表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/34

王子の考察

さあ今度はどうやって誤魔化そうか。それにしてもつくづくこのネクタイの効果が発揮されたのが野外実習の最中でよかった。二回目も校内だったら絶対オルトに突っ込まれてたはず。そうなったら流石に言い訳しようがない。ミルスラ公爵家に確認できないまま巻き込んで迷惑をかけることだけは避けねばな…。


「やっぱり!やっぱり私の言った通りネクタイ持参して良かったでしょう、ね?ね?」

うっさいよ、ビンジー!お前何回俺に礼を言わせたいんだ!

まあ、あのネクタイがなかったら俺は今頃魔飛鳥の腹の中だからな。でもやっぱりうるさいからそろそろ黙らせよう。

「ハイハイ、お前の先見の明はすごいよ!さすがはビンジーだよ!で、その回る頭でミルスラ公爵家の内情調査も当然捗ってるんだろうな!」

途端に黙りやがった。あそこのガードってそんなに堅いのか。

「キリエラ公爵令嬢のお付きメイドがリエルって名の娘というのは分かったのですが、彼女は外出せず四六時中公爵令嬢に付き従っているそうで…。というか、そもそもそんなにあの屋敷出入りがないんですよ」

しぶしぶ、という感じで報告するビンジー。相当手こずったみたいだな。

「でもビンジーなら!鋭いお前なら!何とかなったんだろう?」

ニヤニヤしながらたたみかけてやるとますます眉と口をへの字にしてる。まあんまり虐めても何だからこの辺にしておくか。


「メイドの名がわかっただけ上出来だよ。それにあそこは公爵も公爵夫人も最低限の社交しかしてないのは知ってる。以前王宮でのパーティに参加したとき、令嬢危篤の知らせが入ったとたん、二人共一目散に屋敷に戻ったらしい。多分トラウマになったんだろうな、以来、夫婦二人そろって参加しなければならない社交活動は全面お断り状態みたいだ」

「そうなんですか、どおりで…。気晴らしの買い物に行きもせず、屋敷に商人を呼んでるみたいですしね。一応出入りの商人も調べましたが、公爵令嬢とはお目にかかったこともないとしゃべるばかりで」

「だろうな、まだ幼いし、必要なものは公爵夫人が購入してるんだろうし」

「ただ、公爵家が卸している魔石の取り扱い店で妙な話を聞きましたよ」


魔石卸問屋からの情報か。普通代々御用達のところが家ごとに決まっているのでそうそう変わったことは起こらないと思うのだが、逆に言うとちょっとしたことでもあれば、すぐ目立ってしまうということでもある。

「何があった?」

「それが、公爵家は火と水の魔石を店に卸してますが、魔石以外の物でも買い取りはできるか?と打診されたらしいですよ。魔石が増えるということですか、と卸問屋が確認したら、そういうことではないけどもういい、とあそこの家令が話を打ち切ったそうで」

確かに妙な話だ。通常家ごとに制作ができる魔石はそう変わらない。

水魔法が得意なものが例えば光魔法を使えるようになったとしても魔力量はそうそう増えたりしないだろうから、水の魔石を作った上で光の魔石も大量に作るのは無理だ。

制作する魔石の量は家ごとに厳格に定められているから、卸し量を変えたいという場合は、たいてい減らす方向になるはずなんだがな…。

考えられるのは作り手が増えたということだが、魔石じゃないというのが分からない。

多大な魔力を持ってそうな公爵家面々は公爵夫妻のほか公爵令嬢だけだ。まさか…。

「よく分からんな、魔石じゃないけど魔法効果が付与されたものができるから買い取れってことか?それってまさか…」

「王子もそう思いました?でも魔石卸店にいくらなんでもネクタイとか持ち込まないでしょう」

「だよな。妙な話ではあるが、令嬢が絡んでるかはちょっと今は判断できないな、これだけだと」

「そうですね。それと、これは去年のことなんですが…」


なんだ、まだあるのか?

「これはミルスラ公爵家の裏手にある家、ラス子爵家の使用人から聞いたんです。去年の初夏のあたりのことなんですが、ミルスラ公爵家の裏手の森から土煙がえらく高く立ち上って、しばらくしてから消えたって」

は?土煙?

「で翌々日あたりに子爵家にミルスラ公爵家の使用人がやってきて、屋敷の裏手の森、つまりラス子爵家の門の向かい側にあった森ですね、そこで突風被害があって木が倒れ土もえぐれてしまった。もし砂塵被害など被られた場合は当家にご連絡いただきたい、申し訳ないと丁寧な挨拶があったそうで」

「突風被害、な…。それで?」

「それだけですよ。ただそいつ、厨房の下働きでその土煙を窓から見てたそうですが、その日風が強かった覚えはないそうで、不思議がってました。だから覚えてて教えてくれたわけで」


変だな。突風被害が出るようならそもそも天気予報官からその地域に警報が出るし、各家ごとに事前防御もできるはずだ。

それに土煙は上に高く立ち上ったりしない。突風が吹いたなら砂塵は必ず横に流れる。

「一応、私も遠目からですが見てきました。確かに土がえぐれて、木が倒れてるようでしたね。ただ何で去年の被害をそのままにしておくかは疑問ではありますが」

と首を捻るビンジー。

そりゃそうだ、お金持ちのミルスラ家ならすぐ土系統の魔法が使える魔法師を呼んでチャッチャと復旧させそうなもんだ。


「そこ、その突風被害地って入れそうか?」

「え、無理ですよ、領地結界があるんですよ?たちまち引っかかりますよ!え、ちょっと、何考えてるんですか王子!」

青くなって喚くビンジーを無視して頬杖をつき考える。

去年の被害状況を公爵家がそのままにしてるってことは、片付けたくてもできないってことじゃないか?例えば、魔力を使った形跡を見せたくない…とか?

運がよければ木だけじゃなく柵もやられてるかもしれない、そこからならこっそり入り込めるんじゃないだろうか…。

まだビンジーが喚いていたが、俺は無視して頭の中でミルスラ公爵家の屋敷の辺りの地図を思い浮かべつつ考え続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ