は担ってない。


 記録者は起きた出来事を記録し守り、後世に受け継いでいくのが役目。そこに見ず知らずの他人を助けろなんて項目は入ってないもの。


 後、このままあの駄目神の言う通り、助援部に入ったら面倒なことに巻き込まれるだけ。私はのんびり図書館にでも篭って、地道に記録者として生きていくわ。

 

「理由は?」

「図書館業務に専念したいの。見ず知らずの他人に構ってる暇があるんなら、自分のやりたいことを、やらなければならないことをやる。それだけよ」

 

 生憎と、私は勇者みたいな見ず知らずの人々のために世界を救おうぜ的な善性は持ち合わせてはいないのよ。

 そう言い放ち、制鞄を持って扉の方に向かい出ようとする。

 

「おーい、助援部。今良いか?――って、桜波さん!?」

 

 自動扉が開いた瞬間、扉の向こうに杉崎先輩と辻本先輩がいた。

 

「……ど、どういうこと?」

 

 

 


 



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