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第11頁 どうやらこの世界には○○がないらしい

 着いたは良いものの、私の知るショッピングモールとは少し違っているみたいだ。基礎的な部分は一緒だけど、何やら前世じゃ見かけないような機械がゴロゴロある。この分だと支払いシステムとかショッピングの形式も色々変わってそうね……。取り敢えず、機械には不用意に触らないでおこう。

 

「まずは服から見に行きましょうか」

「分かったわ」


 お母様の声色がいつもより少し高い辺り、よっぽど娘の服選びが楽しみなのだろう。普段、こういうところには足を踏み入れないし、大抵のものは雲雀とか紫苑が外部へ発注しているからその反動もありそうね。服といえば、確か前世の時も入学準備で買ってもらった覚えがある。


 今世じゃ小学校はお母様の意向で公立に通わせてもらえることになってるから、制服も買わなくて良いし自由に服を着られる。加えて公立だと一々受験なんて面倒なものしなくて済むし、私立ってどうしても堅苦しいイメージがあるから、そういった面では公立の方が良いのよね。

 

「さて、それじゃあ雲雀は外で待機しててちょうだい。一応ここ女性専門店だから」

「承知いたしました」


 いくら機械人形とはいえ、見た目的には人間とそう変わらないものね……。雲雀には悪いけど、お母様の言う通り待機しておいてもらう方が良さそうだ。

 

 雲雀とは一旦別れて、アパレルショップの中に入る。中は婦人服から子供服まで幅広いものが揃っており、バッグなども取り扱っている模様。


 すると、店内のあちこちでホログラムによって衣類が展示されていた。こういうところにもホログラムは利用されているようだ。興味本位で私と同じぐらいの女の子が触ろうとするが、見事に手がすり抜けていた。

 

「まずは何からにしようかしらね……。初音は何が良いとかある?」

「んーっとね……可愛いのが良い!」

 

 ここはやっぱり女の子らしく可愛い系で行くべきよね。あくまで今の私は令嬢だから清楚系で行くべきかとも思ったけど、流石に5歳の口から出るべき単語じゃない。と、お母様が姿見の前に立つように言ってきた。


 何だろうと不思議に思いながら言われた通りに立ってみる。自分の姿が映ったと思ったら、姿見に今着ているものとは違う服を纏った自分が現れた。

 

「な、何これ凄い!」

「そういえば初音はこういうの初めてだったわね。これはAR技術を搭載した姿見なのよ。あ、ARっていうのは架空のものを現実に持ってくることでね。こうやって私が身に着けてるデバイスで操作すれば……」


 斜め前にいたお母様が時計型デバイスを起動させて遠隔操作を始めると、姿見に映っているピンクのワンピースが水色に変化した。へぇ、これは画期的ね。お母様によれば、時計型デバイスと姿見はリンクしており、手元で操作可能なのだそう。本当に便利。私に扱えるかは別問題だけど。でも、これなら試着室も必要ないしコスト的削減にもなるわね。


 

 それから約1時間ほど、私は着せ替え人形にさせられ、姿見の前に立たされ続けていた。そうして10着ほど購入することになった。お母様と一緒にレジへ向かう。


「お客様。商品の提示をお願いします」


 お母様は再度デバイスを操作し、商品リストの送信ボタンを押す。直後、レジのカウンターに設置されていたパット端末からピコンッと音が鳴る。店員さんが端末で商品リストを確認し、店の奥へと消えていった。

 少しの間、お母様と談笑しながら待っていたら店員さんが商品リストに載っていた服を持ってきて会計へ移る。

 

「それでは合計で4万7093ゼニスになります」


 ん……? ゼニス……? 円は? 円はどこ行ったのよ!? まさかとは思うけど、貨幣は疎か紙幣まで無くなってるの!? 私が混乱している間にも、お母様は再度デバイスを操作し支払いを済ませたようで、衣類の入った袋を受け取っている。


「初音? 何ぼーっとしてるの?」

「え、あー、えっとその……。ゼニスって?」

「ゼニスって言うのはお金の単位よ。昔は円とかドルっていう単位で、貨幣とか紙幣が使われていたらしいけど、今は世界共通でゼニス、それも電子通貨になってるの」

 

 嘘……。紙幣が無くなったら私なんて買い物すらままならなくなるのよ? いくらペーパーレスが主流だからって紙幣まで無くすとか有り得ない……。というか、世界共通の通貨ってよく実現できたわね。たった200年でそこまでになるとは……。近未来って恐ろしい……。


 

 

 

 

 

 

 

 


 

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