第6話:「作戦開始」
主人公「天城旅立」は、ゲームの世界に転移してしまう。
そして自分がこれまでプレイしてきた”ゲームのアバター”となり、
「強くてニューゲーム」な状異世界生活を送ることになる。
主人公は”フォックス” ”ケイト”と共に「お姫様のパーティー」として行動する。
そして、傭兵達に捕らわれていた獣人達を、救い出すことに成功した。
主人公達は、ギルドへ戻り、つかの間の休息を取る。
ただ助け出した獣人の1人”ラナ”が、ギルドで傭兵の刺客を発見する。
そして獣人族が住んでいた都市”デンブルク”が、傭兵に狙われていることが明らかになる。
フォックスはギルドのロビーにいた傭兵の1人から、開心術を使い情報を引き出した。その情報によると、獣人達の住まう都市“デンブルク”が危ないという。
「フォックス。デンブルクが危ないとは、どういう意味だい?」
「意味はそのままだ。頭の中を見たが、こいつは傭兵の1人だ」
傭兵の男は、いまだ息を切らし、フォックスを睨みつけている。
「詳しいことはこいつも知らないようだが、傭兵達はデンブルクで何か“こと”を起こすらしい」
僕はラナを呼び、援軍のアテが無いか尋ねた。
「傭兵がデンブルクを狙ってる。町の騎士団に協力を申し入れたいんだが」
「いや…それは…難しいな…」
理由を尋ねようとする僕を、フォックスが制止した。
「タット。直截的な言い方をすると、獣人族は差別されてるんだ」
僕はラナの気まずそうな表情を見て、彼女の気持ちを理解した。フォックスは続けて、獣人族の立場を説明してくれた。
「タット。お前は少し世間に疎いようだから、あえて説明するが、獣人族は制度が撤廃される20年ちょっと前まで“奴隷“だった。力も強いし、頑丈だし、労働者にはうってつけだからな。だが世間のやつらは未だに獣人族を奴隷だと思ってる。卑しい生き物だと思ってる奴らが大勢いるんだ」
ラナは悔しそうに食いしばっていた。
「そうか。ラナすまない…。そんな、つもりじゃなかったんだ」
「いや、いいんだ…アンタは私らを助けてくれた。それに今の話は事実だしな…」
僕は獣人族の立場を理解し、改めて自分たちが行動しなければならないことを確信した。
ギルドのメンバーにも声をかけ、人員を確保した。
ラナ達獣人族の手当てをしてくれた “救助専門の即応パーティー” が手を貸してくれることになった。彼らはその名の通り救助専門の、いわゆる軍医・衛生兵の技能を持つパーティーだ。彼らは、身長120cmほどの6人のドワーフである。フードを深くかぶり、しかも無口だが、手先が器用な彼らは、これまでに多くの命を救ってきた。
また、ラナの呼びかけで、僕が助け出した他の獣人族達も、この戦いに加勢してくれることになった。優れた身体能力を持つ獣人族が、ラナを含め36人、心強い存在だ。
僕は指示を出すため、フォックス・ケイト・36人の獣人族・6人のドワーフ、そして僕を含め計45名を、ロビーに集めた。
だけど、こんなに大人数を束ねた経験は無い。
心臓がバクバクして緊張してきた。
「あ、あぁ、みんな…。え、えっとぉ…。あ!そうだ!まずは!集まってくれて、ありがとう、それでぇ…」
みんなポカンという表情で、僕を見つめている。
余計に緊張してきた。汗も噴出してきて、体が熱い。
「えぇっと、とにかく!今は傭兵の目的を探ることが重要だ。それで…」
正直、僕の話は“最悪”だった。誰かからヤジを飛ばされたり、罵倒されたりする訳でもない。ただその場に“不信感”が充満しくのを肌で感じた。少しずつザワめきが起きていた。僕は完全に緊張してしまい、軽くパニックを起こしてしまった。
だがその時、ケイトが声をあげた。
「皆さん!傭兵はデンブルクに何かしらのアクションを起こすつもりです。我々は最優先で、傭兵の狙いを明らかにしなければなりません。これから“タット”から、作戦の説明があります。皆さんの力を貸してください」
僕は改めてケイトは”一国のお姫様”であることを認識した。彼女のスピーチを聞き、ザワつきはスグに収まった。
ケイトは“大丈夫”というアイコンタクトを送る。
僕は皆に作戦を説明した。
「僕とフォックスとケイトは、先日君たち獣人族を救出したキャンプへ向かい、彼らを尋問する。」
フォックスとケイトは“わかった”という感じで、うなずく。
「獣人族のみんなは、6つのチームに分かれて行動してもらう。メンバーの振り分けは、ラナに任せる。君たちはデンブルクに直行し、片っ端から傭兵達の情報を集めてくれ。聞き込み、尾行、噂話、なんでもいい、とにかく情報を集めてくれ」
ラナは“任せろ” という感じで、うなずく。
「ドワーフ族のみんな、君たちもデンブルクに直行してくれ。“即応パーティー“は冒険者からの信頼が厚い。君たちはギルドの冒険者に掛け合って、協力者を集めてくれ。依頼料を払ってもよい、人を集めて欲しい」
ドワーフ族は特に反応はせず、スグに出発の準備を始めた。
おのおの準備を始め、与えられた任務を果たしに向かった。
僕もフォックス、ケイトと共に、傭兵達のキャンプへ向かった。
「ケイト。さっきは、ありがとう。助かったよ。僕は人前で話すのが苦手で…」
「いいんですの先生。人には得意、不得意がありますもの」
「そうだタット。お前の推理力と行動力は、大したもんだよ」
「みんな、ありがとう」
そんな話をしていると、フォックスが“止まれ“というハンドサインを出した。
フォックスの視線の先を見ると、2人傭兵の姿があった。キャンプは、まだまだ先のハズだ。フォックスは僕たちに“俺がやる“という合図を出し、颯爽と傭兵達のもとへ飛び出していった。
1人目の傭兵に強烈なショルダータックルをかまし、吹き飛ばした。そして間髪を入れず、2人目の傭兵のミゾオチへ後ろ回足蹴りを繰り出した。一連の動きは流れるようで、“華麗だ“と感じた。
傭兵達は痛みでうずくまっている。僕とケイトは、傭兵を縛り上げた。フォックスは傭兵に開心術を使い、情報を引き出した。
「傭兵達は、タットが襲撃したキャンプに集まっているらしい。しかも今回は、傭兵団のボスも来ているそうだ。どうする?」
ここで傭兵のボスを倒せば、デンブルクへの攻撃も、何もかも全て解決できるかもしれない。ただし失敗すれば、傭兵を刺激することになる。僕は悩んだ結果…。
「よし。ケイト、フォックス。僕たちはここで、傭兵のボスを倒す!」
(作者から読者の皆様へ)
数ある作品の中から、本作を閲覧いただき、大変ありがとうございます。
タットは思い切った決断をしました。
どうやら傭兵のボスと戦うようです。
次話は大展開が待っていますので、是非楽しみにしていてください!
引き続き、本作をよろしくお願いいたします。