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第5話:「獣人のラナ」

主人公「天城あまぎ旅立たつと」は、ゲームの世界に転移してしまう。


そして自分がこれまでプレイしてきた”ゲームのアバター”となり、

「強くてニューゲーム」な状異世界生活を送ることになる。


主人公は”フォックス” ”ケイト”と共に「お姫様のパーティー」として行動する。


パーティー最初の依頼を達成すべく行動するが、指示された場所にはターゲットは無く、

代わりに捕らえられた獣人達の姿があった。


主人公は獣人達を、傭兵達から救い出したのだった。

 僕は目が覚めると、ギルド・ロッジの寝室で横になっていた。


「そうか…獣人族を助けて、それで…」


 僕はキャンプから獣人族を救い出し、仲間のもとに合流し、眠ってしまったのだ。僕は無意識に、フォックスとケイトを“仲間“と呼んでいた。それに気づいた僕は、テレを隠すように自分を笑った。


「まだ出会って数日なのにな…(笑)」


 と、僕は部屋を見回すと、ケイトとフォックスを見つけた。彼らは椅子に座り、眠っていた。僕が眠っている間、傍についていてくれたのだろう。純粋に嬉しかった。よく見ると、ケイトは相当な美人だ。やはり一国の姫ともなると、流石なルックスだ。


 僕はボーっとしていると、いつの間にか傭兵達との戦いに思いを巡らせていた。この世界で戦うのは、まるでゲームをプレイしているような気分だ。なにせ自分の思い通りに体が動くので、自分の体ではないような気分だ。


 とはいえ、初の実戦は、かなり緊張した。死を目前にした戦闘の緊張感・人命がかかっている責任感は、プレッシャーと表現するには易しすぎる。「この剣を受けたら死ぬ」「自分が負ければ獣人達の命はどうなるのか」という、緊張と責任は、これまでの人生では味わったことのない感覚だった。


 すると、ケイトが目を覚ました。


「先生!お目覚めになったのですね!お加減はいかがですの」

「心配かけて、すまなかった。体の方は全く大丈夫」


 ケイトの声で、フォックスも目を覚ました。


「おぉ、タット、起きたのか。もう目覚めないんじゃないかと思ったよ」

「すまない、フォックス。もう大丈夫だ。ちょっと緊張で疲れただけさ」

「そうか、ならいいんだが…。あ、ところでお前が助けた獣人族なぁ」

「彼らがどうかした?」

「お前に礼を言いたいって、下のロビーで待ってるんだ」


 フォックスに案内され、僕は助けた獣人族のもとへ向かった。すると傭兵に暴行されていた、女性のタイガニアンが駆け寄ってきた。大きな怪我は無さそうだが、所々包帯が巻かれている。


「タット・アマシロ、我ら獣人族を助けていただき、感謝する」

「いや、とんでもない。当然のことです。ところで、あなたは…」

「あぁ、わたしの名は“ラナ”。タイガニアンの戦士だ」


 “ラナ”という、この女性は典型的なタイガニアンだ。見た目は人間的で、オレンジ色の頭髪に、色黒の肌。虎の耳と尻尾が生えている。また全身には、虎の模様をモチーフにした刺青がされている。


 こうして実際の姿を見ると、獣人というのは美しい生き物だと思う。見た目もそうだが、それ以上に、“人間の要素”と“獣の要素”が絶妙に融合している点に感嘆する。そして何より、彼女はタイガニアンのため、とにかく“デカい”。何がとは言わないが、色んな所がデカい。体の各部位は大きく・筋肉質で、生物としての“虎”を感じさせる。


「ラナ、君たちはなぜ傭兵に捕らえられていたんだい?」

「それは…話すと長くなる…」


 ラナの話をまとめると、ある時を境に、ラナ達の暮らす都市“デンブルク”で獣人の誘拐が相次いだそうだ。この事件に際し、都市を守る騎士団は防犯の強化を優先し、被害者の捜索は行わなかった。そこで戦士であるラナを筆頭に、デンブルクの獣人達は結束して、捜索活動を行った。傭兵は盗賊団に偽装していたため捜索は難航し、時間をかけてキャンプを突き止めたが、逆に捕らわれてしまったそうだ。


「そこを僕が助けたと」

「えぇ、彼らが何の目的で私達を捉えていたのかは分からない…」

「今の君の話を聞いて、傭兵が君たちを攫った理由がわかった」


・(事実)傭兵は盗賊団に偽装していた

  →傭兵は身元を隠す必要があった

・(事実)獣人は戦力として、魔王軍に売られる商品

  →魔王軍が傭兵を雇っていた

・(事実)傭兵は各所から獣人を集めていた

  →とにかく数を集めたかった

・(事実)極大森林を中継地点にしていた

  →秘匿可能な拠点が必要だった


 僕はこの状況を推理し、皆に伝えた。


「魔王軍に雇われた傭兵は、数を優先して獣人を集めるよう依頼を受けた。そして周りから発見されないような、拠点が必要だった」


 ケイトが口を挟む。


「傭兵が盗賊団に偽装していた理由はなんですの?」

「恐らく森に拠点を作りたかったからだろう」

「森に拠点?」

「あぁ盗賊団が森に拠点を作ることは良くある。しかも彼らの拠点を見つけても、避けていく人の方が多い。自分から盗賊団の拠点に乗り込む冒険者や通行人はいないからね」


 ケイトはいまいちピンと来ていない様子だったので、フォックスがまとめてくれた。


「つまりだ。盗賊団への偽装は“森に拠点を作る為”+“しかも周りが避けていくので隠せる”+“盗賊団の恰好をしていれば身元も隠せるし、追われるのは盗賊団”。良いことづくめってことだろ、タット?」


 ケイトは70%ほど理解できたような顔でうなずいている。フォックスは話を続ける。


「ただそうなると、傭兵達の次の動きが心配だ。奴らは失敗を取り返そうと、躍起になるはずだ。」


 そんな時、ラナが何かに気づいたようで、周りを見回し始めた。


「ラナ、一体どうし…」


 ラナは僕の話には耳を貸さず、鼻を利かせている。何かの匂いを感じ取っているようだ。そしてロビーの隅で酒をすする男の方へ歩み寄り…


ドカッ!!!


 ラナは男の襟首を掴み、壁に叩きつけた。僕は思わずラナを止めようとした。


「ラナ!いったい何を…」

「こいつ、傭兵達と同じ匂いがするっ…」


 男は抵抗するが、タイガニアンの強烈な腕力には、なす術が無く、おびえた声を漏らしていた。


「ヒィィッ…」

「ラナ、間違いないのか。この男はとても、そうは見えない」


 するとフォックスが口を開いた。


「タット、ここは俺に任せろ。開心術の覚えがある」

「開心術。魔法が使える?」

「まぁ、こういった“実用的な”魔法はいくつかな」


 するとフォックスは、男を椅子に座らせ、押さえつけるようラナに指示を出す。


 フォックスは、男の顔を鷲掴むように手を当てる。そしてジッと男の目を見つめ続ける。するとある時、男の体がブルッと震え、何かに抵抗するように震え始めた。


「やめろ…。やめて、くれ…。うわぁっ!!!」


 男が絶叫すると、フォックスは手を放し、一息ため息をつく。男は息切れを起こしており、ひどく疲れた様子だ。どうやら終わったようだ。


 そしてフォックスは真剣な表情で語った。


「この野郎は大した役者だぜ、全く。みんな、デンブルクが危ない」

(作者から読者の皆様へ)


閲覧いただき、ありがとうございます。


遂に6話です。

もし全話読んでくださっている方がいたら、中々気になる展開になってきたんじゃないでしょうか。

(筆者自身、この先何が起こるか分かってません。キャラが勝手に動き出すので…。)


なんだか傭兵達が良からぬことを企んでいるようです。

獣人達が暮らしていたというデンブルクに何が起きるんでしょうか?


引き続き、本作をよろしくお願いいたします。

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