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婚約者の首に首輪じゃなくてスカーフ付けよう作戦発動!

どうしよう…。第何回目になるか分からないミルスラ家家族会議を召集すべきかどうか、私は迷いに迷っていた。

婚約者のハリル王子に入れ替わりがバレちゃったことを公爵夫妻に正直に言うべきなのは分かってるんだけど、その後の反応が予想付かないからだ。

私が叱られるとか、リエルからの監視が厳しくなるぐらいならまだいいんだけど、王子になんかされたらと思うとなぁ。

アル父上はまだ常識的に行動するだろうが、ウリエラママなんかはこの際だから婚約破棄しましょ!ぐらい言い出しかねないし。


このまま黙っていても問題ないとは思うんだよね。あの王子様と従者のどちらも、口は固そうだから。

だいたい、私の入れ替わりを公にしても、王子サイドには何のメリットもないのだ。というか多分デメリットだらけだろう。

まず、私が彼の命を救ったという過剰な魔法付きプレゼントはもうもらえなくなるし、ミルスラ家からのバックアップもなくなるし。

あれ?でもリエルは、あの王子はあまり次代の王様レースに乗り気じゃないみたいなこと、言ってなかったっけ?他の候補者と違って、あまり活動してない的な。それなら婚約破棄しても問題ないのかもしれない。

しまった。そこのところを会ったときに聞いとくんだった。でもあの状況じゃ無理だったし…。


行儀悪く頬杖ついて考え込んでいると、リエルが心配そうな顔で声を掛けてきた。

「お嬢様、お具合でも悪いのですか?さっきからウルウルを前に考え込んでらっしゃいますが…」

そうだ、このウルウルもどうするか決めなきゃならないんだよ!

でもまさか、公爵家のヒット商品になっちゃうとはなぁ。超予想外。

さかのぼること1ヵ月前、アル父上が朝食の席で、機嫌よく言った言葉が脳内によみがえる。



「ウルウルの需要に生産が追い付かないと商会の者が言ってきましてね。どうでしょう、1.2倍ぐらいにあの布の生産、増やせませんか?」

あのときは、まだ王子から警告されてなかったから、二つ返事でやりますって言っちゃんだよねぇ。

キリーちゃんの魔力を減らすにはもってこいだと思ってたし。

でも誰かがウルウルの秘密に気づいたらまずいから、作り続けるのはヤバイ。

けど公爵にやっぱりやめたいですって言ったが最後、あの鋭いアル父上のことだから、必ず理由を聞いてくるだろう。困った、しどろもどろになる未来しか見えん。


「お嬢様…?」

おっと、リエルを放置しちゃってたよ。

「ごめんなさい、ちょっとハリル殿下にお贈りする次のプレゼントを、何にするか迷っていて…」

しおらしく俯きつつ、でっち上げた言い訳をボソボソと伝えると、リエルは納得したみたいだった。

こういうとき、いちいちしぐさが絵になるキリーちゃんのような美少女顔は得だね!

何も思いつかなくても勝手に周りが忖度して、いい感じに納得してくれるので本当にありがたい。


「そうですか。今まで贈られたのはネクタイに枕カバーでしたよね?では次は、もう少しロマンチックなものがいいかもしれませんね」

ロマンチックな布って何かある?

言っとくけど私、ハンカチに刺繍とかできないからね!



びびった顔の私を見たリエルは、安心させるようににっこりと笑って言った。

「学園でちょうど今月、学園祭が開催されるんです。前夜祭と後夜祭も含めると1週間もあるんですよ。その期間、意中の方がおられたり、婚約されている方は、目印として首にスカーフを首に巻かれるそうです。そのスカーフを贈られては?」

「なに、目印って?」

もう売約済みとかそういうことかな?

でも意中の方が…の意味がわからん。


くすっと笑ったリエルが教えてくれる。

「子どもを学園に通わせる親の目的は2つあります。一つは言うまでもなく、魔力の使い方を学ぶことですね。そしてもう一つが、魔力的に相性が合う相手を見つけることです」

一応魔力は血、つまり遺伝ね、で伝えられると考えられている。だから王家とか貴族とかはなるべく大きな魔力持ちと結婚して、何とか子孫に魔力を繋いでいこうとするわけだ。

だけど、どんな素が発現するかは、生まれてみないと分からない。


「ってアル父上からきいたけど違うの?魔力に相性があるって初耳なんだけど」

リエルは内緒話をするように、声を潜めた。

「いえ、魔法省から正式発表されているわけではないのですが、どうも相反する素を持っている者同士からは、高い魔力持ちが生まれやすいようなのです。実際、火の素持ちの公爵様と水の素持ちの奥様から生まれたお嬢様は、とても魔力が高いですしね」

しかも全素持ちだしな!


「そういえば素っていうのは、あまり後天的には変わらないんだっけ?」

得たりというように頷き、リエルは説明してくれた。

「そうなんです。だから学園に来る親たちは、子どもの相性のいい相手を探そうとするのですが、何の素を持っているかというのは、パッと見ただけではわかりませんよね」

まあそれはそうだろう。下手に素をアピールしたら魔法省とかから何か言われるかもしれないし。

実際、私が全素持ちだって分かったとき、アル父上はかなり魔法省を警戒していた。そういう藪蛇になりそうな情報なら、隠すのが普通だろう。


「でも自分の素をアピールしたい方もいる訳です。例えば意中の方の素が自分と相反する場合とかですね」

ははぁ、なんとなくわかってきたぞ。

例えば水の素持ちのA令嬢がいたとして、その女性を好きになったB君は彼女とその親に自分は相性いいですよってアピールしたい。そんなときにスカーフを巻くってわけか。

「正解です、お嬢様。素に合った色のスカーフを学園祭で首に巻いて、何の素持ちかを知らしめるわけですね。もちろんお相手の方の素は事前に調べておく必要がありますが」

そりゃ好きな人がいるなら、その人が何の素持ちかは頑張って調べるわな。でも学園に入学するのって11歳からなんでしょ?早熟と言うかなんというか。これがこの世界の常識なのかねー。


「ですが、ハリル殿下のように、もう婚約者持ちだから余計な干渉を受けたくない、という方もおられます。そういう方は、白に銀の線をいれたスカーフを首に巻くのが定番ですね」

空馬という、この国の軍人が乗る軍馬と戦闘機の中間みたいな空飛ぶ生き物がいて、その馬はみんな白色で首周りに銀のラインが入っている。野生の空馬には入ってない。つまり飼い主持ちかどうかは銀線があるかないかで分かるのだ。それをなぞった形で、このスカーフの伝統ができたのだという。


「なーるほど、売約済みの印ってわけか。つまりそのスカーフには素のアピールと首輪という2通りの使い方があるわけね」

「首輪というわけではありませんが、私たちは首回りを覆うことを重要だと考えてますので。その首にスカーフを巻いてるという、それ自体が強力なアピールになるわけです」

そうだった。ここの人たちはいつも首回りが詰まった服を着てるんだよね。

魔力の放出を手からだけにするために。

「じゃあ私が銀線の入ったスカーフを王子に贈って、学園祭で身に着けてくださいって言えば…」

「お嬢様の思いを感じて、お喜びになるに違いありません!家名も刺繍で入れればなおいいですね!」


家名入りの白いスカーフかぁ。

私だったら絶対嫌だけど、ここの常識だと、もらえば自慢になるのかねぇ。

でも得意気に胸をはるリエルには悪いけど、ハリル王子は絶対そう考えないと思う。

むしろ、今度は何の効果付きなんだ?とうす気味悪く思うんじゃ…。


婚約者が自分の存在を忘れてほしくないために白いスカーフを巻いてとねだる。

確かにアリだし、ロマンチックと言えないこともないけど、問題は作成方法だ。

作る手間は一瞬なんだけど、強化魔法が使えないと防御魔法とかも付けられないんだよね、布が耐え切れないから。

あ、でもハリル王子は別に効果付きじゃなくてもいいのかな?

でも占い師のモナク様からは、今作ってるものをベースにプレゼントしろってアドバイスされているし。


どうしよう、考えすぎて知恵熱出そう。こういうときに誰かに相談できればいいんだけど。

王子に連絡取れればいいんだが、まさか学園に押しかけるわけにも行かないしなぁ。

あーあ、こんな時友野先輩とかに相談できたら、思いもよらない解決の糸口、くれそうなんだけど。


ん?糸口?いとぐち…、糸!

そうだ、布に強化魔法をかけるのがアウトなら、糸にかけるのはどう?

「あの、リエルって刺繍得意?」

上目づかいで問いかけると、リエルは心なしか胸を張って答えてくれた。

「ミルスラ家に勤めるメイドは、皆刺繍ができますよ。私ももちろん人様に恥じない程度はできます」


よっしゃ!じゃあ糸に強化魔法をかけてから、何かの効果を付加しよう!それからリエルに頼んでスカーフに刺繍してもらえば、露見する可能性、めっちゃ低くなるじゃん!今まで見聞きした感じでも糸に魔法を込める、なんて話はきいたことないから多分この手は安全だ。


問題は何の効果をつけるかだけど、この間覚えた中級魔法の通信の魔法を試してみようかな?

この世界、動画も電話もないんかい、と最初思っていたのだけど実は違った。

ちゃんとあることはあるんだけど、非常にプライベートな利用に限られているのだ。


要するにテレビや携帯電話みたいに常時どこでも誰にでも繋がれるものではなく、個人対個人、もしくは限られた空間内にいる人だけで通信というのが一般的らしい。

なぜなら通信の魔法というのが強力な風魔法を込めた魔石もしくは相当な魔力持ちの詠唱無しでは発動しないから。

肝心の魔石も国民に行き渡るほど数がないらしい。

あと国家間の機密保持のため、利用を制限されているともリエルから聞いている。

この世界は魔法を中心に発展してると思ってたけど、国同士の関係は決して平和ではないってことなのかな。


キリーちゃんの魔力量なら、魔石無しでも多分通信の魔法は発動できるし、糸に込めるのも多分楽勝。

でも魔法省に目を付けられたくないから、通信時間は短めに設定した方がいいね。

あ、あと王子にも前もって通信ができるスカーフだよってこと、連絡しないと。

仕方ない、贈る直前にカードを紛れ込ませるとかして、伝えるとするか…。


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