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王子様からの返礼品はワケアリ

「ハリル王子からウルウルが届けられた!?」

トイレから戻った私は、リエルに知らされてちょっと驚いた。

以前、リエルから聞いた話だと、そんなことをしそうな王子様には思えなかったのだが…。

それに、このウルウルは公爵家専売品だ。それをわざわざ販売元に贈ってくるって、どうよ?

「それに箱に入った魔石が2つ贈られてきております。これは…、音の魔石でしょうか?」

「音?」

ああ、触れて魔力を流すと音が鳴るタイプか。絵本にもついてて、場面場面で、ナレーションとか効果音が鳴るのが面白いなぁと感じたものだ。でも王子様が効果音なんて贈ってくるわけないしなぁ。


「お手紙がついております。ご覧ください」

「受け取るときに口上があったんでしょ?なんて言っていたの?」

公爵家の格式、というか多分地球各地のセレブのお家でもそうなんだろうけど、贈り物を自分で受け取ったりはできない仕組みになっている。かならず家令がチェックした上で、持ってきた人から口上を受け、大丈夫だと思ったら本人に取り次ぐって感じだ。はっきりいって、めんどい。ヤマトや佐川のドライバーさんたちとの気楽なやり取りが懐かしいなぁ。

「使いの者は王子の側付きの方でしたね。口上としましては、王子自ら作曲した曲が入っているから、できればお一人のときにゆっくり聞いて欲しいとのことでした。そうすればきっと、ご気分がよくなるからと」


なんだろう、ラブソングのわけないからヒーリングミュージックかな…。まてよ、ウルウルと一緒に贈ってきてるということは、アロマセラピーみたいな感じで使えってこと?でもウルウルについては何も言ってないから、別々のプレゼントなのかな?

王子は今、えっと12歳か…。その年でそんな気遣いができるものなのかしら?私が12の時って、小6だよね。私なんかクラスの男子と校庭の縄張り争いしかしてなかったような…。

まあいいや。この世界では学校に入る年も違うから、きっと大人びるのも早いんだろう。


手紙を開くと、口上と似たようなことが書かれていた。だがこっちにも、できれば1人で、と書かれてある。だけどそう言われてもなぁ、今の私は周りの協力がないと、日々過ごしていけないんだよね。だからホラー映画のアホなヒロインみたいに、1人で何かしろ

と言われてするわけにはいかない。ドツボにはまる未来しか見えないし。


「リエル、一緒に聞いてくれる?王子の作曲した曲って私一人で聞いても、どう褒めればいいか見当つかないし」

それ以前に、ここの世界の流行してるミュージックが、私のイメージしてるのと同じとは限らないしね。

頼むから以前日本で聞いて閉口した前衛音楽みたいに、電子レンジ音とかエンジンの爆音とか、そういうのを組み合わせたのじゃありませんように…!

「かしこまりました。では起動しますね」

魔石の起動には、魔力を持っている人間が触れるだけでいいのはホント便利。リエルが片方の魔石に触れると、笛というかフルートっぽい音が鳴り出した。当たり前だが、メロディに聞き覚えはない。けどなんか、懐かしい感じの曲だ。

「これは、多分王子の御領地である、アルフェ地方の郷土歌ですね。よく収穫の時期に歌われる曲だと思いますよ」

ははあ、自分の故郷の歌を知ってほしいってことかな?それなら分かる。

「なんか、懐かしい感じがするんだけど、この感じ方で合ってる?」

おずおずと聞くと、リエルがくすっと笑って大丈夫ですと言ってくれた。

ごめんよー、小中と音楽は3以上もらったことないんだよ、10段階評価で。だから音関係の感性には全然自信がないのだ。

「じゃあ、申し訳ないけどそういう感想を添えて、お返事お願いするね。あ、そういえばもう1個あったんだっけ。そっちも聞かなきゃ」


また故郷のメロディなのかな、と思って待ってたのだが、いつまでたっても音は鳴らなかった。

「リエル?どうしたの?」

「…申し訳ありません。どうしてか、起動しなくて…」

ん?どういうこと?と聞いてみたら、実は魔石にも不良品があるという、しごくもっともな話だった。

「通常、魔石は厳しくチェックされて流通しているのですが、魔法を込める段階で不具合が発生することがままあります。たいていは込められた魔法が発動しない、というものですが、魔石の内部に欠陥があることもありまして…。起動するときにうまく魔力を流せないのを素抜けというのですが、どうやら、どちらかが起こっているようですね」

「今回はどっちなのかな?王子が音の魔法込めるの、ミスったとか?」

「どちらとも言えませんが、王家が取り扱う魔石に欠陥があるのは考えにくいので…」

リエルはすごく言いにくそうだが、言わんとするところはなんとなく伝わった。そういえばこの王子サマって、弱魔力で有名なんだっけ。じゃあ、魔石に魔法を込める時、魔力が足りなくてミスった、というのはあるかもね。魔力過剰な私にはちょっと想像しにくいけど。

「じゃ、しょうがないね。片方の音魔石のだけ感想を書いても失礼ではないし、きっとバレないよ」

「はい、それは大丈夫かと思います。いつも家令のジョウルが上手くやっておりますし」

私が書くわけにはいかないから、いつもご苦労をおかけしております。ジョウルさん、あとは頼んだ!


となると、わざわざウルウルを贈ってきたのは何だったんだろう…。家令の元に向かったリエルが去った後、手持無沙汰だった私は音が鳴らない方の魔石を何の気なしに触ってみた。

その途端、男の子のアルトの声が部屋に響いたのだ!

「キリエラ殿、私はあなたの婚約者のハリルだ。この魔石は全素持ちが触ったときだけ起動するようにしているが、1度しか再生できないからよく聞いて欲しい。ウルウルに強化魔法を使っているようだが、即刻やめるべきだ。強化魔法は生き物にしか使えないことになっているから、もし物に付与していることが魔法省にバレたら、貴女が超越した魔力持ちだと暴かれるのも時間の問題になる。それから、頂いたネクタイが魔飛鳥の攻撃を防いだことで、ぜひ相談したい。次の風の日に、俺の側仕えを公爵家に行かせる。その際、貴女と連絡を取る方法をそやつに言づけてくれ。以上だ」


な、なんですってー!!


リエルが戻ってきた時、すごく怪訝な顔をしていたから、私はきっと汗かきまくり、動揺しまくりだったのだろう。

キリーちゃんの小さな心臓がドックンドックンいってるよ!もう、あの王子、なんてものを贈ってきたんだ!


「リ、リエル、ちょっと聞きたいんだけど、この前ハリル王子がなんか魔物を退けたとか誰かを助けたとかって言ってたよね…。あのことも御礼状に書いたほうがいいかもってちょっと思ったんだけど、忘れちゃったのよ。どういう話だったっけ?」

ごまかすためと、情報を得るため、リエルに話をねだる。

以前、私の脅迫に屈したリエルが、スパイさながらに調べに行ってくれて、王子のメイドから仕入れてきた話を聞いたけど、正直へー、ちっちゃい子なのにすごいな、としか思わなかった。確か怪物?からクラスメイトを助けた話だったよね…。

リエルの口から、課外学習のときに魔飛鳥っていう怪物に襲われた際、クラスメイトをかばって王子が立ち向かった、という話をもう一度聞く。


よく考えて、桐江!この話、なんかおかしくない?


「その、どうやって立ち向かったとか撃退したのかは、分からない?」

「はい、魔法を使ったわけではないようです。メイドもそう言っていませんでしたし」

「ごめん。できるだけ聞いたときの言葉を思い出して、正確に言ってもらえる?」

「は、はい。そのメイドさんは、マリーさんとおっしゃいましたが、こう言ってました。『クラスメイトを突き飛ばした殿下の背に魔飛鳥の爪が迫ったのですが、間一髪で退けたそうなんですよ!』って…。

あの、お嬢様?」


魔法のある国だ、だから私もきっと魔法で撃退したものだと疑いもしなかった。でも王子は魔飛鳥に背を向けていたとなると…、嫌な予感がしてならない。

「課外学習ってよくわからないけど、制服で行くわけないよね?」

一縷の望みをかけて、リエルに聞いてみる。私の必死な形相に、ちょっと驚いたリエルが、ええ、と答えた。

「魔石の採集等を行うこともありますから通常は制服ではなく動きやすい格好で参りますが…。ああでも王子なら、課外学習中に公務が入る可能性がありますので、制服一式を持参することはありえますね。学生の間は、制服が礼服代わりになりますので」


こりゃ99%確定だ…。あの無駄に全素防御魔法を付与しちゃったネクタイ、王子はきっと持っていったんだろう。課外学習というからには、リュックみたいなのに入れてたのかも。だから背を向けていても魔飛鳥の攻撃を防げたんだ。疑問に思った王子はネクタイを調べて…きっと全素持ちが作ったと感づいたのね。

問題は、強化魔法のことだ。これには何で気づいたの?


私はハッとして、そばにあるウルウルを見た。これにも強化魔法をかけてから、匂いがでる呪文を流し込んでいる。なんで強化魔法をかけてるかというと、私の力が強すぎて普通の布のままでは耐えられず、匂いの魔法をかける前に破れちゃうから…。もう癖みたいになってて、何かする前に強化魔法、というのが私の中ではデフォルトになっちゃってた。でもハリル王子が言うには、これがマズイってことなのね。

あんなにアル父上とウリエラママが魔法省にバレるのを警戒していたのに、まさか私がやらかしちゃったなんて言えないよ!


とにかく、ハリル王子がどこまで知っていて、どうするつもりか知らないと身動きがとれない。

私は心配そうに見つめてくるリエルをよそに、次の風の日にどうやって王子の傍仕えに連絡方法を伝えようかと、必死で頭をフル回転させていた。


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