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夢の意味は帰還準備完了!?

また夢を見た。今度は見た時点で夢だと分かる。

だって私の姿をした桐江さんが壁に文字を貼り付けていて、それが私宛のメッセージだったから!

「キリエラちゃん帰還まであと〇日!」

〇のところは空白になってて、桐江さんが数字を書き込んでいるあたりで目が覚めた。

数字、3桁だったけどよく見えなかったな、と思いながら顔を洗いに下に行くと、意外な人が食卓に座っていた。


「よう、キリーちゃん、おはようさん」

お味噌汁を飲みながら挨拶してきたのは友野先生。あれ、なんか顔色がよくない、かも?

「キリーちゃん、おはよう。友野先生、昨日の夜遅く来て泊まってったのよ、気づかなかったでしょ」

「いやもう、学会準備で病院に缶詰め状態でもう限界でさ。遠山婦長の特製味噌汁でも飲まないと倒れるって思ったんで、押しかけちゃったんだ」

味噌汁をおかわりしながら、苦笑いをする友野先生。

だから顔色が良くなかったのか。病院のお医者さんって、大変なんだなぁ。

でも分かる、このお味噌汁を毎朝飲んでると、すごく元気が出る気がするもの。


朝食をとりながら、私はさっきまで見ていた夢を友野先生と母様に話してみた。

「壁に文字ねぇ、なるほどなるほど」とニヤリとする母様。友野先生は声を上げて笑った後、桐江らしいなと言っていた。

「あの、文字と数字の意味は分かるんですけど、なぜあんなことをしてるのかが分からないんです。桐江さん、何をしたいのだと思いますか?」

言いながら私はちょっと不安になっていた。

あと何日、と壁に書くほど、桐江さんは私との体の交換を心待ちにしているのだろうか。

それってもしかして、あんな弱い体にもういたくないからじゃ…。それとも公爵家の居心地がかなり悪いんだろうか。この日本という国と全然違うから、早く帰りたくなったとか…?

次々悪い想像が浮かび、自然とうつむいてしまう。


そんな私の頭を、ポンポンと優しくたたいて友野先生が教えてくれた。

「桐江のしたいことなんて一つしかないだろ。キリーちゃんの体を良くすることさ。でも体だけ丈夫になっても、こっちにいるキリーちゃんがそれを知らないと意味ないだろ?だからそれを教えるためだと思うよ」

どういうこと?首をかしげる私に、友野先生が笑って言う。

「壁に、桐江は立って数字を書き込んでいたんだよね?数字のところは毎日消して、書き込むわけだろ?」

うん、それはそうだと思うけど、友野先生が何を言いたいのかまだ分からない。

「つまり桐江は、毎日自分で着替えて、立って、壁に数字を書き込める程度にはキリーちゃんの体が丈夫になったよって、知らせているわけだ。以前はほぼ、ベッドから出られなかったってキリーちゃん言ってたじゃん」


そうか!今、桐江さんの体にいるから、動けることを当たり前のように思ってたけど、以前は違ったんだっけ。

着替えるどころか、寝間着しか着られないのが普通だったし、歩くのも咳が出ているときは無理だった。それに桐江さんが数字を書いてた横に棚があったけど、以前はあんなところまで手が届かなかったはず。ということは、私の体、背も伸びてる?

「わ、私の体が丈夫になって、ちゃんと成長してるって、教えるために?」

味噌汁の椀を友野先生に渡した母様がにっこり笑ってうなずく。

「そうだと思うわ。だけどねぇ、あの子なりに知恵をしぼったんだろうけど、帰還まで〇日はないわよねー。NASAの宇宙飛行士じゃないんだから。そういうセンスが皆無なとこ、父親譲りで残念だわー」

「いやぁ、そこは母親そっくりだと思いますよ。遠山婦長だって、患者さん叱る時とか、全然オブラートかぶせませんよね」


まあひどい、とコロコロ笑う母さまを見て、私も自然と笑いがこみあげてきた。

「ふふっ、そっか、桐江さんは本当にお医者様なんですね。私なんかのためにここまでしてくれるなんて…」

すると友野先生がコツンと軽く私の頭をたたき、メッと叱ってきた。

「おいおい、私なんか、なんて言っちゃだめだぞ。桐江も頑張ったけどキリーちゃんも、ちゃんとこっちで頑張ったんだから」

「そうよ、近所中のワンちゃん手なずけるなんて、桐江では絶対できないことなんだから!胸をはっていいの」

母さまも私を力づけるように言ってくれる。そうか、そうだよね!


「はい、もう言いません!数字のところ、読めなかったけど、いつ桐江さんが戻ってきてもいいように、えっと、近所中のワンちゃん、手下にします!」

と張り切って宣言したら、友野先生がぷーっと味噌汁を吹き出して笑い転げた。

手下にしてやるってケンちゃんがよく使ってる言葉なんだけど、味方にするって意味じゃないの?私、間違えた?


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