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人工魔石作りを王子は手助けしたい

「つ、疲れた…」

部屋に戻るなり、ぐったりとソファに倒れ込んだ俺を見ても、ビンジーは咎めてこなかった。

「プレゼントの意図を確かめるだけだったのに、まさか公爵令嬢の中身が入れ替わっていたとは想像してませんでしたからね…」

ビンジーの顔もげっそりしてる。

こんなトップシークレット級の話を聞いてしまっては、やつれるのも無理はない。俺もミルスラ公爵にバレたらと思うと、はっきり言って生きた心地がしない。彼なら絶対、あの鉄の微笑みを浮かべ俺を地下5mに埋葬しようとしてくるだろう。


「どうしようかな。協力してやりたいのはやまやまだが、深入りすべきじゃないと思うし。でもなぁ…」

頬杖をつきながら考えてみたが、いいアイデアが思い浮かばない。

そもそも俺がしたかったのは、プレゼントを誰が作っているのか確認することと、その意図だ。

桐江嬢が魔力放出用に俺のプレゼントを作っていたのは分かったが、まさか本人も効果の強さに気づいていなかったとは思わなかった。

「たぶんご自身ではそんなに強い魔法を込めたつもりがなかったんでしょうね。防御魔法なんて検証しなきゃ、強さが分からないですし」

多分ビンジーの言う通りだろう。キリエラ公爵令嬢の顔をした桐江嬢も何度も言ってたもんな。おまじない程度だと思ったんです!って。

だが、そのおまじないが2度も俺の命を救ったのだ。こうなるともう放っておくことはできない。


けれども、その事実を明らかにすると、魔法省に桐江嬢の身柄がかっさらわれるのはほぼ確実だ。

そうなったら、ミルスラ公爵は全戦力と財力をもって、彼女を奪還しようとするだろう。

こんなことで内戦が勃発したら、王族の一人として国民に顔向けができないじゃないか。

「あそこは北のウェスラー王国の王女を嫁にもらってますからね。下手したら国同士の戦争に…?」

ビンジーは俺より想像の翼を広げてしまったらしく、両手で肩を抱いてブルブル震えている。

「おいやめろよ、内戦ならまだ分かるけど戦争はシャレにならん」

「でもウリエラ王女は独身のときから突っ走る性格だって評判でしたしね。国を越えてミルスラ公爵のところに嫁に来たのだって、反対する大臣の首を何人か飛ばしてきたって話でしたし」

「ぶ、物理的にじゃないよな、それ…」

なんか首筋が寒いような気がしてきた。俺、一応王子なんだけど、やっぱり元凶だと分かったら飛ばされちゃうんだろうか。


「一番いいのは、桐江嬢の言う通り、全素持ちのキリエラ嬢が使えるように、回復魔法と治癒魔法を込めた魔石を用意することなんだろう。けどそれが難しいんだよなぁ」

現在、そういう魔石の管理や製造を一手に引き受けているのが魔法省だ。

だが、全素持ちの魔力抵抗を凌駕できる魔法を込められるほどの魔石は、そうそう発掘されない。

というか、今この国は、割と深刻な魔石不足なのだ。主に隣のフーリッチ共和国のせいなんだけど。

まあ国際関係のトラブルは、しがない王子でしかない俺がやきもきしてもしょうがない。

となると、桐江嬢が言っていたように、人工魔石の開発をするしかないのか?


「一番魔石に詳しいのは、やっぱオルトだよなぁ。でもアイツと話すのは…」

途端にビンジーが腕でバッテンを作って叫ぶ。

「何考えてるんですか王子!やめときましょうよ!ドラゴンの巣穴に盗賊が忍び込むようなもんでしょ、それ!」

まあなぁ。パクっと食べられて終わりだと俺も思うが、もしかしたら食べられる前にドラゴンの宝を盗んで上手く脱走できるかもしれないし。

それに異世界から来た女性が、あんなに頑張って縁もゆかりもない女の子の体を健康にしようとしているんだ。

俺も一応婚約者なんだから、手助けするのが当たり前じゃないか?

ビンジーはなおもギャンギャン言っていたが、俺は耳を指でふさいで、彼女のために自分が何をできるか、考え続けていた。


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