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第21頁 模擬戦闘

 あれから約3年の月日が経ち、中学を無事に卒業して春休みに突入していた。今は高校に入るまでの準備期間。


 結局中学時代も友達はできなかったものの、図書館司書補として陸玖や結月さん、凪さんと仲良く業務に励んでいた。その過程で人の接し方も覚えてきて、今では普通に笑うことができ、機械音痴も多少だが直ってきている。あれもこれも全て桜波図書館のみんなのおかげだった。

 

 今は邸でまったり休日を謳歌している。最近は図書館業務に追われたり、卒業式の準備なんかで手伝わされたりしてたから羽を伸ばそうと本とアニメにどっぷり浸かっている。ベッドの上でウィンドウを開いて今季放送のアニメを見ていたら部屋の扉がノックされる。

 

「初音様。そろそろお時間です」

「分かったわ。すぐ行く」

 

 雲雀のこもった声が部屋に響き渡った。私は開いていたウィンドウを閉じて準備してから部屋を出る。私は雲雀と合流し、敷地内にある訓練場へ向かう。


 今日は雲雀と護身術の訓練をする日。雲雀によれば、これから記録者生きていく上で、いつ狙われるか分からないし、自分も常に初音様の傍にいられるとは限らないからとのこと。かれこれ5年ほど武器の扱いや体術を雲雀や紫苑から叩き込まれていている。

 


 

 訓練場に着き、電気をつけると前世の体育館半分程度の長方形型の空間が広がっていた。地面は特殊素材のタイルでできており、かなりの威力の攻撃を当てない限りは崩れることはない。


 入り口には環境設定のできるパネルが設置されており、ここで対戦相手の数や系統を選択できる。今回はあくまで護身術なので、この機能は使わず時間指定だけを行う。アビルは使用禁止。


 もし、周りに見つかったらそれこそ只事では済まされないので、それも考慮して今回私が使えるのは体術のみだ。

 

「今回は本番を想定して時間は3分と致しましょうか」

「そうね。よろしく頼むわ」

 

 私は腕につけているネクサスデバイスを操作して、専用のスポーツウェアに着替える。雲雀はというと、燕尾服風のガーディアン制服を身に纏っていた。


 記録者に仕えるガーディアン及び図書館内などの記録者施設へ配備されている機械人形たちは原則制服を身に纏っているのだ。ガーディアンとの違いはジャケットの襟の部分が黒かそうでないか。


 色がついている場合はガーディアン、色が黒の場合は機械人形となる。私たち記録者にも一応制服はあるが、身バレ防止のために着ることは稀である。

 

「では、始めます」

 

 雲雀がウィンドウに表示された開始ボタンをタップすると、部屋全体にブザーが鳴り響いた。私と雲雀は同時に地面を蹴り、一気に距離を詰める。


 今回は襲撃者が武器を持っている想定なので、雲雀は片手に持っているナイフで私の心臓部分を狙ってくる。一撃で仕留めなければ襲撃の意味はない。当然そこを狙ってくるだろうと予期していたので、私は横に避けてそれを交わす。前につんのめった雲雀は即座に身体を反転させて再度ナイフで攻撃。


 目に当たる寸前で少し身体を横にずらし、ナイフを持っている手首を左手で掴んで、右腕で雲雀の腕を締め上げる。すると、身動きがとれなくなった雲雀の手からナイフが落ちる。私はすぐに足でそれを払い除け、遠くにやった。しばらく締め上げていると、ゴキっと肩が外れる音がして雲雀が降参する。


「あ、ごめんなさい。つい……。大丈夫?」

「このぐらいなら問題はないですよ」

 

 雲雀は平然と外れた肩を素手で戻し、ウィンドウを出現させてタイマーをリセットする。それからこちらに向き直り、感心したような表情を見せた。

 

「それにしてもお見事でした。随分と手慣れていたようですが、どこかで習ったのですか?」

「えっ……あー、それは……」


 前々世の代報者時代にバリバリ祟魔とドンパチやってたから経験ありますとは言えないものね……。どうしたものか……。あ、そうだ。

 

「あー、そう! ほら、前に誘拐されかけたでしょう? あの時から自分の身は自分で守れるようにならないとと思って……」

「なるほど。そういうことでしたか。素晴らしい心掛けです」

「ありがと」


 

「では明日はアビルを用いてやってみましょうか」

「えぇ。アビルの扱いにもだいぶ慣れてきたし、そろそろ実戦に向けて訓練しても良い頃ね」

 

 アビルの扱いに関しては発現当時からお母様や雲雀、紫苑に教えてもらっているのだ。何かあったときのためにと。それこそアビル持ちの敵なんかが現れたときに対抗できるようにね。

 

「それはそうと司書試験の方の備えは順調ですか?」

「えぇ、まぁね」

 

 実は先日、休憩中に輝さんから「3年間司書補を務めてもらっているからそろそろ昇格しても良い頃だろう」と司書試験を受けてみないかと勧められたのだ。


 司書試験を受けるには司書補として3年間勤務しなければいけないのだが、私と陸玖はその期間を満了したらしい。私は勿論即答。陸玖もやってみたいと返事をしていた。

 

 輝さんによれば、司書試験は選択形式の筆記と実技の2つ。筆記試験の方は図書館業務の基礎知識やクロニクルの使い方、非常時の対応などが出題されるらしい。そして、実技の方では筆記試験でやったことを踏まえて、実際にお客様も交えて図書館業務を行うというもの。


「試験本番が楽しみですね」

「まぁ落ちるなんてことはないようにするつもりだけどね」

「頑張ってください」

「勿論よ」


 私と雲雀は話し終えると、訓練場の電気を消し、邸の中へと戻る。試験本番は4月5日。高校の入学式が終わったその日に行われる。それまでにきちんと受かるように準備をしておかないといけないのだ。この試験に受かれば晴れて前世から夢に見た司書。絶対に受かってやる。そう内心意気込むのだった。

これにて第1章転生編完結! 次の第2章再会編から初音は高校生になります! 人生3周目の高校生活はどうなるんでしょう⁉ 30分後にまたお会いしましょう!

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