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サポーターは目立たない  作者: 総督琉
サポーターの苦悩、始まります
9/9

釣り1 そんなつもりじゃなかったのに

 錆びついてきたこともあり、武器や道具を買いに様々な店を練り歩いていた。

 ある店の前を通ると、店主が私を呼び止めた。


「あんた、漁師の才能があるね」


「……え?」


 突然すぎる会話についていけず、ぽかーんとしていた。


「これやるよ」


 店主は釣竿を私に渡してきた。

 てっきりボロボロかと思ったが、意外にも立派な釣竿だ。


「どうしてこれを私に?」


「漁師の勘さ。俺は六十年以上漁師をしていたから分かる。あんた、漁師向いてるよ」


「私が漁師に?」


「嘘だと思うなら今日にでも釣りに行ってみな。自分の才能に度肝抜くぜ」


 半信半疑だった。

 しかしせっかく釣竿を貰ったのだし、川にでも行こう。

 私は川まで二時間以上かけて歩いた。


 道中、こんな噂を耳にした。


「この先の川にヌシが出たらしい。それを釣れば一生遊んで暮らせるだけのお金を得られるという」


 そんな馬鹿なとは思いつつ、あの店主が漁師だけで生計を立てているということで、張り切って釣り針を川に投げる。


「これだけ時間をかけたんだ。大物釣れろ」


 早速引っ掛かった。

 投げてから一分も経っていない。

 これは本当にセンスあるんじゃないか。


 私は勢いよく釣竿を引く。

 川から姿を現した釣り針についていたのは……


「長靴……」


 私は長靴を手にし、


「くそっ。ゴミじゃねえか」


 また川に捨てようとも思ったが、それは自分が川を汚しているみたいで嫌だったので、用意していた袋に長靴を入れた。


「今度こそ」


 再び釣り針を川へ。

 また一分も経たず釣り針が引っ掛かった。


「ヌシ来いヌシ来いヌシ来い」


 勢いよく釣竿を引っ張る。

 釣り針に引っ掛かってたのは……


「びしょ濡れの本……」


 私はびしょ濡れの本を手にし、


「くそっ、ゴミじゃねえか」


 袋に本を投げ捨てる。


 二時間以上かけてここまで来たんだ。

 ゴミだけ釣って終わりなんて悲しすぎる。


 私は再び釣り針を川へ。

 今度は布の切れ端が。

 その次は猫耳のアクセサリーが。

 そのまた次は釣竿が。


「全部ゴミじゃねえか」


 結局三時間かけて釣れたのは袋いっぱいに詰まったゴミ。

 店主さん、私は自分の才能に度肝を抜きそうだ。こんなにゴミを釣る才能に。

 置いていくのもバチが当たりそうだったので、仕方なく持って帰る。


「ああ、このゴミだと有料かな。一食分のお金は失うか……」


 結局ごみ処理場で一食分の食費を失い、一匹も魚を釣ることなく帰宅する。


「災難だ」



 後日、煌星が私のもとに駆け寄る。

 珍しいなと思いつつ話を聞き、私は耳を疑った。


「川のごみ拾ったことでギルドから表彰されてるよ。しかも褒賞金も出るって」


「マジッ!?」


 なんだかんだ大物が釣れた。

 まさか海老で鯛を釣れるとは。


 私が満足感に浸っていると、煌星が耳元で囁く。


「ねえ、二人には内緒にするからさ、お金山分けしない」


 こいつをリリースしようか。

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