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第4話①:「初仕事(前編)」

主人公「天城あまぎ旅立たつと」は、ゲームの世界に転移してしまう。


そして自分がこれまでプレイしてきた”ゲームのアバター”となり、

「強くてニューゲーム」な状態での異世界生活を送ることになる。


そんな中、主人公は”フォックス” ”ケイト”という冒険者に出会い、彼らの「お姫様のパーティー」へ参加することになる。


そしてケイトから、手合わせの決闘を申し込まれ、勝利する。


今回、パーティーに最初の依頼が舞い込む。

 僕はケイト・ネイベリーというお姫様との試合に勝ち、彼女の“先生”になった。


 「なぜ煙幕の中で位置がわかったのか」「魔法を使っていたが、どの位使えるのか」「わたくしに足りないものは何なのか」など、試合後には彼女からの質問攻めにあった。一応全ての質問には答えたが、そのせいで、あっという間に夜になってしまった。僕はケイトとフォックスと別れ、ギルドロッジで部屋を借りベッドで横になった。


 天井を眺めながら、改めてこの世界(アナザー・ユニバース)について、考えてみた。


 この世界は「剣と魔法のファンタジー世界」なのだが、こじつけではなく、理屈で構成された世界だ。例えば、魔物を倒しても死体は消えずに残り続ける。種類によっては高級食材として扱われる魔物もいる。


 そして何といっても、僕は魔法を使える。厳密には「ゲームのアバターが」だが。魔法を使える人間には、火属性・水属性などの”属性”がある。そして僕は”無属性”だ。無属性とは、よく言えば「属性を問わず幅広い魔法を扱える」、悪く言えば「1つの属性を極めることができない器用貧乏」だ。ただ幸い、僕は魔法をアイテム収集に役立てている程度だ。そのため、多様な魔法を扱える無属性は相性の良い属性だ。


 そんなことを考えている内に、僕は眠ってしまった。



 ギルドロッジの寝室から出るとロビーでは、既に何人の冒険者が立ち話や朝食をとっていた。その中にフォックスがいた。彼も僕に気が付き「こっちに来いよ」という仕草をする。


「よぉタット。昨日のネイベリーとの試合、凄かったな。まさか、あの“パワー・プリンセス“に近接戦で勝っちまうなんて」

「作戦勝ちだよ。普通の殴り合いでは、僕の負けさ」

「いや作戦にしたって、大したもんだよ。俺の見立てでは、ネイベリーは実力でいえばSランクは硬いだろう」

「確かに彼女は強い。でもあんなに強いのに、なぜ名前が知られていないんだ?」

「そりゃタット、彼女は冒険者じゃないからな」

「冒険者じゃない???」


 僕は意味が分からなかった。じゃあ一体、彼女はどういう立場の人間なのだろうか。


「あぁ、彼女は“ネイベリー王国“の王女で、幼少期から強さの片鱗を見せててな、本人も国を守る騎士になりたいって言うんで、色んな訓練を積んだそうだ」

「英才教育だ…」

「まさにそうだ。彼女は国一番の戦士になり、戦闘力でいえば間違いなく“最強”と言えるほど成長した。ただ最近、彼女は重大なことに気づいたそうだ」

「重大なこと…」

「そう。それは“実戦の経験がないこと“だ。」

「あ、あぁ…そういうことか」

「彼女は決闘では負け知らずだ。だが、決闘ですら“実戦を想定した訓練“でしかないことに気づいたんだそうだ。それで実戦経験を積むため、ギルドに依頼して冒険者になり、ただギルド側も1国の王女を1人で冒険させる訳にはいかないってんで、”ベテラン”の俺が護衛につくことになった、というのが事の顛末さ」


 なるほど。フォックスの話を聞いて妙に納得がいった。彼女の戦い方は、技術においては専門的な訓練された動きである一方、戦闘の運び方やスタイルなど、総合的に見ると“素人のような戦い方”という印象を受けたからだ。


 僕とフォックスが、こんな話をしていると、嬉しそうな様子でケイトがやってきた。


「お2人とも!こんな所にいらしたのね!私達わたくしたちへ最初の依頼がありましたのよ!」

「まぁまぁまぁ、まずは依頼の内容を聞かせてください。ネイベリーさんが初依頼なんですから、最初はイージーな依頼を受けるべきです」

「依頼内容は…極大森林・西の森にて、エルマン(イノシシ)の討伐ですって」

「よし、やめましょう」


 初めての依頼で興奮するケイトを、フォックスがなだめる。危険な任務から彼女を守るのも、フォックスの仕事だからだ。


「やめませんわ。わたくしは行きます」


 ケイトはフォックスの制止を振り切り、というか正面から無視してギルドを出発してしまった。僕はフォックスと顔を見合わせ、数秒の沈黙の後、すぐに彼女を追いかけた。



 僕たちはケイトに追いつくと、説得を始めた。まずは僕が説得にかかる。


「ケイトさん、エルマン猪はやめておきましょう。そもそもどんな相手かわかってるんですか?」

「猪でしょう。馬鹿にしているのですか」

「いやいや、わかってない。バカでかい猪です、わかります?高さ3メートル、全長8メートルのドでかい猪です!客観的に考えて、僕たちじゃ無理だ」

「先生こそ、わかっておりませんわ。確かに、あなた方では無理かもしれませんわね。でも大丈夫。わたくしがいますわ」


 僕の説得は無駄に終わった。先生と呼んではいても、尊敬の念は感じられない。


「ネイベリーさん。私の任務はあなたを守ることです。自分から危険に突っ込んでいかれるのは…」

「なら!わたくしを守ってみなさい!」


 フォックスも説得にかかったが、一撃で沈められてしまった。かくして僕とフォックスは彼女の説得を諦めた。



 西の森へは半日で着いたので、午後からはエルマン猪の捜索を始めた。ただ夜になっても、得物は見つからなかった。時折現れる雑魚のモンスターを倒して進むだけだった。それでもケイトは「初めてのモンスター討伐」だと、はしゃいでいた。


 そして道中、またしても転移初日に遭遇した“巨大クモ“と戦う羽目になった。ただ前回の反省を生かし、僕は速攻でクモの足を切り落とし、脳天にトマホークをぶち込んだので、すぐに倒すことができた。あまりにもスムーズに撃破したので、ケイトとネイベリーは「流れるような動きだ」と、えらく驚いていた。



 だが捜索は難航し、すっかり日も落ちてしまった。


「ネイベリーさん、今日はもう遅い。そろそろキャンプでも建てて休みましょう」

「いえ、見つけるまでわたくしは休みませんわ」

「現実的に考えて……。止まって!」


 フォックスは躍起になっているケイトの説得を試みていたが、その最中何かを見つけたようで、皆に止まるよう指示した。フォックスは軽い身のこなしで、“見つけたもの”へ駆け寄る。


「みんな!来てくれ」


 僕とケイトはフォックスに呼ばれた方へ行く。すると、そこには大量のモンスターの死骸が集まっていた。


「これは…」


 ケイトは初めて見る、大量の“死”に圧倒され、吐き気を催す。


「タット見てくれ、これは人間の仕業だ。こいつら剣でられてる」

「ゴブリンの可能性は?奴らも武器を扱えるだろ?」

「いや、ゴブリンじゃないな。この死骸は別の場所で殺されて、ここに集められたんだ。まるでゴミ捨て場みたいにな。ゴブリンにこんな器用な真似はできない」

「!!!」


 僕はフォックスと話し込んでいたが、あるものを見つけ驚愕した。


「エルマン猪…」


 そう、エルマン猪の死骸を発見したのだ。全身が真っ白い毛で覆われた巨大猪だ。ただし情報よりも、一回り程小さい。もしかすると、子供の個体だろうか。


「思ったより小さいな。でもどうしてこんな所に」

こいつ(エルマン猪)った奴は、討伐の依頼の為にやったんじゃない。普通、討伐の証拠にする為、牙や頭を切り落として持ち帰るだろう。だが、こいつ(エルマン猪の死骸)には全く、その形跡がない」


 そんな中、ケイトが何かを見つけたようで、僕らを呼んだ。


「フォックスフッドさん!先生!こちらへ!あれを見てください。火がついているように見えますわ」

「ほんとうだ…」


 信じられないことに、こんな森の奥で火が見えたのだ。それも松明の火だ。人間の形跡のある炎だ。ここからでは遠くてよく見えないが、松明も1つだけでなく数本ある。


 僕は魔力探知を使い、辺りの生き物を探知する。

 1つ…2つ…


 魔力探知には動物もかかってしまうので、集中し、対象を人間とモンスターだけに絞り込む。

 数は…60⁈


「ケイト、フォックス、この先、あの松明が燃えている場所には、約60人の人間がいる。」

「こんな森に60人だと…タット、一体どういうことだ…」

「行きましょう。何か嫌な予感がしますわ」


後編へ続く

(作者から読者の皆様へ)

閲覧いただき、ありがとうございました。


いよいよ、物語序盤・最初の盛り上がりのパートに差し掛かってまいりました。

今回は前編でちょうど半分までしか描けていませんが、後編に続きますのでご期待ください。


引き続き、本作をよろしくお願いいたします。

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