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第1頁 訳あり優等生の憂鬱

 季節は冬。大半の人は大学受験を終え、卒業までの時間を過ごす期間。そんな中私は、今世こそは司書資格を取るために司書過程のある国立大学を受験。合格発表を明日に控えていた。

 

桜葉(さくらば)~、この問題答えてみろ」

 

 強化担当の先生に指名され、席を立って黒板の方を見る。私は書かれている積分の数式を見て、躊躇することなく回答し、席に着く。


 このぐらいの計算なら前世でもやったから簡単簡単。にしても、授業終了まで後、10分……。この分だと今日は先生に当てられることもないから、適当に時間でも潰しておこう。

 

 私は手に持ったシャーペンでノートの余白に上手いわけでも下手なわけでもない絵を描いていく。

 

 っと、薄々気づいてるかもしれないけれど、私には前世の記憶というものがある。最も他の人にそういうことを言っても、誰も信じないけどね。でも、私の記憶の中には確かに前世で過ごした記憶がある。

 

 私の前世は神社とかに行ったらよくいる神職。神に仕えし者だった。けど、ただの神職じゃない。前世の私は代報者と言って、森羅万象を見通すことのできるれい霊眼(れいがん)、浄化作用を持つ祓力(ふりょく)、異能力の祓式(ふしき)の3つを与えられ、現世に干渉できない神に代わって祟魔(すいま)と呼ばれる妖魔奇怪を祓っていた。

 最も、この世界じゃ有り得ない話だけどね。


 で、私はその代報者を育成する学校に通って、毎日嫌という程気味の悪い祟魔を祓ってきた。仲間もできて、それなりに順風満帆な日々を送って、代報者としての生涯を終えた。

 そして、私が死んだあと、真っ暗な空間に胡散臭そうな神が現れて、こう言った。

 

「前世では代報者としてボクたち神に尽くしてくれたから、何でも1つ願い事を叶えてあげる。あー、何でもと言っても、世界征服とかそういうのはなしね」と。

 

 何でも。その言葉を聞いた私は「一般人としての生活を送りたい」と答えたわ。一般家庭に生まれて、神職とか代報者とかそういう堅苦しい運命を背負わされることもなく、こうして何不自由なく学校生活を送れている辺り、私の願いは叶っていると言って良い。

 

 ここでチャイムが鳴り、先生がチョークをケースに仕舞い、起立・礼をしてから出ていくと、教室は一気に騒がしくなる。みんなが教科書やノートを片づけて教室を出ていく中、私は板書の残りをささっとノートの方に移していく。

 

「ふぅ~。さてと」

 

 机の引き出しに使っていたものを仕舞って、机の横に引っ掻けてある弁当箱と水筒、後、引き出しの中に仕舞ってあった文庫本を持って私も席を立つ。他のクラスメイト達は、食堂へ向かうか、机をくっつけて仲良くお喋りしながら持参したお弁当箱の蓋を開けている。

 

 教室中に食べ物の匂いが充満するのを感じながら、教室を出る。

 

 廊下には、購買で買ったのだろうパンや財布を持った生徒たちで溢れかえっていた。

 お弁当を食べる前に、まずはこの本を図書館に返さないといけないのよね。私は廊下を突きあたりまで進んだところにある階段を降りて、2階へ向かう。

 

 図書館に行くには職員室の前を通らなければならない。職員室ってなんか苦手なのよね……。そう思いながら足早に前を通過していると、同学年の生徒なのか先生との面談で、緊張している様子が横目に入った。私の場合、進路面談では先生から特に困るようなことは言われなかったので、可哀想だな~と憐みの目を向けながら職員室を通過する。

 

 前世もそうだったのだけれど、私は生まれながらの優等生気質らしい。親や周りからは褒められ、自分の進みたい道に進めて、人生上手くいっている。ように見えて、優等生は優等生なりに苦労しているものなのだ。

 

 現に私だって、先生から国立大学に進学するように強く言われたわけだし。まぁ、まだ合格してるかどうかは分からないけれどね。そう内心で過去を振り返っている間にも、図書館へと着いた。私は返却ボックスに本を入れ、そのまま近くの階段を上がる。


 この校舎は4階建て。私は4階まで上がると、そのまま薄暗い非常口の方へと足を進める。非常口の辺りには本来あるはずのない階段があった。所謂、屋上への階段だ。ここの学校の屋上は生徒も自由に出入りできるようになっている。私は階段を上がり、屋上へと続く扉を開ける。すると、冬特有の冷たい風が全身を襲った。


 流石にこの季節の屋上は寒いわね……。


 私は両腕を手で擦りながら地面へと腰を下ろす。背後のフェンスからチラリと下の方を覗くと、男子生徒が寒い中ドッジボールをして遊んでいた。こんな寒いのによく遊べるものね……。内心呆れながら、身を翻してお弁当箱の包みを開け、手を合わせていただきますと食前の挨拶を細々と呟く。


 そう、私は前世の記憶持ちで優等生であると同時に、ぼっちなのだ。

 

 「ハークション……! うぅ……寒っ……」

初めまして!『機械仕掛けのクロニクル~前世の記憶持ち主人公、今度は近未来に転生する~』、略してキカクロがついに始まりました! ESN大賞7の締切までもう1日しかありませんので、第3章完結までほぼ30分毎に更新していきます! どうぞよろしくお願いします。(無謀すぎるぞこの作者)

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