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第4話②:「初仕事(後編)」

主人公「天城あまぎ旅立たつと」は、ゲームの世界に転移してしまう。


そして自分がこれまでプレイしてきた”ゲームのアバター”となり、

「強くてニューゲーム」な状態での異世界生活を送ることになる。


そんな中、主人公は”フォックス” ”ケイト”という冒険者に出会い、彼らの「お姫様のパーティー」へ参加することになる。


パーティーに最初の依頼が舞い込む。

彼らは依頼を果たすべく、エルマン猪≪イノシシ≫の討伐に向かうが、指定された場所には多くのモンスターの死骸が集められていた…

「僕が見てこよう。偵察は得意なんだ」


 僕は装備を変更した。理由は2つある。

 ①偵察には偵察用の装備で臨む必要があるから

 ②大人数相手の戦闘になる可能性が高いから


 この世界には“アーティファクト(特性を持ったアイテム)”という特別なアイテムが存在する。僕がアイテム収集の対象としていたのは、これらのアーティファクトだ。


 僕は小型バックパックから、装備を取り出す。今回は万全を期すため、アーティファクトを装備する。余談だが、この小型バックパックもアーティファクトだ。


(服装)大盗賊の装備一式

 ▼特性

 ・なし。

 ▼詳細

 ・大盗賊“義賊のフッド”が身に着けていた装備。

 ・どの装備も深緑色に統一されている。

 ・転移当初から身に着けている基本的な装備一式。

   ・革製ジャケット(緑)

   ・革製パンツ(緑)

   ・(ライト)アーマー(胸部)

   ・(ライト)ガントレット(籠手)

   ・カッタートマホーク[硬強化]

   ・ブレードブーメラン[斬強化]


(服装)隠密マント

 ▼特性

 ・着用者は、光源のない環境において、

  視覚的に“暗闇に溶け込める”ようになる。

 ▼詳細

 ・フード付きコートのような、黒色のマント。

 ・エルフ族が作ったと言われている、


(武器)リバース・ブーメラン

 ▼特性

 ・投擲後、必ず使用者の手元に戻ってくる。

 ▼詳細

 ・魔法により特性を付与されている。

 ・二刀流型の木製・軽量ブーメラン。

 ・素早く振るえ、大人数相手の戦闘で真価を発揮。

 ・形状は「少し反っている棍棒」に近い。


 僕は“60人の正体”を確認するため、万全の装備で偵察に向かった。軽くジャンプし木の枝に乗る。そのまま、木から木へと飛び移り、身を隠しながら移動する。松明の明かりを頼りに向かう。




 松明の火が見える所まで来た。そして松明の正体が、大規模なキャンプであると分かった。隠密マントは“暗闇に溶け込む”ことができる為、僕は木から降り、キャンプの一番近くの草むらに身を隠し、様子をうかがう。


 どうやら大規模な盗賊団のキャンプのようだ。剣や弓矢で武装した盗賊が巡回している。盗賊特有の“最低限な装備”に、顔を隠すためのターバンを身に着けている。ただ何というか、僕が目にしている奴らは盗賊ではない気がするのだ。


 というのも、以前、盗賊と戦ったことがある。(もちろん、ゲームでだが)彼らは粗暴で、町では犯罪者と呼ばれるような人間の集まりだ。その為、盗賊団のまとまりは悪く、仕事の間だけは手を組むが、分け前を巡って略奪の最中に争いを始めることもしょっちゅうだった。


 彼らの会話に耳を澄ませる。


「この捕虜たちだが、どこへ連れて行くんだ?まさか本当に魔王軍に?」

「そうだ魔王軍に…。いや、あまりこの話はするな。俺たちは傭兵だ」

「あ、あぁ、俺たちは傭兵…」

「仕事をこなして給料を貰う、それだけだ。首は突っ込むな、いいな」


 捕虜がいるのか。しかもこいつらは盗賊ではなく、傭兵…。なるほど、僕の中で話が繋がった。こいつらは、盗賊のフリをした傭兵集団だ。そして、あろうことか魔王軍へ捕虜を引き渡そうとしている。


 とりあえず事実は置いておいて、捕虜を助け出さなくては。


僕はもう一度木の上へ移動し、キャンプを観察する。するとひときわ大きなテントがあることに気づいた。本部か、あるいは捕虜の収容所だろう。僕はその大きなテントの近くへ移動した。いたる所で木箱が山積みになっており、魔力探知を使いつつ、木箱の陰に身を隠しながら移動した。侵入は容易だった。


 僕は腰にぶら下げたカッター・トマホークで、気づかれないよう、慎重にテントの一部を切り裂き、侵入した。中は暗闇で、殆ど何も見えない。魔力探知で、生物の位置を把握し、その方へ向かって進んでいく。




 だがその時、魔力探知により、6人の傭兵がテントへ向かって歩いてきたのがわかった。僕は即座に、全身を覆うようにマントを被り、隅に身をひそめる。


 松明を持った傭兵たちが、ゾロゾロと部屋に入ってくる。部屋が明るく照らされる。そして僕は魔力探知にかかっていた正体を知った。


 キャンプには、獣人たちが檻に閉じ込められていたのだ。


 パッと見は人間だ。しかしよく見ると、動物のような耳や尻尾が生えている。間違いなく、獣人族だ。しかもここに集められているのは、猫や虎の獣人のようで、年齢は若い個体が多く、性別は男女問わず集められているようだ。


 傭兵たちは、捕虜へ食事を与えに来たようで、パンやしなびた野菜を無造作に檻へ放り込んでいる。獣人たちは、諦めた様に見える者もいれば、反抗的な眼差しを向けている者もいる。


 隊長と呼ばれている男と、下っ端の男が会話を始める。


「隊長、こいつらは何で捕まったんです」

「理由という意味か?」

「えぇ、そうです。何かやらかしたんで?」

「いや、こいつらは戦力だ。どこかに売り飛ばすらしい。別に悪いことはしちゃいないが、こいつらの力が欲しい奴らがいる。だから俺たちは、こいつらが死なないように世話して、売り飛ばす。それだけだ」

「へぇ、そいつはぁ、なんか気が引けますね」

「あぁ、そうだな」


 そんな中、傭兵の1人が、獣人に手をあげた。女性のタイガニアン(虎の獣人)だ。


「ほら!こっちに来い!」


 女性は抵抗し、傭兵の顔を引っ掻く。


「クソッ…やりやがったな、この!」


 傭兵は顔を傷つけられ、激高する。女性を何度も殴りつける。周りの傭兵は、見て見ぬふり、黙認しているようだ。


 これ以上黙って見ている訳にはいかない。確かに偵察のために来ているが、これ以上黙って見ていれば、女性は死んでしまう。




 僕は腰に下げたホルスターからリバース・ブーメランを抜き、暗闇から投げつける。


シュッン! コンッ!!


 ブーメランは、女性を暴行していた傭兵の顔面に直撃し、即座に僕の手に戻ってくる。傭兵は気絶し、その場に倒れる。


「うんっ?」


 傭兵たちが、“捕虜に食事を与える任務”が、全く別のものに変わったことを認識するのには、数秒かかった。僕はその隙に、もう1度ブーメランを投げつける。今度は一撃目の後、跳ね返ったブーメランが、別の傭兵に直撃するよう調整した。


シュッン! コンッ!!!コンッ!!!


 狙い通り、ブーメランは2人の傭兵の顔面に直撃した。これで既に3人倒した。

 残る傭兵は、あと3人だけだ。

 だが残りの傭兵は状況を察知し、即座に剣を抜き、僕へ襲い掛かってくる。


 僕は2本のブーメランを棍棒のように扱い、傭兵達の剣を受け止める。1対3の戦いの為、僕は防戦一方だ。右・左・正面からの剣撃に晒された。剣撃を受け止め、払う、そしてまた受ける。その繰り返しだ。


 だがチャンスが訪れた。


 左の敵が足元を狙ってきたのだ。僕は傭兵の剣を、左手のブーメランで受け止める。そして即座に、右手のブーメランを傭兵の手首に振り下ろす。


ボキッッ!!


 傭兵の手首は骨折したようで、力なく剣を落とす。そして遅れやって来た、壮絶な痛みに身悶える。


「ぐわぁぁぁ!て、手首がぁ!」


 これでもう、こいつは剣を振るえない。無力化した。残る2人の傭兵は、手首を粉砕された仲間を見て、直感的に僕と距離を取ってしまった。これは僕にとって好都合だった。僕は2本のリバース・ブーメランを同時に投げつける。


コンッ!コンッ!


 ブーメランはすぐに僕の手元に戻ってきた。僕は手首を粉砕した傭兵の首根っこを掴んで尋問する。


「お前たちは何者だ!どうして獣人を監禁している!誰に雇われた!」

「知らねぇよ!ホントだって」


 僕は傭兵の、みぞおちを殴りつける。


「グハッ!わかった!こいつら(獣人)は“商品”だ!」

「どういう意味だ!」

「ここは中継地点で、色んな所から(さら)ってきた獣人を集めてる!」

「誰の命令だ!」

「知らねぇ!依頼主だろう!でも誰が依頼主かなんてわからねぇ!」


 僕は傭兵の頭を殴り、気絶させる。他の傭兵達を集めてきて、小型バックパックから取り出したロープで縛りあげる。


 ひと段落した僕の次の興味は、獣人たちに移った。まずは暴行されていた獣人の女性へ近寄り話しかける。


「大丈夫ですか…」

「え、ええっ」

「僕のことは、怖がらないで大丈夫です」

「あ、あなた随分と人が変わるのね」

「それは、そういう…」

傭兵(あいつ)を尋問してた時とは別人みたい」


 女性に言われて、改めて気づいた。客観的に見て、僕は相当 暴力的になっていた。戦って気分が高まっていたのも関係しているかも知れない。正直、元の世界でサラリーマンをしていた時は、暴力と関わる機会は無かった。だから、もしかすると、さっきの傭兵を尋問していた時の僕が、僕の本性なのかもしれない、と思った。


 いや、今はとにかくこの人たち(囚われた獣人)を逃がすのが先決だ。僕は彼らに、静かに・慎重に付いてくるよう指示した。僕は侵入するときに使ったテントの穴から、獣人達を逃がした。驚くべきことに、獣人達は36人もいたのだ。


 つまり魔力探知にかかった60人の内訳は、囚われた獣人達=36人,傭兵=24人 ということだ。


 幸いなことに、この時深夜だった為、多くの傭兵達は就寝していた。警備にあたっていたのは、先ほど僕が倒した6人のグループに加え、残り2グループだけだった。傭兵達は、この3グループで三角形の配置を組み、キャンプを守っていたようだ。


 本来、僕が倒した6人のグループが守るべきだった地点には、当然ながら誰もいなかった。その為、僕と獣人達は、その地点を通り、誰にも気づかれず脱出することに成功した




 僕と獣人達は、ケイトとフォックスの待つ場所へ向かった。


 フォックスが機転を利かせ、ギルドの“救助専門の即応パーティー”を要請していた。その為、簡易的な治療キャンプが設営されており、獣人達はスグに治療を受けることができた。


 僕は、緊張の糸が切れたのか、ケイトとフォックスと合流すると、スグに眠ってしまった。

(作者から読者の皆様へ)


閲覧いただき、ありがとうございました。


いやぁ、どんどん盛り上がってきました。後編はいかがだったでしょうか?

ただ、まだまだ、「物語序盤・最初の盛り上がり」です。

これからも引き続きお付き合いください。


私事ながら、一旦ここまで書いてみて、率直に「もっと書けそうだな」と思えてきました。


ということで、ここらで1つ、ここまで読んでくださった読者の皆様に評価をいただければ幸いです。

もちろん、★1だって構いません。


このスタンスで書き続けるか、方針を変えるかの材料させていただきますので、何卒ご協力お願いいたします。

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